劇場公開日 2025年1月17日

港に灯がともるのレビュー・感想・評価

全31件中、21~31件目を表示

どうしたらええんやろう

2025年1月20日
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鑑賞方法:映画館

 神戸大震災から30年目の翌日 2015/1/18 に観ました。震災の翌月に神戸市長田区で在日コリアン3世として生まれた女性の物語です。

 成人式の日には、「震災から20年が経ちましたが」とマスコミに取材され、父親からは、韓国から渡って来た家族の歴史を繰り返し聞かされて来たのですが、彼女にとってそれらは、自分が知らないのに勝手に背負わされた物でしかなく、

 「昔の話ばっかりされて、どうしたらええん?」

と苛立ちを募らせるのでした。その細やかな思いを改めて提示されると「なるほどなぁ」と分かる気がします。一方、彼女の家族が日本への帰化申請手続きを進める中、父親だけはそれを頑固に拒否し続けます。在日として差別を受けて来た父はただ怒鳴るばかりなのですが、彼の意地もまた「そうだろうな」と理解出来ます。更には、コロナ禍を経て変容していく土地の商店と人々の姿。どれもこれも、

 「そりゃそうだろうな。でも、どうしたらええんやろうな」

ばかりで、それが澱(おり)の様に静かに彼女の心に積もって行くのでした。その苛立ちと不安を表す富田望生さんが非常に繊細で力強かったです。朝ドラの『ブギウギ』で彼女を観て「力のある役者さんだなぁ」と感じたのですが、その印象通りの際だった眼差しでした。これから伸びて行く役者さんでしょう。

 安易な答えを提示せず、何とか希望を見出そうと作品自体が藻掻く姿が素晴らしかったです。これは多くの人に観て欲しい。

補遺:本作中で、震災からの復興の祈りを歌った『しあわせ運べるように』の合唱シーンが描かれていました。僕は初めて知った曲です。

 ♪ 地震にも負けない 強い心を持って
  亡くなった人のぶんも 毎日を大切に 生きていこう ♪

 これは現実に被災された方が作られた曲だし、この歌が神戸の人々を励ます事が出来て愛唱されて来たのならば、素晴らしい事です。でも、このシーンが本作に挿入されたのは何故なのかなと少し気になりました。

 「亡くなった人のぶんも 毎日を大切に 生きていこう」

という言葉を、彼女は「背負わねばならぬ物」と感じていたのではないだろうか。それはまた、どうしたらええのか分からん辛い事です。

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La Strada

3.0重くて深いテーマ

2025年1月19日
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難しい

震災直後にこの世に生を受け、在日コリアン3世として「何か」と闘っている女性。現状は自分が望んだ環境ではない、だけど、それを変えることが難しい。だからなのか、「泣く」「叫ぶ」「喚く」「吠える」シーンが多くて、スクリーン越しに観ているこっちの気分が駄々下がり気味だった。

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ちゃ坊主

5.0分かり合えず崩壊も、今分かり合おうと構築したい

2025年1月19日
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鑑賞方法:映画館

2025年劇場鑑賞3本目 名作 85点

あさひなぐから認識した富田望生や、その作品で共演したり乃木坂46出身、多趣味でコケ好きやヘッドホン姿が似合う伊藤万理華、23年邦画ベストのまなみ100%の主演であり、平井亜門や倉悠貴の背中を追う青木柚など、近年の邦画ミニシアターを引っ張り代表する面々が主要キャストとして、以前から告知されていたので、新年早々の公開待機作の中で1番楽しみで期待していた作品

作品としては、同日公開のサンセットサンライズ同様、色々な要素を組み込んだ故のこれ!という旗印がボヤけている印象は若干拭えませんが、それでも伝えたいことや、見どころのシーンの絵と空間と表情や発声などの演技が大変素晴らしく、印象的なシーンが多かった

この手の自然災害や事故事件によって街も人も時間が止まってしまい、そこから再生と絆を描いた家族ドラマがありふれている中、今作は時代と出来事から止まった父の概念と家族(特に娘)への向き合いや接し方に対して、その生き抜いてきた時代や出来事を肌に感じていない、言葉でしか知らない上で育ち、そこを離れ一人前になる娘との反比例な親子関係のむず痒さが痛いほど伝わった

沸点が低く、甲高い発声ってストレスですよね、非常にわかります。わたしは耳も心も塞いでしまうので、崩壊するも気づき再構築しようと素直に向き合う富田望生の強さには尊敬の念が湧きました

