「上方歌舞伎の格式、伝統、芸術性を再現する映像に圧倒」国宝 ヘマさんの映画レビュー(感想・評価)
上方歌舞伎の格式、伝統、芸術性を再現する映像に圧倒
上方歌舞伎を観たことはないので、その再現度には言及できないですが、演技、演出、衣装、美術など細部に渡って構成された雰囲気に、圧倒されました。凄い。
格式高く、伝統芸能からこそ「血筋」という後ろ盾が必要であり、研鑽された「芸」だけでは、実際には太刀打ちできない、というのを突きつけられた感がある。
「血筋」より「芸」が先、という花井半次郎の選択が、花井一家すべてを不幸に導いたとしか思えなかった。
伝統的に受け継がれた芸術だからこそ、そこに格式が生まれ、血筋によって継承されていく世界。頭一つ抜きん出た「芸」に魅了されて執着すると、その世界の根底が壊れてしまう。
小野川万菊が、東一郎(喜久雄)と初めて言葉を交わした際、彼に戒めた忠告は、「血筋」を凌駕してしまう東一郎の魅力に恐れたのではないか。そして「芸」より「血筋」を重んじた万菊だったが、やはり自分に嘘がつけなくなり、晩年になり「芸」を重んじた選択をしたのだろうか。
死ぬ間際で心変わりする、わがままな爺だけど、喜久雄(というか彰子が)救われて良かったわ。
やはり格式、伝統、血筋といった概念で成り立つ世界は、あくまでもその世界で構成された要素が必要であり、「個人の技量」(芸)によって切り開く世界ではないんだろう。
「芸」を極めることで、喜久雄は「国宝」にまで上り詰めたが、その道のりは苛烈すぎる。
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