劇場公開日 2024年5月24日

「スタジオコロリド名誉挽回の一作!」好きでも嫌いなあまのじゃく akkinaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0スタジオコロリド名誉挽回の一作!

2024年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

(※ノベライズを読んで2回目を観てだいぶ解像度が上がったので、近いうちにアップデートしたいです。)

本作を制作したスタジオコロリドの前作『雨を告げる漂流団地』は実にひどかった。そんな一抹の不安を抱えつつも、予告編に魅了され、観に行ってきた。

まず、前作でも感じたことだが、美術が素晴らしい。架空の世界はもとより現実の世界だって写真で見るよりも彩り鮮やかだ。この点では、昨年は『屋根裏のラジャー』、今年は本作を一番に推す。コロリドは『ラジャー』のポノック共々ジブリの流れを汲むらしいが、それで納得がいった。この技術はぜひとも未来へ継承していってほしい。

次に、山形という舞台設定が良い。趣味で日本全国を旅してきたが、東北を巡るときが最も心落ち着くように感じる。日本の歴史を振り返れば、西から発展し、東北を飛ばして北海道が開拓された。そのため、他と比べて観光地化されてなく、ノスタルジーを呼び起こさせるのだろう。澄んだ空、赤と黒が交差する薄暮、闇夜に浮かぶ花火といった夏の風景が儚くも美しい。山形はまだじっくり巡ったことがないので、この夏に聖地巡礼をしてみたい。

そして、ヒロイン・ツムギのキャラデザインが非常に魅力的である。これが前作のわだかまりを覆させて映画館に足を運ばせた一番の動機となった。銀とピンクの二色ヘアーにアクセントのツノと実に好みのツボを突いてくる。

たしかに脚本に粗は見受けられるものの、根底に流れる「本心に従う」というテーマが物語を支えている。子供も大人も、このテーマに従って生きている人がどれほどいるだろうか。多くないからこそ、難しいからこそ、この物語に強く惹かれるのではないか。

最後に、本作の白眉な特集記事(リンクを貼れないので、↑の「特集」タブから飛んでください)を紹介しつつ引用して締めとしたい。(微バレあり)

> 刺さる1人にとっては何度も観たくなるほど、きっと大切な1本になるはず。
そう。たとえどれだけ酷評されようとも、なぜか心に刺さってしまった。記事にあるように100回はオーバーにしても、少なくとももう何回かは観たい。

> この作品はあえて“説明セリフが少なく”作られているみたいなんです。
雑とか説明不足とか受け取られる理由もここにあるのかもしれない。ノベライズで補完してから、もう一度観に行って答えを見つけたい。

> 柊とツムギが旅の道中で出会う人たちが、全員優しいんです。
未成年が真っ昼間からほっつき歩いていたら通報するのが普通だろうが、織り込んだ上であえてそうしない人がいても良い。100人が100人とも同じように動くなら、そのほうがよほど怖ろしい。

akkina