物語冒頭の成人式後にケーキを持ち帰り家族団欒を望むも、特別な日にはならなかったり、精進落としのシーンの怒鳴りやその後の父を除いた兄妹の中で腰を落とすシーン、別居している父の家に勇気を出して告白するのに伺うも、現実は期待していた様にはならず、変わらず平行線を辿る意見や感覚、声の色合いの違いに、日々のストレスや会話にならない父への変わらないストレスなど、色んな感情が入り混じり肩を落としうちひしがれトイレに逃げ込む呼吸を整える1分ほどの静寂な長尺ワンカット、物語終盤に言葉で散々言われてきた苦悩をコロナ禍を受けたり、業務にあたってかつての町の出来事での悲惨さを、真に理解はできなくとも、少し肌に感じて、父への向き合い方を彼女なりに改めて、呼吸を整えて、顔を合わせて話すことはお互いにとってまだ到底難しいことから、ベンチに座り電話をかけ、近況と秘めていた心境を言葉震えながらも、本番全部は告白出来なくても、今、自分の言葉で話せたこと、そして、それを平穏な眼差しで耳にしてくれたこと、緊張が解け一言、『こんな会話がずっとしたかった』とお互いの止まった時が今動き出すシーンなど、等身の様に心が抉られ、こちらが感極まるシーンが本当に多かった

物語冒頭で成人式に向かうのに車に揺られ到着すると、一人前とは1人で生きていくということだみたいなことと、体に気をつけてなと言葉を受け、物語終盤で彼女の口から体に気をつけてねと心が開いた、真心が通じ合った台詞の紐付けが心地よい

転職面接時に、言葉を並べるのではなく、心からの本気の言葉を耳にして、同じく苦労をしたことを肌に感じ、種類は違えどお互いが通じる痛みがわかると、思いやれる言葉を投げることができ、その言葉が溶け込み、次のカットではもう既に働いていたのが、誰かは君を見ていて、わかる人は必ずいると観客も認められた様で涙を禁じ得ない

日々の些細な仕打ちや心無い言葉に動揺するのが、年頃の女性らしく、わかりやすく暴食に走り、終いに上記でも書いたが成人式後のお祝いに家族団欒を望んだものの実現しなかったケーキを、自分へのご褒美にまた買うも開けるとひっくり返っている、些細な恵まれてなさや現実の追い討ちの様な非情さに精神が崩壊したり、それがフラッシュバックする様に、順調だった転職後の仕事が社会情勢の影響もあり、顧客が悪いわけじゃないからこそ、その契約が破棄された怒りをぶつける矛先のなさがより一層怒りを込み上げ、丹精込めて作った建築モデルを崩壊させようと思い留まるところなど、それぞれ前者ならお祝いのケーキが逆さまなのが祝われてない、祝福されていないとも見えるし、後者の建築モデルを壊す動作は、災害をも彷彿させるなど、崩壊した時のアイテムが観客も容易に意味を想像させられるのがよくわかる

前職で、お前が休んだところでどうにでもなるだろとか、そうなのかもしれないけど、新入社員でこれから頑張っていこうと(挨拶に回っているシーンや毎日のバス勤務のシーンなど)してる中での、心無い言葉をかける父は、それは時が止まっているとか関係なく、あなたの人格として、長く人生を送っている人として事実を言うべきでないのに、器用にわりきれていないのが、娘が単に感覚や意見が違うだけでなく、人として無理な部分が多過ぎて無理!と思うのも非常に痛いほど理解できる

世間の評価が香ばしいのが大変残念ですが、本当に傑作だと思ってます

是非

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サスペンス西島

3.0心がしんどい人は観ても元気にはならないかも知れないし、なるかも知れない

2025年1月19日
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双極性障害になりやすい10代後半に発症して
それとはあまり関係無いけど父親と娘はギクシャクしてて
治療続けたら電話でなら日常会話できるまでになりました

普通の家族の話、在日コリアンが帰化する話、
双極性障害の話、父娘の話、コロナ禍の話(?)
いろんな話が混ざり合っているけれど
それぞれが伏線になってる訳じゃなくて
伝えたかったのは
特効薬はない、時間が解決するって事なのかな

日本で生まれた日本人には現実感が薄くて
細かい葛藤が分かりにくいのかも知れないし
現在進行形で心が弱ってる人は
観ても灯はともらないかも。

神戸の震災復興、再開発事業が2024年11月で完了したし
何か関係あるかな?って思ってたけど
全く関係ありませんでした笑

ただ、富田望生の演技はとても素晴らしい

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imaikiteru

3.5普通の家族って何なんだろう

2025年1月18日
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悲しい

難しい

1995年の阪神淡路大震災で甚大な被害を受けた神戸市長田区で暮らしていた在日韓国人・金子家の次女として、震災の翌月に生まれた灯。両親から家族の歴史や震災当時の話を聞かされても実感を持てず、震災により仕事を失った父・一雄は家族との衝突が絶えず、両親は別居することになった。その後、結婚を考えてる姉・美悠が日本への帰化を進めようとし、母と弟は賛成するが、父は大反対。さてどうなる、という話。

