若武者のレビュー・感想・評価
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やっぱりゾワゾワが残るわぁ~
『枝葉のこと』『お嬢ちゃん』『逃げきれた夢』と、心の中に名状し難いゾワゾワ感と言い難いヒリヒリを残して立ち去る二ノ宮隆太郎監督の新作が登場です。何だか鬱々とした日々を送りながらもそれを打ち破れる訳でなく、その力を尽くそうとする訳でもない3人の若者のグズグズの会話劇です。
「みんな口先ばっかり」となじる男の下衆っぷりに苛立ち、「そう言うお前こそが口先ばっかりじゃないか」と思わず突っ込みを入れたくなります。でも、こいつの「クズ男にも三分の理」を覆そうとスクリーンに相対しながら考えてしまったと言う事は、物語世界の中に結局引きずり込まれていたという事なのでしょう。
そして、二ノ宮監督らしく明確な結論を示さずに、ラストシーンを観る者に委ねます。う~ん、と僕は腕組み。
右上或いは左上を大きく開けた構図の長回しがザワザワと心の中に長く残ります。
眼で感じ、心で咀嚼し、脳でその心を顧みるような∙∙∙
生と死
明と暗
正義と悪
触発と影響
思想や言葉は
ブーメランのように自分に戻って来て自分を傷つける
俯瞰で見ているようで
自分が見られている錯覚に陥るようなカメラワークは
自分自身の思考回路や行動原理に訴えかけてくるようで
どこか居心地の悪さや迷いが炙り出されるようだった
誰しもがもっている心や精神の”黒いしこり”みたいなものが
グチュグチュした膿を持ち
皮膚が今にも裂けて破裂するような
自戒による自己治癒のような感覚を観た。
渉(坂東龍汰 )、英治(髙橋里恩 )、光則(清水尚弥 )
3人それぞれの顕示欲や利己性のコントラストも
「多様性」を讃える今という時代を反映している気がした
散りばめられたヒリヒリする言葉は刃の如く。
果たして自分なら首を差し出すだろうか∙∙∙
好き嫌い分かれます
英治のセリフ回しと、声がめちゃくちゃいいなーと感心して観た。あんな風に愛想の良い店員さんに出会うと気分よくなるが、人間だから二面性あるよねと、これから気をつけようと思ったり。
光則の垣間見える狂気に引いたりしたが、カキフライのくだりで、これも二面性やなと。
最初の笑顔は一瞬で渉はずっと沈んだままなん?といつか爆発しそうで不安になる。
マスターに言われた気持ち悪いは、ちょっと違う様な気がしたがピッタリした言葉が思いつかなくて、それでもいいかと思う。
坂東さんは物憂げな役が上手い役者でいくのかと思ったが、366日ではムードメーカー的な役も自然でホッとした笑
豊原功補さんが怖すぎてビビった。
絶対に遭遇したくない現代の世直し隊
英治役の髙橋里恩と言う俳優は初めて見ましたが
憎たらしい役を好演で好印象でした。
何か面白い事無いかな?暇でしょうがない、世界を変えたい、世直したい。どの時代の若者でも一度は経験する感情。英治は平和な日常が物足りず鬱憤晴らしに歩き煙草を注意する、後ろに仲間がいるから喧嘩したら勝てると言う状態で相手を完膚なきまでにバカにする。ナンパ目的にゲイを装って男同士のキスをして、それを笑った女性に詰め寄り謝罪させて泣かせてとこちらも完膚なきまでに・・・。
しかも中途半端に体も大きいから厄介。
以前はこう言う奴はぶん殴られ終わりでしたが、今のご時世は手を出したら負けですし、ネット社会で情報が多い分、頭使って攻撃してくるので本当に憎たらしいし、実際に会って絡まれたらと想像するとぞっとします。友達にも似た絡みもして、いつその友達がキレるかなと見てたら案の定、英治を後ろから瓶で殴りつけます(笑)
