「スタジオコロリド名誉挽回の一作!」好きでも嫌いなあまのじゃく akkinaさんの映画レビュー(感想・評価)
スタジオコロリド名誉挽回の一作!
本作を制作したスタジオコロリドの前作『雨を告げる漂流団地』は、正直に言ってかなり厳しい出来だった。そのため一抹の不安を抱えつつも、予告編に強く惹かれ、劇場へ足を運ぶことにした。
まず、前作でも感じたことだが、本作でも美術は圧倒的に素晴らしい。架空の世界はもちろん、現実の風景ですら、写真で見るよりも鮮やかに、瑞々しく描かれている。この点においては、昨年は『屋根裏のラジャー』、今年は本作を最も高く評価したい。スタジオコロリドは『ラジャー』のポノックと同様、ジブリの系譜に連なるスタジオだと聞くが、その話にも大いに納得がいった。この美術表現の技術は、ぜひ未来へと継承されてほしい。
次に、舞台となる山形という土地の選択が良い。趣味で日本各地を旅してきたが、東北を巡るときが最も心が落ち着くと感じる。日本の歴史を振り返れば、文明は西から東へと広がり、東北を飛ばすように北海道が開拓された経緯がある。そのためか、他地域に比べて過度に観光地化されておらず、強いノスタルジーを喚起する。澄んだ空気、赤と黒が交差する薄暮、闇夜に浮かぶ花火──そうした夏の情景が、儚くも美しい。山形はまだ腰を据えて巡ったことがないので、この夏に聖地巡礼を兼ねて訪れてみたいと思わされた。
そして何より、ヒロイン・ツムギのキャラクターデザインが非常に魅力的だ。これこそが、前作へのわだかまりを押しのけて劇場に足を運ばせた最大の理由と言っていい。銀とピンクのツートンヘアに、アクセントとして配されたツノ。個人的な好みを、これでもかというほど正確に突いてくる造形だった。
確かに、脚本には粗が見受けられる部分もある。しかし本作には、「本心に従って生きる」という一貫したテーマが、物語の芯として確かに存在している。子どもであれ大人であれ、本心に従って生きている人がどれほどいるだろうか。決して多くはない。だからこそ難しく、だからこそ、この物語に強く惹かれるのではないかと思う。
最後に、本作について書かれた非常に優れた特集記事(リンクは貼れないので、↑の「特集」タブから参照してほしい)を紹介し、引用して締めくくりたい。(※z微バレあり)
> 刺さる1人にとっては何度も観たくなるほど、きっと大切な1本になるはず。
まさにその通りで、たとえどれだけ酷評されようとも、自分の心には深く刺さった。100回という表現はさすがに大袈裟だとしても、少なくとももう何度かは観たい作品だ。
> この作品はあえて“説明セリフが少なく”作られているみたいなんです。
雑だとか説明不足だとか言われがちな理由も、ここにあるのだろう。ノベライズで補完したうえで、もう一度観に行き、自分なりの答えを見つけたい。
> 柊とツムギが旅の道中で出会う人たちが、全員優しいんです。
未成年が真っ昼間からうろついていれば通報されてもおかしくない。それでも、あえてそうしない人がいてもいい。100人が100人、同じ行動を取る社会のほうが、よほど恐ろしいのだから。