灯役の富田望生なんだけど、熱演はわかるが、ギャアギャアとうるさいだけに感じた。
父・一雄は韓国人のプライドを捨てきれず、説明下手なのもあるが、家族に思いが伝わらない役でちょっと気の毒だった。
普通の家族、という表現が何度か出てきたが、普通って何なんだろう?家族の数だけ個性があるんじゃないかなぁ。
姉・美悠役の伊藤万理華と母・栄美子役の麻生祐未は好きな女優だから観れて良かった。
土村芳のほんわかした雰囲気に癒された。
灯の親友役の山之内すずは可愛かった。

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りあの

2.5火病の血

2025年1月18日
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悲しい

難しい

幸せ

自身のルーツと家族に翻弄されて病んだ阪神淡路大震災の翌月に神戸で産まれた在日朝鮮人の女性の話。

絶賛会社に就職して1人暮らしを始めた主人公が、成人式に実家に帰ると姉の結婚話や、両親の別居の話しで家族がまた揉め始め…そして祖母の葬儀での父親の暴走に耐えきれず…。

ルーツはまだしも苦労話しや愚直を子供に押し付けるとか何がしたいんでしょ?
この親父が帰化しない理由も超浅いし。

姉の様に割り切って上手くは生きられないけれど、ただただ直向きな主人公がとても良かったけど…あまり在日コリアンであることは関係ない様な。

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Bacchus

4.0纏わりつく様な「30年の想い」

2025年1月17日
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マスコミはまるでお祭りの様に、この日だけ騒ぎ立てる。

あの時、様々な理由で心に傷を負ってしまった者は、
毎日毎日の積み重ねの上の30年という時間に漂う。

「よりそう」「つなぐ」「わすれない」・・・
美辞麗句が、安らぎを与えるのではなく、
心の重荷となってしまう人もいる事を忘れてはいけない。

体験をした者と、聞かされ続ける者。
在日と帰化申請。
映画の中で、交じり合わない「想い」が交錯していく。
劇中の言葉が心に残る。
「人はグラデーションの世界で生きてゆく」
明快な境など存在しないのだ。

117を記憶するに、すばらしい映画だと思う。

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gangan2929

4.0頻繁に見聞きする事柄を違った視点で

2025年1月17日
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泣ける

悲しい

大震災から少したった頃から現在まで(?)の物語。震災?っていつの?と感じるほどに、本当にこの国は・・・この国?日本人?
この10年、色んなことがありましたねぇ、そんなことをしみじみ感じると同時に、それら出来事が人々にどんな影響を及ぼしていたのか少し垣間見ることができたような─。
メインでもある家族の物語は非常に面白く観賞できました。その背景もまたちょっとだけ普通ではないもので、そこに絡んでくる事柄もまた興味深かったし─普通って・・・?
結構平坦な作品だったので、しっかりと見て、楽しもうとしなければ飽きる危険も感じました。個人的には、見入ったとはいえ、なんか長く感じてしまうフィックスなど数カ所あった気がしますし─。あと、なんか卑屈になってしまいそうな内容にも感じたし・・・どこまでも堂々めぐりの親子の感じなんて、結構笑ってしまえたからよかったものの、実際かなりイライラしたもんなぁ、何となく分かるんだけど・・・まぁそこがまたキモだったりするので─、
住んでいるこの場所は、数年後はどうなっていることやら・・・残っていくもの変わっていくもの、残って欲しい・残したいもの、変えたい・変わって欲しいもの、色々あるのでしょうけど、どうすることもできません。何せ自分自身のことすらどうなることやらと思っているくらいですので─そんなことを感じてしまった次第です。あ、けっきょく悲観的な?

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SH

5.0こんなに力のある作品が今まで話題になっていなかったのが不思議

Mさん
2025年1月17日
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主人公を始めとするそれぞれの演者が説得力があった。また彼らの力を引き出した監督の手腕には頭が下がる。脚本の力もあったかもしれない。
30年目の今日見ることができたのは幸運だった。
見てよかった。

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M

3.0大事なもんは時間がかかる

2025年2月2日
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大事なもんは時間がかかる

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ボブ

3.5この作品が…

2025年2月1日
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賛否両論なのは分かる気がする。

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Mr. Planty