病院送りにされた英治は仕返しに刀で斬りつけると言うのですが、何処で手に入れたのかラスト本当に日本刀が振りかざされるシーンで終了と面白かったです。タイトルの若武者もエネルギーがあり余った若者のイメージと刀も出ますし、しっくり来て良いタイトルだなと思いました。
ネットやSNSでも英治の様な正義のヒーロー気取りで他人の不正やお店の闇を暴いたり、警察官に無駄に絡んだりと鬱憤晴らしの世直し隊みたいのが多いし厄介な時代が来たなと思えました。
大人気
二ノ宮監督作品は初鑑賞です。どこかオシャレな予告編や、配給の狙うターゲット層に当てはまればいいなという期待も込めて鑑賞。
腹の底から笑いながらも、人が持つダークな部分を根掘り葉掘りしていく様子には共感せざるを得ない、若武者に近い年頃だからこそこの映画にしっかりのめり込める映画でした。
気怠げ、お調子者、一見普通な凸凹3人組の小さく捻くれた世直しが今作の肝になってくるんですが、ロン毛の英司がこれでもかってくらい喋りますし、面白いくらいの屁理屈を言いますし、他人に絡みまくりますしで最初こそ不快だなぁと思って見ていたんですが、段々とクセになってきて、困ったことに共感するところも多かったので、彼の一挙手一投足に注目しっぱなしでした。
河川敷での英司1人での独壇場大騒ぎはヤバさを際立たせていましたが、歩きタバコを注意するところは真っ当というか、いけない事としっかり分かっていて詰め寄るのは相当な勇気だなと思いましたが、それにしても煽る煽る、煽り散らかしてタバコさんもちょっと怯んで口だけ人間にしちゃう。
英司の態度自体はDQNそのもので、実際にあんな人がいたらそそくさと逃げちゃいたいもんですが、同性でのキス(演技とはいえ舌を入れる生々しい演技)を嘲笑した女性2人組にこれでもかと詰め寄ったりと正義と気狂いの境目を反復横跳びしまくっていて観ている側の情緒もなんだかおかしくなりそうでした笑
喫茶店のシーンだけはシンプル迷惑客&お客様は神様精神を自分で持ってるという面倒くささにマスターげんこつ食らわしてもいいよと心の中で唱えていました。
3人とも仕事はしっかりしているというのが今作のギャップの一つにもなっていて、渉は黙々と倉庫内作業、英司はハキハキと接客する居酒屋の店員、光則は介護士と全員しっかり社会に溶け込んでいるからこそ、仕事内外で溜めたストレスを声に出して叫んでいるんだろうなーと思ったらちょっとだけ羨ましいと思ってしまう自分がいました。
英司がカウンターでおじさんを倒した時の快感、自分は誰かを殴った事は全くないので、もしイライラの最高到達点に達したらこの快感も分かるのかな…なんて思いましたが、そんな快感を味合わずに人生全うできたらいいなってところに落ち着きました。
殺すなら殺してみろよを衝動的に渉がアクションに起こして、瓶で思いっきり殴って立ち去っていく様子は劇場全体の時がピタッと止まったかのような感覚に陥りました。
それまでは口だけだったし、ほぼ言葉にしないしで寡黙だった渉のこの映画の中での最初の大きな動きが攻撃だったというのも含めての衝撃でした。
そこから渉の行動力は凄まじくて、リミッターが外れたように父親の元へ押しかけて殺そうとして…でもふとして落ち着いて…緩急が激しい終盤には体ごと持っていかれました。
最後の観客を見つめる視線に構えられた日本刀、余韻を残す終わり方に賛否割れそうですが、感情が揺さぶられまくった今作の締めとしては落ち着いたもので個人的には良かったです。
誰かに刺さればいい、そんな意欲作を作る会社が出てきた事は映画ファンとしては嬉しい限りです。
今後とも長いお付き合いをしていきたいです。
鑑賞日 6/5
