「面白さはあったのですが、リアリティラインをもう1段上げた方がもっと面白くなったのでは?‥」新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
面白さはあったのですが、リアリティラインをもう1段上げた方がもっと面白くなったのでは?‥
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
この映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』は、文学オタクの主人公・所結衣(藤吉夏鈴さん)が、櫻葉学園高校の文芸部の入部試験中に、新聞部のドローンに巻き込まれ文芸部の入部が叶わず、文芸部の入部を条件に学内の文才ある謎の作家、緑町このはの存在を明らかにする為に、新聞部に潜入調査するという物語です。
その過程で、文芸部が度々入選していた文芸コンクールに関して櫻葉学園高校の不正に行きつき、その不正を暴くというストーリーになっています。
物語は二転三転し、ジャーナリズムの本質を垣間見る、面白さある脚本と内容になっていたとは思われました。
ただ残念ながら映画としては、特に櫻葉学園高校の理事長の沼原栄作(髙嶋政宏さん)の人物造形や不正の内容が、余りにもステレオタイプでリアリティがなく、主人公たちが対峙する相手の根幹部分にリアリティがなければ、作品としても駄目になってしまうのは必然だと思われました。
もしかしたらかつてのアイドル映画であれば許されたのかもしれませんが、それは今のアイドルやそのファンの人達に対しても失礼でしょう。
また当然、数多くの映画を観ている観客にとっても、このリアリティラインでも騙せると思った制作陣の人達は大いに反省が必要だと、僭越思われました。
特に傑作『恋は光』を監督した今作の小林啓一 監督は、こんな浅いリアリティラインでは駄目だ!と企画者や脚本家に押し返した上で、脚本内容の練り直しからやる必要があったと思われました。
この内容で『恋は光』を絶賛した観客たちを落胆させないと思っていたとしたら、1観客として残念無念としか言いようがありません。
とはいえ、主人公・所結衣を演じた藤吉夏鈴さんには冒頭は間の微妙さで拙さも感じながら次第に魅力ある演技をしていたと感じ、杉原かさねを演じた髙石あかりさんは今さら言うまでもない出色の演技で、二転三転する展開は面白さもあり、今回の点数となりました。
是非ともスタッフの皆さんは、今作のリベンジを次作で、小林啓一 監督含めてそれぞれ成し遂げて欲しいと、僭越ながら思われました。