「演者は良い」正体 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
演者は良い
ドラマも原作も見ていないけど、まあ予告編からも「逃亡者」なんだろうな、と思っていたら、もうまさに「逃亡者」。
別に「逃亡者」が悪いワケじゃない。
じゃあ、軸は「逃亡者」だとして、物語がサスペンスやミステリーとして我々観客を驚かせたりハラハラさせたり、納得させてくれるかというと、全然そんなことはない。
有名俳優がたくさん出演していて、当然演技も素晴らしく、それを見て心が動かされる瞬間はあったけど、ホントにお話がつまらないし、ウソ臭い。
(この後ネタバレありますのでご注意)
高校生(横浜流星)に極刑?
私も素人なので詳しく知らないけど、「家族を見知らぬ高校生が惨殺」なんて大事件なんだから注目度も高くて、捜査員だって上司だってたくさん揃えて、会議して進めるワケでしょ?
なんか、一人の偉いさん(松重豊)の一存で、一人の捜査責任者が進めたみたいに描かれてるけど、警察はワンマン企業じゃないし、そもそも検察はナニしてんの?
あと、死刑囚が逃げたら、それは捜査担当者に責任があるの?刑務所の管理責任では?
で、真犯人らしき容疑者が現れて、冤罪の可能性が出てきて、警察(山田孝之)も、カギはあのお母さん(原日出子)の「証言だ!」って。
主人公は主人公で、お母さん探しだして「証言して」とすがり付く。
あまりにも展開に広がりがないというか、「そりゃそーだろ」というか、「その程度の捜査で死刑にしたのかよ」というか。
あと、主人公がピンチで刃物を振りかざすのも、それは結果的に彼が「全然賢くない」をアピールしてる感じがする。だって、無実を明らかにするために重い犯罪犯したら意味ないじゃん。
テーマは「人を信じること」って感じなんだけど、それもまあ、(こういうこと言いたかないが)こんな美形男子に対して「信じましょう」っていう筋立ては簡単。今回は女性記者(吉岡里帆)と女性ヘルパー(山田杏奈)が「信じます」側だけど、そこには恋愛感情みたいなものも見えかくれするワケだし。
主人公が小太りの髪の薄い中年男性ではこの話は成立しないとなると、男前だから信じられやすいってことで、結局「内面だけじゃなくね?」ってならないだろうか。
一方で冤罪の恐ろしさを伝えたいのであれば、冤罪が作られる構造をこんなに雑な単純化をされたら、まったく説得力がないし、むしろメッセージとしては逆効果な気さえする。
とにかくストーリーが、観ている我々の想像を全然超えてこないという肩透かしが最後まで続いたのはやはり評価できない。
繰り返すけど、横浜流星をはじめ、役者たちはすごく頑張ってる。山田杏奈とか森本慎太郎はグッと来たし、駿河太郎のクズっぷりも良い。
シーンで言えば、マンションから飛び降りる辺りからのワンカット風のシーンも良かった。
横浜流星って、丸めた背中でも「中に筋肉が詰まってる」のが分かるタイプの体型だから変装もリアルじゃなくなるね。「ベンゾウ」なんてもうコスプレにしか見えないし。
役者が普通だったら★も3つあげられたか疑問。