「【今作は、人権侵害極まりない、これがトランプが大統領になってからのアメリカ入国審査の実態・・、かと思いきや、もっとシニカルな物語であり、イヤーな感じがラスト後も漂う作品なのである。】」入国審査 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は、人権侵害極まりない、これがトランプが大統領になってからのアメリカ入国審査の実態・・、かと思いきや、もっとシニカルな物語であり、イヤーな感じがラスト後も漂う作品なのである。】
ー 冒頭、カップルのディエゴとエレナが、浮き浮きでタクシーに乗る所から物語は始まる。タクシーのラジオからは”メキシコ国境の警備””トランプの壁”というワードが聴こえてくるが、二人の耳には入らない。
そして、二人はマイアミに向かうのだが、トランジットでニューヨーク、ジョン・F・ケネディ空港に降り立ち、緊張した顔で入国検査の列に並ぶ。
二人はパスポートチェックを終わるが、何故か一方的に二次審査室へ連れていかれる。
そこでは、意地悪そうな黒人系女性審査官が待ち受けており、次々に二人に高圧的に質問をして行くのである。
意地悪そうな黒人系女性審査官はその後、ディエゴとエレナを別々にして、個別審査していくのである。
工事の音が異様に耳障りな中、彼女は二人に、週に行うセックスの回数や、ベッドで寝る時に相手のどちら側で寝るのかなど、入国審査とは関係ない人権侵害極まりない質問を次々に浴びせ、ディエゴとエレナを苛立たせ、不安にさせて行くのである。
そして、少しでも反抗的な態度を取ると”私の一存で、貴方達の取り扱いは決まるのよ。”という悪魔の囁きを口にするのである。
そこで、明らかになって行くディエゴが政情不安な故郷ベネズエラを離れて、スペインのバルセロナに居た理由や、抽選で米国の永住権を獲得した事。
ディエゴには、エレナの前に婚約までした女性が居ながら、エレナには隠していた事。
エレナの職業はダンス教室の先生で、ディエゴには定職がない事。
などディエゴとエレナの関係性が、徐々に明らかになって行くのである。
<今作が秀逸なのは、見る側には最初は
”どうせ、移民を極力少なくしたいトランプの政策を揶揄した作品だろう。”
と序盤で思わせつつ、”入国審査”の段階で権力の横暴と共に、ディエゴが何故に婚約した女との婚約を解消しエレナと共にアメリカに来た理由が徐々に明らかになって行く過程が面白怖いのである。
正にディエゴという男の表と裏が”入国審査”の中で透けて見えて来るという、イヤミスのような作品構成の妙。
そして、長い”入国審査”の後に、二人のパスポートには入国許可の押印がされ、
”ようこそ、アメリカへ!”という言葉が複雑な顔をしたディエゴとエレナに掛けられ、画面は暗転するのだが、二人が新天地アメリカで二人で新生活を送り始めるかどうかは、観る側の想像に委ねられるのである。
今作は、人権侵害極まりないこれがトランプが大統領になってからの、アメリカ入国審査の実態・・、かと思いきや、もっとシニカルで。イヤーな感じがラスト後も漂う映画なのである。>
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。