「期待を超える大傑作。心が震えた。」国宝 sannemusaさんの映画レビュー(感想・評価)
期待を超える大傑作。心が震えた。
立川シネマシティにて封切日に鑑賞。
吉田修一ファンかつ李監督の骨太作品好きとしては大期待でしたが、その期待すら遥かに超えてきた。
終始緊迫感に満ち満ちて、張りつめた空気。
心がヒリヒリして震えっぱなしでした。
体感的には、演技や場面に呑まれて、のめり込んで観てたらあっという間に終わっちゃったんやけど、、約3時間もあったのか!
日本映画にしか表現しえない表現、感情、世界観。そのどれもが高次元であり、かつ上品なバランスで成り立っている、唯一無二の作品であった。
舞台芸術らしいエモいシーンも満載で、この作品を彩っていた。
ともすると過剰だったりチープになりがち(海外意識)な日本的な要素も盛り盛りだったのだが、舞台が舞台なだけに、ごくごく自然。
そして何よりも役者陣の演技力よ。
そもそもが映画の中で舞台役者を演じるっていう二重以上の構造になってるわ、しかも歌舞伎の世界だわで設定自体がウルトラハードモード。
吉沢亮の演技にぞっとしたかと思えば
後半から横浜流星の演技にも心を持っていかれて。人間模様にも芝居の舞台にもグイグイ惹き込まれてゆく。
2人ともとんでもない俳優だな。
怖いくらいの凄みを感じた。
そして彼らを遥かに上回る妖怪は、田中泯演じる万菊翁。その凄みったらなかった、、
国宝という頂の圧倒的な存在感!
役者の演技力と脚本編集のバランスも秀逸。
語り過ぎない、説明しすぎない、ちょうどいい余白がある。
もっと人間ドラマを掘り下げて、という向きもあるようだが個人的には映画としてベストバランスに感じた。
台詞の少なさを補って余りある、歌舞伎の華やかさが作品を彩る。鮮やかな衣装、舞台装置と仕掛け、そして演者の芝居と踊り。一挙手一投足から目が離せない。李監督のカメラを通して表現される歌舞伎の場は、なんて饒舌なんだろう。
誰しもが経験する人生の浮き沈み、光と影、それからは逃れられない。その波に翻弄されながら必死にもがくしかないんだ。本作では光のただ中にいてもすぐそこにある濃い影の存在感、が感じられて、あぁ人生とはかくあるものだなぁと納得したりやるせなかったり恐ろしかったり。吉田修一の描く淡々とみえつつも熱情に溢れる人間ドラマが十二分に表現されていると感じた。
シネマ歌舞伎ともまた別物。歌舞伎が作られる場面そのものを、息づかいを感じられるほどの近さと丁寧さで、高次元で伝えてもらったことにも大感謝。
名作の名場面てんこ盛りで、歌舞伎のプロモーション映画としても素晴らしい出来。
改めて思い出すと、てんこ盛りすぎて驚く。なんて豪華な作品なんだ。
まだ心が持っていかれてぽうっとしている。
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