「己の力で冤罪に立ち向かう男の執念の逃走劇」正体 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
己の力で冤罪に立ち向かう男の執念の逃走劇
冤罪をテーマにした作品である。エンタメ側に振ったフィクションとは分かっていても、どうしても袴田事件の再審無罪確定という数か月前の出来事が頭から離れなかった。捜査当局の証拠捏造という画期的な判決であり、事件が発生した旧清水(現静岡県静岡市)市民としては衝撃的だった。
凶悪殺人事件の犯人として死刑が確定した死刑囚・鏑木慶一(横浜流星)は、急病を装って救急搬送中に脱走する。彼は変装し職業を転々とする。そして担当刑事・又貫(山田孝之)の追跡を必死でかわしながら無実の証に迫っていく・・・。
作品としては素晴らしい。間違いなく日本アカデミー賞に絡んでくるだろう。横浜流星が従来のイケメン俳優というイメージを捨て去って五変化に挑戦している。どの人物も違和感なく成り切っている。逃走中に出会った人達との交流を通した様々な経験で人間として成長していく姿を自然体の演技で熟している。演技者としての可能性を感じさせる。
彼は適当に職業を選んでいるわけではなく、目的があることが徐々に明らかになってくる。物語は熱を帯び徐々に核心に迫っていく。面白さを増していく。シリアス作品として観れば、ご都合主義的、予定調和的な展開もある。しかし、登場人物を演じる俳優陣に個性、存在感がある。華(吉岡里帆、山田杏奈など)もある。鏑木との絡みも巧く構成されているので、エンタメ作品として観れば上々の出来栄えである。
終盤。物語は核心である冤罪に突入する。冤罪の証、捜査当局の対応、再審要求活動、再審開始までの時間など、袴田事件の時と比べると突っ込み処は多々ある。しかし、観終わって己を信じて行動すれば道は必ず開かれるというメッセージが伝わってくる。胸を打つ。
映画は時代を映す鏡である以上、作品にとって公開時期も作品評価の一つになる。冤罪をテーマにしたエンタメ寄りの作品を公開するならば、現実社会で結実した袴田事件再審無罪確定という時期との時間差を十分に考慮すべきだろう。
みかづきさん、コメントありがとうございます。
紀州のドン・ファン事件は無罪になりましたね。有罪の雰囲気だったけど、疑わしきは罰せず、確かな証拠がなかったようですが、冤罪にならずに良かった。真相は???どうなんろう。
横浜流星と山田孝之が、改めて上手いなあ、と感じた作品でした。
コメントありがとうございます。
やはり支援者の存在ですかねぇ、主人公は孤児だった様でこの辺からもうハンデだったんですかね。
予告編で走り方変!と思ってたら躰を強打してたんですね、ダムでなくて川でも逃げられました。
共感ありがとうございます。
単純に面白かったと言えば不謹慎かもしれません。反面、法廷で拍手が起こり、警察は黙ってればいいと言わんばかり、逃げれば良かったと思わせかねない所にモヤモヤしたのも事実です。
みかずきさま
コメント連投、長文失礼します。
レビューを最初に読んだ時、この作品の興行時期の大切さは賛否どちらのご意見か分からず、コメントで理解できました。
実際の冤罪事件の報道の記憶が新鮮なうちに公開して、宣伝プロモーションに最大限利用したかったことは想像できます。
完成披露前に映画賞にノミネートさせて公開直前に受賞させることになっても、話題と露出を優先したことも同様です。
社会派ドラマであれエンタメであれ商業映画には変わりませんから、評価だけでなく興行収入も重要なことは理解できます。
ただ藤井監督は、宣伝や興行を含めて本当にこんな映画作りをしたかったのか、矛盾を感じて疑問でなりません。
いつも素直に映画を観ている私ですが、この作品にはスポンサーへのアレルギー反応が強くて、★が付けられませんでした。
みかずきさま
フォロー・共感・コメント、ありがとうございました。
たくさんのレビューを投稿されているので、気になる作品から読ませていただいています。
「映画鑑賞は良いところ探し」という『侍タイムスリッパー』の(他の方の)レビューへのコメントが、私に心に残っています。
こんにちは。
コメントありがとうございます。
私も社会派サスペンスを想像していたし、それを期待していたので、正直肩透かしをくらった印象でした。
ご指摘の通り、リアルタイムの現実の出来事(事件)のインパクトに勝るはずもない。
大人の事情もあるのでしょうが、公開時期がマイナスになってしまいましたね。
原作とは違った希望あるラストに改変された所は藤井監督のメッセージなのでしょう。
それは良かったのではと思います。
流星君、山田さんは賞レースには間違いなく絡んでくるでしょうね。