劇場公開日 2024年11月29日

「きっと何十年後かに「横浜流星が単なるイケメン枠から脱したのはあれだったよね」と評されることになる作品」正体 えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0きっと何十年後かに「横浜流星が単なるイケメン枠から脱したのはあれだったよね」と評されることになる作品

2025年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

日本中を震撼させた凶悪な殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木(横浜流星)が脱走した。潜伏し逃走を続ける鏑木と日本各地で出会った沙耶香(吉岡里帆)、和也(森本慎太郎)、舞(山田杏奈)そして彼を追う刑事・又貫(山田孝之)。又貫は沙耶香らを取り調べるが、それぞれ出会った鏑木はまったく別人のような姿だった。間一髪の逃走を繰り返す343日間。彼の正体とは?そして顔を変えながら日本を縦断する鏑木の【真の目的】とは。その真相が明らかになったとき、信じる想いに心震える、感動のサスペンス(公式サイトより)。

小説を映像化したため、気になってしまう粗はあるが(そんなに簡単に逃げられるだろうか、とか、殺人事件の捜査がそんなに杜撰だろうか、とか)、俳優陣の好演でチャラにしている。特に横浜流星は本作で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を獲得したが、きっと何十年後かに「横浜流星が単なるイケメン枠から脱したのはあれだったよね」と評されることになりそうなくらい、迫真の演技だった。

ひたすら警察から逃れているように見せながら、実はある目的のために動いていることがクライマックスに近づくにつれ分かっていく構成はさすがだし、脇を固める俳優陣の多くがアカデミー賞に名を連ねるくらい好演を見せた。特に山田杏奈は、東京で夢破れ、田舎に帰って来たモラトリアムで恋に恋する10代を見事に演じきっていた。かつて、岸部一徳が一手に引き受けていためちゃくちゃ嫌な官僚を演じた松重豊も良かった。

強いて言えば、鏑木の人間性を描くことがメインなのだろうが、逃亡という非日常性をもう少し緊迫感が漂う演出したほうがサスペンス感やエンターテインメント性が高まったように感じたのと、人間の存在は本名や肩書などではなく、他者から信じられることで確立する(≒正体)ということは、なんかもうちょっと他の表現や脚本があったように思う。

えすけん