鑑賞時間 16:05〜17:55
座席 E-12
たぶん…
大好きな二ノ宮監督作品だった。
何かしら有名な小説(中ニ病患者が見るような)を観て、中ニ病のまんま大きくなった、若いうちにインドとか、ミャンマーとかいってこいよと言いたくなる若者3人の話し。いやあ嫌なキャラがたくさん出て来るなあと思ってくれたら、大物俳優が出て来たりと、不可思議なダンスシーンなどもあり、そこそこ楽しく観れたが、少し幼い気がするなあ。U-NEXTの絶賛コメント見てたら、なんか寂しくなって来たりして
時効警察
他人や社会に対して否定的になるパターンのカタログみたいで、いくつかは身に覚えがあったりする。
自我が脆弱過ぎるあまり他者に対して過剰に攻撃的になり、様々な情報の都合のいいところだけ繋ぎ合わせてその攻撃性を正当化する。あるいは出来るだけ少ない言葉で相手を排除しようとする。こういう若者の生態は、老喫茶店マスターにとって確かに「気持ち悪い」だろう。
なんとも重たい映画ではあるが、善意だの正義だのを介在させない割り切りが爽快ですらある。
この世は偏見だらけで気持ち悪い
露悪的である。人物も物語もショットも、全てが不安定で居心地が悪い。それでいて映画全体にどこか高潔さや覚悟を感じさせるのはおそらく、二ノ宮隆太郎の根底にある人間や世の中への眼差しの公平性、そして自身の持つ偏見や悪意についての批評性によるところが大きいだろう。ポリティカルコレクトネスやToxic masculinityについて扱う作品の中では、明らかにラディカルでオリジナリティに溢れているが、それ故に時代に逆行していると取られる危険性も孕んでいる。
その不穏さがリアル
居酒屋店員・英治( 高橋里恩さん )が、怒りに任せ延々と吐く言葉は、こちらの寛容さを試されているよう。
介護士・光則( 清水尚弥さん )が理路整然と紡ぐ言葉に、デリカシーは無い。
父親( 豊原功補さん )との折り合いが悪い渉( 坂東龍汰さん )が、父親と対峙する緊迫したシーンで、息を潜めてスクリーンを見つめていた。
映画「 福田村事件 」でもそうだったが、豊原功補さんの迫力ある演技に圧倒された。渉が『 僕は … 僕は … 』と声を絞り出すよう語る姿に胸が苦しくなった。
登場人物が皆、それぞれに強い怒りを孕んでおり、そんな彼らの姿が、昨今ニュースとなっている痛ましい事件と重なり、やるせない気持ちで劇場を後にした。
劇場での鑑賞
落武者
世の中に鬱憤を溜める3人組の幼馴染の若者の話。
町でみかけた人に当たり散らすかのように因縁をつける居酒屋店員のロン毛と、介護施設で働き大人しそうだけどたまに唾を吐くようなことを言う坊や、そして親父の存在を疎む口数の少ないイケメン君という3人組。
もう働いている歳なのにこじらせてますね。
公園で見た目と金のことしか言わないおばちゃんとのやり取りに始まって、ロン毛が合流するかれど、幼馴染とはいえ渉は何でこんなヤツと一緒に?
モンクたらたらいちゃもんつけて論破した気になっていたり、死んだ人間のことゴチャゴチャ言ったり、口だけなのはお前もだろな会話をテンポ悪くみせられて、この作品の落とし方って、ボコられるか捕まるか仲間割れかぐらいしかないんじゃね?なんて思っていたら、ホールインワンからのやっとの動き。
そしてまあこんなものだよね、な流れ。
イジメの原因が黒子だと思っている負け惜しみ遠吠えマウント兄さんとかも出てくるし、底辺で器の小さい人ばかりを集めて、見る人にマウントでも取らせる気ですかね…もっと残酷で良いのに物足りなかった。
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