「第二次大戦下のポーランド系ユダヤ人側から見た、世界と愛」フィリップ ひなたんくさんの映画レビュー(感想・評価)
第二次大戦下のポーランド系ユダヤ人側から見た、世界と愛
ここ最近、オッペンハイマー、関心領域、アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家、
ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命、と戦争関連の映画を様々な視点、立場から観て来たが、
ユダヤ人側からの視点の映画は、こちらだけということで絶対に見たいと思っていた一作。
受け取った感情は、喪失と回復とまた喪失。そして自らが選び取ることが出来た
未来は……。
私の中では苦しくて、生きるということをここまであきらめずに居られたのは、
なぜなのだろうと思えるほどに、凄まじかった。
ラストの畳みかけるような展開は、彼自身の吹っ切った気持ちがよく表れており、
おそらく生きることよりも、感情を優先した部分もあったのだろうと思った。
生き抜くことは、運が良い事。と言い切れるのだろうか。
生き続けることは、こんなにも苦しさを伴う時代に、どうしてここまで生き抜くことを
決断できたのか。
私にはその問いが心の中に今も残っている。
オッペンハイマーではアメリカの科学者とアインシュタインの視点
関心領域ではナチスの高官たちとその家族の視点、
アンゼルムでは戦後に影響を受けた”ドイツ”にルーツを持ち、テーマにも関連するアーティストからの視点、
そしてONE LIFEではイギリスの一市民からの視点と
当事者の視点はほぼ見ずに来た。
むしろ当事者からの視点は描こうと思っても、生存者自体が語れる環境に精神状況にあるかどうかも
あるのだろうと思う。
そんな中で、ひとり。フランス人としてフランクフルトで働きながらも、
精神的な抵抗と復讐をしていたフィリップが、苦しみ、向き合い、友情を得て、失い、
そして愛とどのように出会って、結末を迎えるのか。
これは一人の物語でありながら、ひとりだけの感情ではなかったであろう様々なものを
垣間見ることが出来る、レオポルド・ティルマンドの自伝的小説を映像化した作品だった。
原作も読んでみたい。