「青春を駆け抜ける」新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
青春を駆け抜ける
いやぁ、面白かった! 小林啓一監督、さすがです。潜入スパイが対象に感化され、やがてその対象によって真実に目覚め巨悪を討つという、ある種の王道的な展開で、またある意味予想通りに物語は進んでいくんだが、社会派の色合いを持ちながらも青春エンタメ娯楽映画としてはそういう風に話が進んでくれなくちゃ困るというか、胸がスカッとして溜飲が下がり快哉を叫ぶ物語でなくちゃ困るのだ。そして主人公たちの若き正義感あふれる姿がクライマックスの疾走に重ねられていく爽快感。またも自然光のみで撮られたと思しき淡い映像美に彩られた大団円の終わりゆく青春の美しさ。本編に通じるエンディング曲の疾走感。とてもいい映画でした。
主演の櫻坂46の藤吉夏鈴という子は映画初出演にして初主演とのことで、やや拙い演技ながらもその拙さが主人公の朴訥さと素直さと無邪気さに上手くハマっていた。そして脇を固める新聞部長役の髙石あかり、文芸部長役の久間田琳加、新聞部副部長役の中井友望、元文芸部員役の綱啓永など若い芸達者俳優たちも皆好演。巨悪の理事長役の高嶋政宏もギャグにならないぎりぎりのラインで怪演してた。そのあたりのバランス感覚も小林監督は相変わらず上手い。出演者曰く、わずかな目の動きや前髪のミリ単位にまでこだわるという画作りの絶妙さ加減も健在だ。ちなみに小林監督の前2作『殺さない彼と死なない彼女』『恋は光』と違って恋愛要素はほとんどないんだが、それでもちょっとだけそこはかとなく百合っぽい感じもあったりなんかして。
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