劇場公開日 2024年6月14日

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「個々の理由、ひとつの目的を抱えたグループ群像劇を鮮烈に描く」HOW TO BLOW UP 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5個々の理由、ひとつの目的を抱えたグループ群像劇を鮮烈に描く

2024年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

待ったなしで迫りくる環境破壊にいかにして対抗すべきか。主人公らが選び取った方法は強硬的だ。その分だけ彼らが追い詰められ「今動かなければ」という揺るぎない思いに駆られていることの裏返しでもあるわけだが。本作はどこか『レザボア・ドッグス』を彷彿とさせる構造で、メンバーの過去やここに集う切実な理由をざらついたタッチで描きながら、個々の事情は十人十色で全く異なることを描き出す。これによって本作そのものが表情豊かになる一方、説明を伴うフラッシュバックの挿入には爆破計画のスピード感とサスペンス性を希薄化する弱点もある。と同時に、彼らの境遇や思いが切実であればあるほど、実行中に起こるちょっとしたミスや人為トラブルが、本作のリアリティを損なう無駄な要素のようにさえ思える自分がいた。とはいえ、若者たちの間で世界的に広がる環境への危機意識を、象徴的に具現化した怪作にして力作。この監督の次なる一手に期待が募る。

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牛津厚信