「愛とロマンはあまり感じられなかったかな」八犬伝 はりー・ばーんずさんの映画レビュー(感想・評価)
愛とロマンはあまり感じられなかったかな
子供の頃に角川映画の『里見八犬伝』を見ていたので、その後に教科書に出てきた滝沢馬琴と南総里見八犬伝の事は良く記憶していた。
『八犬伝』には、薬師丸ひろ子が『里見八犬伝』で演じていた静姫は出てきません。
簡単に言うと角川映画の『里見八犬伝』は、愛とロマンの大スペクタクル映画。
そして『八犬伝』は、滝沢馬琴が南総里見八犬伝を書き上げるまでの映画。
愛とロマンはあまり感じられなかったかな。
実在の滝沢馬琴が八犬伝を書き上げるまでの話がメイン。
交互に展開される実(現実世界)と虚(八犬伝の世界)の構成は良い、実の役者達の存在感のある演技も良い、気になったのは虚の映像の撮り方(演出)。
舞台のような照明、緻密に背景を描かず、名前の知らない若い男優の心に訴えかけない軽く感じる演技。
八犬士は、すべて同じような年齢設定なのかだろうか?
『里見八犬伝』では、子供から中年男性、女性の八犬士もいた。
『八犬伝』は原作に近くて、角川映画の方がいろいろ脚色したんでしょうね。
屋根の上で戦うシーンなんかは見どころなんだろうけど、CGなのがバレバレの映像なんすよね。
この映画は、実パートがメインで、虚の八犬伝シーンは付け足しという感じになってしまっているのが残念。
ネタと構成が良いだけにオシイとは思う。
ただ、この惜しいという感覚、たまに感じる感覚なのだが、そこからが難しいんでしょう。
最近だと『僕は、線を描く』でも感じた。
題材、役者がよければ、後は監督の問題になるんだろうけどね。
そして、ラスト。
実と虚が結びついたという事なのだろう、ただ、ちゃちい演出だと感じてしまった。
良いところは役所広司と内野聖陽の演技、土屋太鳳の伏姫も良かったかな。
虚の八犬伝パートの里見八犬伝との違い
・時代設定
里見八犬伝は伏姫没後100年、八犬伝は没後20年
・静姫(薬師丸ひろ子)の存在
八犬伝には静姫は存在せず
・八犬士の年齢と性別
八犬伝は全員が若い男性、里見八犬伝は女性(志穂美悦子)と子供もいた
・浜路の設定の違い
里見八犬伝は、岡田奈々が演じ京本政樹演じる八犬士の義妹で体中が毒の闇の軍団となる
八犬伝では、河合優実が演じ、メインの八犬士の犬塚信乃に想いを寄せる役どころ
・主題歌の有無
里見八犬伝はバラードの洋曲が良かった、『八犬伝』は無い
『里見八犬伝』は、長すぎるキスシーンなどの話はありますが、同じ時代の戦国自衛隊と並んで、私は大好きな映画です。
映画レビューを始めてから思うのは、この二つの映画は評価が低すぎる。。
特撮技術はともかく、今見ても十分楽しめる映画だと思うんですけどね。
私の中で『里見八犬伝』と『八犬伝』を比べると、『里見八犬伝』に軍配が上がるかな。
子供の頃に見たので美化されてるとは思いますが。。
それにしてもなんですが、見たのは土曜日の最終回(19:30~)。
観客は5~6人でした。
今年の日本映画界でも注目の作品だと思うんですが。。
田舎の映画館だから仕方ないのだろうけど、興収を心配してしまう私でした。
角川映画は鎌田敏夫氏の「新・里見八犬伝」なので、そもそも原作が違います。こちらの原作も面白いですよ。
ちなみに南総里見八犬伝の親兵衛の嫁は静姫(静峯)です。(本作には出ませんでしたが)