「虚も貫けば実」八犬伝 マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
虚も貫けば実
八犬伝(南総里見八犬伝)
曲亭(最近は滝沢とは言わない)馬琴により
1814年から28年かけて106巻が刊行された
今でいうライトノベル「戯作(げさく)」
室町時代を舞台とし
安房里見家の伏姫の因縁によって八つの玉に
導かれたアザをもつ若者が里見家に結集し
古賀公方を討つ
そのプロットは後のファンタジー
漫画や小説に与えた影響は計り知れない
また馬琴は恐らく日本初の
原稿料だけで食っていた作家である
今作は山田風太郎の小説をベースとし
武家奉公を悲願しつつ偏屈な性格が
災いして戯作に甘んじる曲亭の葛藤を
葛飾北斎との関係と共に
曲亭の人生をたどりながら
二元的に八犬伝の世界と
行ったり来たりする内容
どうだったか
曽利文彦監督は
漫画実写化映画の傑作「ピンポン」
で度肝を抜かれ
フルCGムービー「アップルシード」など
数作見たことはあるが久しぶりに聞いた名前
どんなもんかと思っていたがこれが良かった
曲亭の暮らす江戸の世界の文化的描写が
素晴らしく歌舞伎座のシーンは
見入ってしまった
逆に八犬伝のシーンは
かつて平成初期の角川の
実写ファンタジー映画のような
どこかチープな雰囲気が漂い
ここの出来が悪いという感想も
よく見かけるが
現実と戯作としての対比であえて
そう作っている感じがした
八犬伝が人気作になって
お武家にもファンがいて籠を持って
迎えに来ても紹介がなければ会わん
という偏屈さを役所広司さんならではの
クセのある演技も見事
栗山千明・中村獅童
寺島しのぶの過不足ない安定した
演技で最後まで楽しめた
曽利さん映画はそんなに
しょっちゅう撮らないけど
やっぱいいね
原田眞人さん的で
ピンポン良かったですね、何せスーパーカー♪ですから。異世界に転移する部分は今作にも痕跡を感じますね。エロス部分が全く無い! 一つでも有れば少ない分際立ったと思います。