正体のレビュー・感想・評価
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オレ、資格の勉強始めたんだぜ
終盤の相性が何かと悪い藤木直人監督。だもんで世間の声とは別に少々抑えつつの鑑賞になってしまうのだが、ここにきて個人的シンクロ200%オーバー。上手く時間軸を使いながら、最終盤の展開でふわっとする妙なクセもなくどっしりとコチラの気持ちを抱えたままにエンドロールまで運んで頂けました。今年は(も)邦画がインディーズも含めて豊作でしたがごめんなさい。今年はコレで。でも横浜流星好きとしてはベストはこっそりとこれじゃないかも。ふふふ…
アシリパちゃんが出てる。
全編を通して緊迫感のあるとてもいい映画だった。死刑囚が逃げるだけの単純なサスペンスドラマだが、考えさせられる問題を含み、登場人物の心情に心を動かされるヒューマンドラマでもある。
いわゆる「冤罪」を扱ったものだが、逃亡を図ったのは、単に刑を免れたいためではない。真実が捻じ曲げられる理不尽さに憤っての信念の行動であるのが共感を呼ぶ。徐々に鏑木の人間性が明らかになっていくが、犯罪者であるはずがないほど「正しい」人間である。そこが彼を単なる脱走犯とは呼べない、この物語の核心である。
逃亡劇を描くことが主眼であるため、肝心の冤罪がありきたりの安直な構図であるのはやむを得ないか。松重豊演じる刑事部長(?)のいい加減さは、警察から苦情が来るレベルである。年末で忙しいから早く片付けろだの、若年の犯罪抑止にちょうどいいから見せしめに極刑にしろなど、現代の警察ではありえない言動だと信じたい。少し調べれば、鏑木が凶悪な殺人犯ではあり得ないことはすぐ分かるはずである。警察の方針に振り回される又貫刑事の葛藤もよく描かれていたと思う。彼は陰の主役であると言っていいと思う。
さて、横浜流星演じる鏑木の逃亡劇の何と面白い事か。変装しキャラクターを変えて次々と居場所を変えて逃亡を続ける。追い詰められてやむを得ず逃げたように見えるが、どの場所も彼にとっては目的を果たすための重要なステップになっている。どこでも自分の居場所を作って、必要な情報を得るために全身全霊を注いでいることが痛いほど伝わる。そんな横浜流星の体当たりの演技に見入ってしまう。
鏑木の逃亡劇を支える人々にも胸が熱くなってしまう。彼と直接に接する人は、彼の正しさや真摯さといった人間性を理解して応援するのだろう。特に父親の痴漢冤罪事件に心を痛める安藤沙耶香の鏑木を「信じる力」には感動させられる。
横浜流星と吉岡里帆は映画賞に値する演技であり、味わい深い。アシリパの山田杏奈が出ていたのもちょっとうれしい。全く印象は違うけれどよかった。
「逃亡者」や実話逃亡事件をモチーフとしている
二重を一重にしたりと、有名なあの逃亡事件、市橋容疑者をテーマに扱っている作品であった。
主人公は逃亡先で姿を変えて、人々たちと営みを経るうちに人間として成長していく。
ハリウッド映画「逃亡者」も監督は参考にしているが、映像美にこだわっているシーンが見受けられる。
そのためインスタ映えが映画の中で重要なキーとなったり、美しい被写体として、横浜流星を登用したと察しがつく。
監督はストーリーだけでなく、インスタ映えもこの作品に織り込んでいる。
単なる逃亡映画ではなく、あらゆる映画作品や実話を埋め込み、インスタという風刺までも絡めてしまう。
中山美穂の「ラブレター」という映画を見た人ならば、作品を見ていて思い出しただろう。
ラブレターを介して、人々が紡ぎだすストーリー、そして、きれいな雪景色を。
さらに、映画マニアの人なら電子メールをテーマにした深津絵里「ハル」を連想したのではなかろうか?映画は時代を切り取る一部だから、その時代の映画を覗くことによって、数世代先の人間が他の時代を知ることができるのだ。
監督は日本大学の映画学科出身だけによく映画を研究されていると理解できた。
この作品が横浜流星の魅力を引き出しただけではなく、数々の名作を取り入れつつ、昇華されていく過程を知ると二度、三度見る価値があるであろう。
私が書いた作品を見てから、もう一度、見ると情景が重なるはずだ。
信じる心を捨ててはいけない
今年観た映画で1番よかった
ホラー映画ではなかった。
予告編2割り増し
劇場は若者と女性が多く横浜流星のファンだろうなーとその人気ぶりにち...
