「『仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌』 滝沢馬琴と八犬伝」八犬伝 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
『仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌』 滝沢馬琴と八犬伝
『八犬伝』と言えば、我々世代からすると、NHKで1973~75年に放映された、15分間の連続ドラマ『新八犬伝』が思い出される。滝沢(曲亭)馬琴原作の『八犬伝』を元にして、辻村寿三郎の人形劇とコラボして製作された、2年間に渡る人形劇。当時、遅々として進まない展開にイライラしながらも、次第に八犬士が召喚され、「玉梓が怨霊~」のおどろおどろしい台詞に、胸躍らせて見入った記憶が甦る。
そんな『八犬伝』の新作ということだったが、本作は、単に『八犬伝』の小説を実写化するのではなく、主役はあくまで、原作者でもある滝沢馬琴。馬琴が、28年間の歳月をかけて、目が見えなくなっても、息子の嫁・路子の手助けもあり書き上げた『八犬伝』に纏わる実話と、『八犬伝』のファンタジ・ストーリーである虚構を、交錯させた展開となっている。
当時、人気作家であった滝沢馬琴という人物は、極度の堅物男。妻からは、毎日愚痴を聞かされて嫌気を指す生活だったが、息子の宗伯からは、物書きとして尊敬されていた。そんな馬琴が、気兼ねなく話せる友人だったのが、浮世絵でお馴染みの葛飾北斎。実話パートでは、互いに悪態を突きながらも、それぞれの小説と浮世絵の才能を認め合う馬琴と北斎の2人の奇妙な友情を描いていく。
一方、『八犬伝』パートは、劣勢となった戦火の中、里見家は、名犬・八房の活躍で、敵大将の首を獲り、その妻・玉梓も打ち首にする。しかし、玉梓は死に際に、里見家に怨念の呪いをかける。その呪縛によって再び窮地に陥る里見家を救い出す為に、八つの玉の力に導かれて、『犬』に関わる苗字と『牡丹』のあざがある八犬士が集結し、怨霊・玉梓との戦闘を繰り広げる物語。
実話パートに登場する、馬琴を演じた役所広司と北斎を演じた内野聖陽、そして、馬琴の妻を演じた寺島しのぶは、もう何も言うことなく安定感のある演技で魅了する。『キノ・フィルムズ』らしく、ベテラン3人による泣き笑いの人情劇の中に、若手の磯村隼人が馬琴の息子役として、よいアクセントとなる演技をみせていた。
八犬士の方は、若手のイケメン有望株の8人が顔を揃えていた。フレッシュな演技で、頑張ってはいたが、流石に、役所、内野、寺島による演技と交互に、この若手の演技を観ると、なんとなく、演技の凄味や厚み、重さが感じられず、申し訳ないが、『時代劇ゴレンジャー』の様な感想で、イマイチ入り込めなかった。
「南総里見八犬伝」は、馬琴が「水滸伝」を手本にしただかあって、一人ひとりを列伝で描いているから、長くもなるし、集合した時のワクワク感が固まるんですよね。
それは一本の映画の、しかも半分じゃ描けませんね。
共感ありがとうございます。
ゴレンジャーも八犬伝の子孫と考えると、融和性半端なさそうです。出会う迄のイライラ、次々と出現するテンポ、曲亭先生色々考えたんでしょうね。