ある一生のレビュー・感想・評価
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一人の一生を通して「生きる」ことを問う作品
主人公アンドレアス・エッガーの人生を通して
「生きる」ことを問うている作品だと感じました。
幼少の頃から養父へ預けられ、
その養父から虐げられながら青年になっていくアンドレアス。
1900年代の初頭ということもあって、非常に酷い、足を骨折させるほど激しい体罰。
こういう環境で育ったせいか、アンドレアスは「生きる」ことに懸命だと思いました。
仕事を懸命にやってお金をため、徐々に自立していき、
その最中出会ったマリーと出会い結婚し束の間の幸せを感じているところに、
雪崩という不幸に見舞われ最愛のマリーを亡くしてしまう。
その後のアンドレアスは、マリーに手紙を書き、棺桶に入れ続けることで
マリーとの繋がりを感じながら生きているんですよね。
それでも生きていく。そこに「生きる」ということは何なのかを私も考えてしまいました。
彼は死の間際までマリーを想って手紙を書く。この強い思いは心に刺さるものがありました。
老人になったアンドレアスが養父の亡骸に対面する(対面すること自体40年ぶり)シーンでは
彼を赦したようにも見えました。
晩年になると達観もするのでしょうか。
もちろん、無為に時を過ごしたわけではなく、仕事や大事な人を亡くしたり戦争(ソ連の捕虜になったり)を経ての
ことだと思います。
とても深遠な作品で、アンドレアスの生き様もさることながら、
オーストリア・アルプスの圧巻のスケール・景色とも相まって、実に味わい深い作品になっていると思います。
観客も思った以上に入っていて、うれしかったですね。
孤児となった少年の壮絶な一生
1900年頃のオーストリアで、母が死に孤児となった8歳の少年アンドレアスは、アルプスの渓谷に住む母方の親戚クランツシュトッカーの農場へ連れてこられた。農場主にとってアンドレアスはタダで使える奴隷の様な存在で、家の子供たちと一緒に食事も出来ず、学校にも通わせてもらえず、虐げられ、虐待を受け、脚を棒で殴られ骨折し、その後遺症でまともに歩けなくなってしまった。そんな暮らしの中で、心の支えは老婆アーンルだけだったが、そんなアーンルが亡くなると、成人していたアンドレアスは農場で我慢する必要はないと思い、そこを出て日雇い労働者としてひとりで生活する様になった。やがてロープウェーの建設作業員となった彼は最愛の女性マリーと出会い、山奥の小屋で幸せな結婚生活を送り始めた。しかし・・・てな話。
オーストラリア・アルプスの山々が美しかった。
あの美しい景色を見られるだけでもお金を払う価値が有ると思った。
あんなに虐待されてたのに反抗しなかったのはアーンルと離れたく無かったからなんだな、ってほろっとした。
マリーはそんなに美しい?とは思ったけど、山で出会うとそんなるかなぁ、とわかる気もする。
この男の一生をどう思うか、うーん、難しい。
ほとんど良かったと思える時期はなく、苦しいだけの人生の様に見えた。でも、マリーへの想いをずっと持ち続け、それが幸せだった様にも見えた。
マリーの埋められた棺の隣に埋めてもらえたのは幸せだったのだろう。
最後頃に下半身が無い遺体が発見されたシーンが有ったけど、あれは元農場主でいいんだよね?
アンドレアスの青年期を演じたシュテファン・ゴルスキーがかなりのイケメンだった。
彼の人生をどう思うかは
たぶん人によるのだろう。
今までいろいろなドラマや映画で、キスのシーンを見てきたが、自分にとっては、とても心に残るシーンになった。(ひょっとしたら一番)
今までロープウェイに乗っても、それを造った人たちのことを考えたことがなかったが、これからは考えることができそう。
名も無き男の波乱に満ちた生涯。何も語らず黙々と地道に働き続ける姿が本当にいい。
名も無き男の波乱に満ちた生涯。
ほとんど共通点も無いのに自分を重ねているようで感動する。
本当につらい幼少期からさらに過酷な現実をいくつも経験しながらも、
終始、何も語らず黙々と地道に働き続ける姿が本当にいい。
そんな中で、ヤギ飼い(ヤギハネス)との不思議な関わり合い、意外な再会も面白い。
見応えあり
久しぶりに映画館で見た方がいいとおすすめできる映画
アルプスの雄大な景色に決して幸せには思えない人生を歩んだ男性の一生を描いている
幸せには見えないが、果たしてそうなのか?ふと考えてみる
少年期の養子としての境遇や養父からの虐待
孤独な青年期に巡り会えた女性との結婚や妊娠でやっとこれから手に入れようとした生活が叶わなくなり失意のまま人生を過ごしていく
老年になって巡り会えた女性にもその寂しさを分つこともなく死んでいった人生を
第三者は不幸せと思いがちだけど、最後まで生き抜いて一人の女性を愛し抜いた人の気持ちはその人にしかわからない
自分で他人の人生と比べて幸せ、不幸せと判断することが出来るけど
自分の人生の価値なんて所詮、他人には評価することは出来ない
何度も死生観が語られたり、生まれたときから死に向かっている、誰もが最後は死ぬ
