HOW TO BLOW UPのレビュー・感想・評価
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行き過ぎた環境テロへ向かう破滅
現実に辟易とした時、突発的な破壊衝動に向かう人々が現れる。貧困問題と同じように環境問題が語られる事への違和感。そのイデオロギーを越えてシンプルな危機を提示する変え難い映画作品になっている。
もっと、 単に社会問題的なものを扱った映画かと思ってたけど、 予想...
もっと、
単に社会問題的なものを扱った映画かと思ってたけど、
予想外に、
『頭の悪い活動家』的な取り上げ方してる?
まさに今こそ
「How to blow up a pipeline」というノンフィクション原作で本来のタイトルは同じ。(そこ落とすあたりが日本的)
その成り立ちから想像するよりもずっとフィクションの映画として良く出来ていた。
出自の異なるメンバーが集まってあるひとつのプロジェクトを進めている様子をリアルタイムで、時々それぞれが何故参加しているのかを遡って描く、ってのは実は「オーシャンズ」シリーズなどいわゆるケイパーものと同じだからまぁ不思議はないけど。
ちょっと違うのは、本作は金儲けするわけじゃない分「動機」の止むにやまれない切迫度が凄い、ってことと達成条件がはっきりしないこと。それからみんな素人なこと。
本作はそこら辺りを利用して、ローワンというというサスペンス要素を加え、更には達成条件を最後に明らかにするのが上手い!
テーマが非常に重要な社会正義でもあり、参加しているスタッフや役者陣もコンシャスな感じ。主演のアリエラベアラーさんは脚本も共同執筆しているし。まさに今こその映画でしょう。
自己矛盾
テキサスの石油精製工場のパイプラインを爆破する計画を立てて実行する若者たちの話。
自分の生活で使用している石油製品やエネルギーは棚に上げ、環境ガーッ!と訴えかけたいらしいけれど、その為の環境破壊は「ある程度は仕方ない」とかいうアッフォと仲間たち。
登場人物それぞれにスポットを当てて、それまでやそこからを差し込みつつみせていくけれど、環境活動家じゃないヤツの方が多いし、環境活動家はそこに至る思想の変化をみせないし、ミミズ腫れの復習はまだ言い分もわかったけれど、それ以外の人物はなんだかね…。
一応、実は…的な流れにしているけれど、段取り悪いしあんたはアリバイがーとか言ってるし、何よりそもそもの思想がなんだそれ!?なので、ふ〜んという感じで盛り上がらなかった。
主義主張があるこうした行為とない行為と、そして日本との比較(参考までに)
今年216本目(合計1,308本目/今月(2024年6月度)16本目)。
(前の作品 「蛇の道」→この作品「HOW TO BLOW UP」→次の作品「」)
※ 法律系資格持ちとしては、「いかなる理由があるとしても犯罪行為を推奨するものではない」ことをまず強く断っておきます。
映画内で描かれる行為は決してほめられた行為ではありません。ただ、その思想論として流れる「石油工場が環境を破壊している」ことそれ自体は程度の差はあれ事実だし、こうしたテロ行為(ほか、いわゆる通り魔等)と比べたとき、量刑の問題や取った行動が許されるかという点はさておきも、まるで合理性も何もない通り魔事件などと比較すれば、許されるかの問題はさておき、「主張は理解しなくもない」といったところです。
日本では、この手の事件といえば、あさま山荘事件や、地下鉄ガス事件などがあると思います。どちらも犯罪行為を推奨しませんが、これら2つについても、「理解するかどうかは別にして」、特定の思想の元行われていたのは事実です。また、日本で「ほぼ」同じ事件のターゲットになりうるのは、日本の特性上「発電所がらみ」「自衛隊がらみ」になろうかと思いますが、後者の「自衛隊がらみ」は実は日本に存在する事件で(この点後述)、もちろん自衛隊(アメリカ軍基地も含む)も原発もとてもこうした行為が「取りうる」ほどの甘さに日本はなっていないので(戦中の混乱期等除く)、日本ではこの意味で同種の事件は起きにくいのですが、「自衛隊がらみ」では起きたことがあります(後述)。
ただいずれにしても「犯罪行為を助長する趣旨の映画ではない」ことは最初に述べるべきだったし、この映画をご覧になった方はわかるのですが、なぜか人物ごとに描写が繰り返される謎の進行に???状態で、「入った映画館間違えたのか」ということになりそうな点も一応ある(パイプラインの話は途中くらいまで出てこないため)ところがやや難です。
採点は以下まで考慮しています。
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(減点0.3/この映画の背景にあるものの説明が足りない)
重ねてかきますが、このようなテロ行為とも言えうる犯罪行為は推奨されるものではありません。抗議手段なら、ここまでの行為ではなくても、仮に犯罪にあたるとしてももっと「緩和した方法」があるからです。いきなりその思想(映画内の爆破しちゃえの理論)に飛ぶのは話がぶっ飛びすぎで、ややこの点、何を言いたいかわからない部分があります。
※ ただ、最初に「怒りを抑える方法」みたいなグループワーク(当事者の会、あるいは、ダルク相当のもの)が映るシーンがあるので、「怒りを抑える方法がないキレやすい当事者を描いたもの」?とも見たのですが、この辺もよくわからず。
