「芸への愛と執着の物語。これ以上ないという最高のキャスティング。」国宝 ターコイズさんの映画レビュー(感想・評価)
芸への愛と執着の物語。これ以上ないという最高のキャスティング。
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見応えのある歌舞伎のシーンに濃厚な人間ドラマ、そしてキャストが素晴らしい。初っ端の永瀬正敏さんの貫禄で緊張感が高まる。
様々な愛憎が描かれる。この愛憎が汚いものにならないのは歌舞伎という一つの芸への想いが貫いているからだと思う。喜久雄を部屋子にした半二郎、ライバルでありながら一番の理解者でもある喜久雄と俊介、凄まじい存在感の人間国宝万菊。
万菊がなぜ喜久雄にあのように振る舞ったかは引っかかっていた。初対面で容姿の美しさに触れ、俊介を抜擢し、最後に助け舟を出す。万菊は美しいものから解放されたというが、だからこそ喜久雄を助けようと思えたのではないだろうか。最も優れた歌舞伎役者でありたいという悪魔の声は万菊にも囁きかけ、美しくあろうとせずとも美しい喜久雄に嫉妬があったもののその感情からようやく自由になれたのかなと思ったのだがどうだろう。
芸を愛し芸に執着し、人生を賭けるものたちのドラマ。キャスティングが大勝利だと思った。
田中泯さんは、撮影終了後もこの作品のための稽古を続けておられるそうだ。彼はこう語っている。
「稽古は過去(記憶)との往来が多ければ多いほど確実に未来につながる。現在・過去・未来が複雑なつながりを構成するに違いないのだ。」
冒頭の父を失うシーンで、父が息子にこの姿を見ておけと言い残す時、雪が舞い散っていた。あの雪は彼の脳裏に焼き付いているだろう。そして、俊介とともに過ごした日々を彩る桜吹雪も。
人は過去と往来し、生を泳いでいくのだと思う。過去と、執着とむきあいながら。
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