「青年の主張を見守るお姉さまの「がんばって!」が聞こえてしまう不思議な映画でしたね」新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
青年の主張を見守るお姉さまの「がんばって!」が聞こえてしまう不思議な映画でしたね
2024.8.15 MOVIX京都
2024年の日本映画(98分、G)
文学好き女子が訳あって新聞部に入ってしまう顛末を描く社会派コメディ映画
監督は小林啓一
脚本は大野大輔
物語の舞台は、日本の関東のどこか
目標にする作家・緑町このはがいる櫻葉学園に入学した所結衣(藤吉夏鈴)は、文芸部に入部するための試験を受けていた
だが、新聞部の取材のために飛んでいたドローンが室内に入ってきて、結衣はそれにぶつかって気を失ってしまった
試験は中断され、規定により再試験もできないまま、結衣は文学部の入部を諦めることになった
文学部は、2年連続で文学賞を受賞している西園寺茉莉(久間田琳加)が部長を務めていたが、昨年は緑町このはの作品の方が優秀だと思われていた
結衣はこのはが文芸部にいると思って入部を希望していたが、実は部には在籍していないと聞かされる
茉莉もこのはの行方を追っていて、このはが一度だけ新聞部のインタビューを受けていたことを知っていた
そこで茉莉は、結衣に新聞部にスパイをしてもらい、このはを見つけることができれば、文学部に特別に入部しても良いと交換条件を提示した
結衣はそれを承諾し、新聞部の居場所を探し始める
彼らの発行する新聞に募集のQRコードがあり、それを追っていくと、下町にある印刷工場に辿り着いた
そこには部長の杉原かさね(髙石あかり)と副部長の恩田春菜(中井友望)がいて、新聞部はたった2人で活動を行っていたのである
映画は、新聞部にてスパイ活動を繰り広げていく結衣が、かさねに感化されて、新聞の存在意義を知る様子が描かれていく
そして、教職員に蔓延る悪事を暴露し、それを追求する姿勢に感銘を受けていく
そんな折、学園の理事長・沼原栄作(高嶋政宏)は、非公認だった新聞部を公認し、予算をつけて、自身のコントロール下に置こうと動き出す
理事長の誘いを跳ね除けたこのはだったが、それによって圧力がかかり、新聞部は活動場所を失ってしまう
さらに、春菜が買収されて文芸部に入部し、かさねも理事長にパンチをお見舞いしたことによって、結衣だけが取り残されることになったのである
物語は、正義の報道とそれを取り込もうとする権力者の構造を描き、社会風刺をこめている作品になっている
報道の独立性と権力構造との癒着を描いていて、彼らの論理ならば、日本には報道というものがないように見えてくる
あと一歩踏み込んで、実は外国資本が流入しているとか、理事長が実はあっちの人みたいなことになればすごいなあと思ったが、さすがにアイドル映画にそこまでは求められない
主演は初演技のようで、初々しさが残っているのだが、キャラに合っている感じだったのでそこまで違和感はない
むしろ気になったのは、初演技なのに長尺の演説シーンがあって、その後ろに位置していた茉莉役の久間田琳加が「めっちゃ心配そうに眺めていた」ところだろうか
そこだけは素の彼女が出ている感じがして、違う意味で胸キュンな展開になっていたように思えた
いずれにせよ、アイドル映画としては合格点で、メッセージ性もあって良かったと思う
だが、ラストで青年の主張!になってしまうシナリオは微妙で、主演の辿々しさの方が上回って、内容が頭に入って来ない
映像コンテンツなので、もっと映像で見せる部分があった方が良くて、結衣が何を見てきてそう思ったのかをダイジェスト的に重ねても良かったように思えた
アイドル映画にそこまで求めるのは酷かもしれないが、主演の印象をもっと色付けるためにも、音だけではなく画を意識した方が良かったのではないだろうか