死を前に、彼が語ったように叶わなかった夢や希望もあった人生は誰にも訪れるのだろうと思った 愛する人がいてもいずれ一人になる瞬間がくる そのとき彼のように天寿を全うすることが出来るのか
原作も機会があれば是非読んでみたいな
予告編は見ていない
ポスターだけを見て何か面白そうかも?と思って鑑賞。アルプスの景色は綺麗でした。
主人公の生い立ちが哀れで幼い頃から理不尽な虐待を受けていたが妻をめとり幸せになるかと思いきや、更に不幸になっていくという話し。
映画と観客の関係って、人間と神様の関係性に似ていて映画の主人公がどれだけ足掻いても、神様の観客は手を差し伸べる事はできずただ眺める事しか出来ない。
さぁ、その足掻きっぷりなんだけど主人公が熱演しているんだけど何か面白くないんだよな?これだけ不幸な目にあっているんですよ?可哀想でしょ?とメッセージは伝わるんだけど。原作はベストセラーだそうだから、そっちは面白いのでしょうか。イマイチ、楽しめない映画でした。
観て良かったなあと思う作品です
養父やその家族からイジメや虐待の日々の幼少期、日雇い労働者として働き妻と出会いようやく人間らしい生活が垣間見える成人期、そして戦争、帰還、老年期と1人の名もなき男性の一生を素晴らしい景観と音楽で魅せてくれます。少年期、青年期、老年期すべて素晴らしい演技でした。ホント、観て良かった作品でした。
愛する人のことを考えながら逝くというのは最高級の幸福なのかも知れません
2024.7.16 字幕 アップリンク京都
2023年のドイツ&オーストリア合作の映画(115分、G)
原作はローベルト・ゼーターラーの小説『Ein Ganzes Leben(邦題:ある一生)』
親戚に育てられた少年の、過酷に思える一生を描いたヒューマンドラマ
監督はハンス・シュタインビッヒラー
脚本はウルリッヒ・リマー
原題は『Ein Ganzes Leben』、英題は『A Whole Life』で、ともに「一生」という意味
物語の舞台は、1900年頃のオーストリアのアルプス山岳地帯
両親を亡くし、母の兄であるユーベル(アンドレアス・ルスト)の農園に連れてこられた少年アンドレアス・エッガー(イヴァン・グスタフィク、成人期:シュテファン・ゴルスキー、老齢期:アウグスト・ツィルナー)は、奴隷同然の扱いを受ける事になった
ユーベルには息子2人、娘2人がいたが、息子2人は若くしてジフテリアで死亡し、働き手はエッガーしかいなかった
第一次世界大戦が勃発し、エッガーも徴兵の対象になっていたが、ユーベルは軍に出向き、働き手がいないから兵役を免除しろと嘆願した
それが受け入れられて、エッガーはユーベルの元を逃げるチャンスを失ったのだが、成人して体力的に逆転した時期を見計らって、ユーベルを脅し、彼の元を去ることができた
その後エッガーは、ロープウェイの建設作業員として働き、宿屋のバーにいたウェイトレス・マリー(ユリア・フランツリヒター)と恋に落ちる
やがて、一緒に住み始め、二人は赤ん坊を授かろうとしていた
そんな矢先、彼らの住む家は雪崩に巻き込まれ、マリーとお腹の子どもは死んでしまうのである
悲痛にくれるエッガーは、その後天涯孤独の身を貫き、老年になるに連れて山奥へと向かっていく
そこで小学校の先生をしていた老女アンナ(マリア・ホーフテッター)から誘われても、彼の体は反応しない
そうして、マリーへの手紙を「死ぬその日まで」認め続ける事になったのである
本当に平凡で過酷で悲劇的に思える人生なのだが、彼自身がそう思って死んだかは何とも言えない感じがした
彼を酷使し続けたユーベルは、妻も息子二人も早々に亡くしている
働き手がいなくなった農場が続いているとも思えず、娘たちがどんな人生を歩んだのかもわからない
それぞれに幸も不幸もあるのだが、それを俯瞰的に見るか、客観視するか、同化するかで見え方も変わっていくように思えた
映画は、本当に普通のある人生を描いていて、何かを成したわけでも、何かを残したわけでもない男を描いていた
そこに人間の幸福があるようには見えないのだが、一人の女性を愛し、その命が尽きる時までマリーのことを想って力尽きる人生というのもなかなかないと思う
彼女に宛てた手紙は誰に知られることもなく、エッガーの棺とともに埋葬されるのだが、これが儚くも幸福だった人生のように思えるのが不思議なところではないだろうか
いずれにせよ、劇的なことはそこまで起こらず、あまり観ていて楽しい映像が続くということもない
だが、ほぼ五体満足のまま命が尽きるというのは、現代社会ではあり得ないので、それはそれで恵まれているのかなとも思う
ロープウェイ建設で無駄に死んだ人もいるし、食うに困ってのたれ死んだ人もいるだろう
また、裕福から転落して惨めになった人もいるし、欲しいものを全て得た人もいたりする
そう言った様々な人生の中でも、最期にどう死んだかというのは重要で、彼の葬式には多くの人が集まり、丁重に葬られたという事実はそれを証明しているのかな、と感じた
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