「主演・富田望生」港に灯がともる TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
主演・富田望生
久しぶりに「どれを諦めるか」と悩む今週公開作品の中、普段の私なら、まず配信待ちか或いは見過ごす可能性すらありそうな感じの作品の本作ですが、逆に見過ごせない本作チョイスの決定打は「主演・富田望生」。ただ、公開規模はあまり大きくなく、新宿ピカデリーも「午後一に一回きり」のと言う、決して観やすいとは言い難い上映スケジュール。少し迷いましたが「確実に観られるうちに」と思い直し、リピーター割引を使って参戦です。で、13時25分の回は平日の割にかなりな客入り。新ピカさん、相変わらず読みが甘いです。
で観終わっての感想は、、、ズバリ期待通り、いやさ期待以上!の富田望生さん。めちゃくちゃしんどい役を見事に演じ切っておられていて「感服」の一語。テーマや設定的にはよくあるものですが、安達もじり監督(脚本)、並びに共同脚本の川島天見さんの容赦のなさが意地悪に感じてしまうほど、「これでもか、これでもか」な展開に厚み・深みも加わってえげつない。それに対し、灯(あかり)を演じる富田さんは冒頭から感情剥き出しの演技で、もはや富田さん自身が壊れないか心配になるほどです。
遣り過ごすことが出来ない性格の灯。日常的には外圧を避けるようにオーバーヘッドタイプのヘッドフォンで音楽を聴いて自分の世界に居ますが、家族と言う遠慮がなくなりがちの間柄では否応なしに食らってしまいます。特に、今も家父長制の名残りの中で生き続ける父親(甲本雅裕)との関係性は最悪。顔を合わせればお互い「ノーガードの撃ちあい」さながらに口論し、それが一種のトラウマになっている灯は徐々に壊れていきます。そこからの再生、再出発、そしてままならない現実に立ち向かい続ける灯。そこまでして克服しなければならないのか、と観ていてとても辛くなりますが、灯に手を差し伸べる人達もまたいろいろな事を抱えていて、それがわかるからこそ「また立ち上がる灯」に感動がより深まります。
渡辺真紀子さんや山中崇さん他、こぞって印象に残る素晴らしい演技。田村健太郎さんは相変わらずいやーな感じが上手すぎますし、「ああ、この人」と見つける都度に好印象マシマシな土村芳さん。そして、細かい口調やしぐさが実に的確で効果抜群の伊藤万理華さん、さらに今作で初めて知った中川わさ美さんも挙げざるを得ない、、、
と言うことで、入江監督(『室町無頼』)、岸監督(『サンセット・サンライズ』)、すいませんが今回は見送らせていただきましたが、本作を選んで本当に良かったと思います。満足、満足。