出演者の気迫が伝わる良作
テーマが冤罪という重いものなので、ストーリー自体は衝撃的な物では無く、オーソドックスなものに感じた。
ただ、冤罪を生んだのが警察等の組織の暴走とか、マスコミ・世間の暴走を問題点や原因として描くのではなく、主人公と人としての接点を持つ周囲の人々の視点で、主人公を人として扱っていく姿を描いていく、いい視点でのストーリーでよかったと思う。
出演した横浜流星さんも吉岡里帆さんも凄みのある役を演じるいい役者さんになってますね。あと山田孝之さんは圧巻の迫力でした。出演者の方々の迫真に迫った演技で世界観に引き込まれた時間でした。
ラストはあちこちですすり泣きが聞こえる、感動的なラストでした。
自分だったら
冤罪を晴らそうと疑われた人が奮闘するよくある話。
繊細な演技ができる出演者
見応えのある社会派サスペンスドラマでした
冤罪を主張して脱獄する主人公の逃走劇。物語のテンポも良く、各キャストの演技とキャラクター性がしっくりするので、中弛みすることなく終盤まで一気に鑑賞できる面白い作品でした。
反面、エンターテインメントに寄っている分、予定調和感があるためか「いやー面白かった!」の後に、本作を通して提起されているであろう「冤罪被害」の社会問題が、今ひとつ棘として心に残らず、若干の物足りなさも感じてしまった。
とはいえ、棘として刺さったら刺さったで、後味悪い作品になってしまいそうなので痛し痒しかな。
最終場面の、裁判官が判決を言い渡す「主文…」のシーンの、傍聴者の表情から伝わってくる演出は、良いね!
思っていたのと違った
この作品は観るつもりはなかったのだが、レビュー評価が高いので、平日仕事帰りに映画館に足を運んだ。
しかし、疲れのせいなのか、前半は集中できなかった。
万博工事現場の現場責任者(駿河太郎)と高齢労働者が、「地面師たち」の第1話の不動産詐欺のキャストだなー、これいつ撮影したのかなーと気が散ったり。
(地面師にハマりすぎで何かと結びつける病が未だに続いている)
アシリパ!じゃなくて山田杏奈はやっぱり雪景色が似合うなーとか。
西田尚美も宇野祥平も今年は沢山観るなーとか。
だんだんと集中できるようになってきて、主人公鏑木(横浜流星)の逃亡中の行動の背景にあるものに徐々に気づいてくると、なるほど、これは原作が素晴らしいんだろうなと感心してしまった(原作未読)。
話の展開だけではなく、脇役にベテラン、実力派俳優をずらりと並べている豪華布陣で「あ、この人も出てるんだ(酒向さんとか一瞬だったけど)」と次々とキャストを登場させて観客を飽きさせないあたりは、TBSらしい。
テレビ局製作のメディアミックス作品や原作の映画化作品は、フジテレビがいち早く取組んで成功したイメージ。ドラマはテレビ朝日が後を追っていた気がする。最近はTBSが元気がある感じ。「ラストマイル」に引き続きスマッシュヒットを出したなと思う。
主人公を演じた横浜流星の変化ぶりは素晴らしく、表面上は決して見せない強い信念を所々垣間見せる演技もよかった。
吉岡里帆は、前々から、会話の前後の「間」の取り方が特徴的で凄くよいと思っているのだが、今作でもやはり、間の取り方が上手かった。
山田孝之もまた、別の意味で信念を貫いた抑制の効いた演技が魅力的。
ただ、冤罪を扱った作品であることと、タイトルから私はかなり先入観を持って観てしまったため、かなり肩透かしを食らったのも事実。社会派の骨太作品なのかと思っていたので。ご都合主義的な展開と脚色に若干引いてしまった。