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(減点なし/参考/日本で起きた「自衛隊への行為」について)
北海道は恵庭市(当時は恵庭町)で実際に同趣旨に近い事件が起きたことがあります。「恵庭事件」といいます。当時も今も北海道は牛が多くいますが自衛隊基地も多い北海道で、自衛隊が当時、訓練時の音量に配慮がなかったため、酪農農家が申し入れを行ったにもかかわらず、約束通りにならなかったため、自衛隊基地に入ったうえで、電話通信器具等を壊して逮捕された事件です(いわゆる「恵庭事件」)。実際に酪農に支障をきたしていた事情もありますが、被告人が自衛隊の合憲違憲を争った事件のひとつです。
この事件は、もっぱら当時の自衛隊法121条(当時)の「武器・弾薬等の破壊行為」に「電話通信装置等の破壊」が含まれるかが争われた事件ですが、地裁判例(昭和42年)は、
・ 武器・弾薬等とあるところに「通信器具」を入れて考えることはできない。なぜなら、前者の規定はそれが兵器であるため、兵器にならない通信器具を拡大解釈して論じることは罪刑法定主義に反する。
・ 器物損壊罪(刑法)なら成立の余地はあろうが、それは争われていない。争われていない事項は裁判所は有罪無罪を判断できない。
・ したがって被告人は無罪である
・ よって無罪である以上、自衛隊が合憲違憲かの判断を行う必要はない
…という判決を下し、このまま確定しています(国側は控訴せず)。
ただ、もちろんこの事件のあと、法律もちゃんと改正されたし警備も厳しくなったので、およそこういったことは発生しない事項ですが、日本でも同じような事件が起きたということ「それ自体」は事実として知っておく必要があります。
WHY WE SABOTAGE YOUR PROPERTY
あなたの財物を破壊する理由。法が裁かないなら私たちが裁く…。
社会派というだけでなく、しっかりと観客を引き込む力強い娯楽性も兼ね備えている。『オーシャンズ11』シリーズのような作戦実行までの計画パートのスリリングさ(危険分子バカップル?)、『レザボア・ドッグス』のような計画前の人となりを掘り下げるドラマと計画後の顛末。その語り口は手堅いとも言えるかもしれないけど、効果的に交互に描かれる構成で、手際/テンポよくグイグイと掴まれ引き込まれてしまう、今の世界を捉え切り取る重要作。気の利いた前フリから必然性のあるラストへ雪崩込むキャラクターそれぞれの描き分けも良かった。その土地にも根ざしたような無骨さもあって、荒削りながら上質。
この冬は、テキサスで計画がある。"所詮他人事"という安全圏から観客を引きずり出すための演出・ストーリーテリングが為されていて、最後の最後までアッという間に圧巻だった!本作の主人公たちの行動に全て共感したわけではないけど、石油の街で生まれ育ち、そのように実際自らや大切な人々の命が奪われるような状況になれば、そりゃそうなるよと。そうやって、社会の枠組みに組み込まれた大企業やシステムは咎められることなく、それを告発しようとする個人は、悪として裁かれるのか?それを象徴するような、最後の警官の横暴さ・暴力。
P.S. 上記で引用したどちらの作品も大好きだし、中学生の頃にはその『オーシャンズ』ファミリーからスティーヴン・ソダーバーグなどが製作した社会派映画に凝っていた時期もあったので、本作は個人的にツボ。
勝手に関連作品『ナイト・スリーパーズ』『ザ・イースト』
犯行声明
作品としても、前半は犯行理由の正当化をダラダラと説明しているだけだし、「環境テロ行為を助長する」とFBIが警告を出した様に、映画で破壊行為を正当化する内容は、どんな理由をつけても駄目な事は駄目です!
理解するか共感するか、あるいは嫌悪するか
環境問題の啓発のため、石油パイプラインを爆破しようとする環境活動家達の計画と背景を追う物語。
本作の主なメンバーは、アメリカン・ニューシネマの主人公達のように反抗することや破壊することを主目的とした人物としては描かれていない。合法な啓蒙活動に行き詰ったが故に過激な手段を選ぶ哀切や、産業への攻撃が地域生活に及ぼす影響、自分達の手段が必ずしも社会に共感されないこと、爆破という行動がニュースやSNSの中で消費されて終わる可能性があることを理解している冷静さが新しかった。
理性的な人物像を与える一方で、共感を得るためか当事者性を持たせてもいる。彼らの主観や感情が向かうのが破壊活動の標的選びで、石油会社や石油化学産業に対して利害関係を持つメンバーが多く、私怨のきらいが色濃いメンバーもいる。私的感情での破壊行為はアクティビズムと言えるのか、復讐ではないのか、という疑問が残った。
彼らの理性的な判断に理解を寄せるか、主観的な感情に共感を寄せるかで賛否が分かれそうな作品である。
過激な活動家をヒールや空回りする意識高い系としてではなく、考え行動する主人公として据えた点は新鮮だった。大きな目標から始まった物語が徐々に個人的な話題にフォーカスし始める展開を、ぶっつけ本番気味の爆破計画の行方や急拵えのメンバー構成に危機感を抱かせることで引き締めた構成も絶妙だった。
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