「日本エンタメの源流 虚が実を超える」八犬伝 bionさんの映画レビュー(感想・評価)
日本エンタメの源流 虚が実を超える
いやー、満喫した。八犬伝の世界にどっぷりと浸かり、滝沢馬琴の生き様を見る。こんな贅沢はない。
NHK人形劇『新八犬伝』の放送時間に合わせて遊ぶのをやめて、家に帰っていたことを思い出す。当時は幼かったから、物語をしっかり理解できていたわけではないが、とにかく面白くて、放送が楽しみでしょうがなかった。
この作品では馬琴が北斎に語って聞かせるスタイルをとっている。語りは劇中劇としてスクリーンに映し出されるが、あまりに面白いから、馬琴の語りが終わって現実世界に戻ると、クリフハンガー状態になり、次の展開が一刻も早く知りたくなる。
八犬伝パートでは、ワイヤーアクションとCGの合成感を感じてしまったりすることはあるが、物語のエッセンスをギュッと詰めた構成がアラを隠してしまう。この物語は面白い。
演者では、渡邊圭祐の颯爽とした刀捌きと板垣李光人の凛々しさが光っていた。
偏屈ジジイと巌窟ジジイの何とも羨ましい交流には、思わず笑ってしまう。この馬琴と北斎コンビをも唸らせてしまう鶴屋南北の登場シーンは強烈。立川談春をさらに凝縮したようなへそ曲がりな喋りに、引き込まれる。へりくだっているようでいて、言葉に真理をまぶして相手を圧倒する。
日本のエンタメの源流がここにある。これを見逃す手はございませんよ。
コメントありがとうございます。
南北との対話はどっちが正しいとは言えないと思いました。闇米を食わず餓死するのがおかしいのか、生きる為にはタタキバイトも已む無しなのか、観る側としてはどっちも観たいですね。