冷静に考えれば、テレビ局製作で、横浜流星が主役なら大衆向けエンタメ作品なのは当たり前なんだが。
先入観なく観れば、違う評価になったと思う。
あと、映画を観るコンディションは重要だと痛感した。疲れているときに観るのはよくないですね。
(2024年映画館鑑賞34作目)
藤井監督作品とはイマイチ合わない
サスペンス要素は少ないけれど
なぜ逃亡する?のサスペンスものかと思ったけれど、後半早々となぜ逃げるのか?がわかる展開なので、サスペンス要素はあまりない。むしろ、友情、正義感、強い思い、信じる気持ち、そういった心情を揺さぶる感動劇と観た。
主人公演じる容疑者は、見るからに善良な雰囲気。だからこそ、サスペンスになるわけなのですが。。刑事役の山田孝之は、殺人犯を追う修羅場の刑事にしてはすっきりしたイケメンすぎるような気もするし、その上司の松重豊は警察の重鎮を演じるには線が細いかな。。ま、でも山田孝之の黒いビシっと決めたスーツ姿は凛々しいので、観ていて不足ナシ。
主人公の横浜流星はいろんな人相を変化させはしているが、キャラは同じなので、それほどカメレオン的な感じもないけれど、まぶたを一重にしたのは実際のところあんな風にできるの?ってのが疑問。逃亡劇も、川に飛び込んで、幾重に追ってくる警察から逃れられるのか疑問。もう少しこの辺り、リアリティが欲しいところでした。が、全体的には、信じる気持ち、友情といった気持が揺さぶられる感動ものでした。
良く作られた名作、そしてこの世界に対するメッセージ
横浜流星は「アキラとあきら」で気になって、「線は、僕を描く」で、何かを抱えた影がある青年役が似合うなと思い、今回でしっかりとした俳優になったなと思った。(過大な評価を避けるのは、今回の役が元からの彼の雰囲気に合っていたと思うため、違った雰囲気の役柄をこなせるのかどうかが分からないためです)
とは言え、彼の演技に対するストイックで真摯な姿勢には好感を持つし、確かな実力が身についていっていると感じています
周りの登場者もみな演技が上手かった。吉岡里帆と山田孝之は影の主人公だ。吉岡里帆はだいぶ演技が上手くなった。ただ騒いでるだけに見えていた頃から、間を適切に取って、表情や立ち振る舞いや雰囲気で気持ちを感じられるようになった。2人にも2人のストーリーがきちんと描かれていて、それが主軸とうまく絡んでくる流れが作品を単一化させずに、構成の深みを出している
ストーリーはサスペンス要素もあり、犯人は誰なのか?Happy endingなのか、Sad endingなのか。この歳になると、大抵のパターンを観ているから、その中のどれかだと自然に想像してしまうのだけど、最後までどのパターンもあり得るように見えるのは上手く作っていると思った
横浜流星がなぜ逃げたのか?山田孝之のその質問に対する横浜流星の回答、そして、吉岡里帆が横浜流星に投げかける言葉に、この映画で伝えたい事がこめられている。そのメッセージには、青臭いけれど、ああ、そうだよな、そういう世界であってほしいよな、と同感した。最後のエンディングがヨルシカなのもこの映画に合っていると思った。俳優、構成、演出、脚本、音楽がしっかりとそれぞれの仕事をしていて、上手くつながっており、良くできた作品になっていると共に、社会への問題提起と希望を込めたメッセージが、観終わった後も、確かに心の奥底にずんと響いて、今も続いている。良い作品でした。
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