「「役者」を演じる役者たちの凄まじさ」国宝 ルイコスタさんの映画レビュー(感想・評価)
「役者」を演じる役者たちの凄まじさ
歌舞伎役者の人生を描く本作。
何百年も受け継がれた芸を、自分の命をなげうってでも舞台で表現する。その覚悟への熱量が、これでもかというほど画面から降り注いでくる。
これは間違いなく傑作と言っていいだろう。
これを実現し得たのは、歌舞伎役者に対する演者たちの尊敬の念だろう。
華やかな世界の一方で、みな何か一般的な幸せを諦めてでも、芸の道を追求する。そうせざるを得ない役者たちの生き様。
これを表現しようとする吉沢亮、横浜流星、渡辺謙、田中泯。彼らの演技…というより、演技に対する熱量は、凄まじいものがあった。
感動するとか、泣けるとか、そういうことを超越した人間としての熱量に圧倒される。
もうひとつ特筆すべきは、カメラだろう。
役者たちの凄まじい熱量を、同じほどの覚悟と技を持って撮り切ろうとするカメラマン。
舞台の上での役者たちの演技、ホテルの屋上での悲しき笑い。シーンとして役者たちの演技を撮ることのみならず、その人生をすらカメラに収めていたように思える。
カメラマンは、チュニジア出身のソフィアン・エル・ファニ。アデル、ブルーは熱い色の撮影も担当しているのだとか。どういう経緯で、日本の伝統芸能の映像作品を撮ることになったのか。
とにかく彼の撮影が、この作品を傑作たらしめたことは間違いない。
小手先ではない、作り手たちの熱い思いが伝わってくる、そんな素晴らしい作品です。
コメントする
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。