「傷」ぼくのお日さま ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
傷
メインキャラ3人それぞれが傷を追うけれど、それでも前を向いて生きていく。
監督はそういうことが伝えたかったのかなと思いました。
吃音のタクヤが主人公ですが、
家庭では同じ吃音の父親だけが味方。お兄ちゃんは当たりが強い。
学校でも、アイスホッケーでも、バカにしたような扱いを受けてすでに傷を負っているんですね。
で、池松壮亮演じる荒川の目につき、アイスダンスを教わることに。
アイスダンスの予選会でパートナーのさくらにすっぽかされ、さらに傷を負うわけです。
(タクヤはさくらが好きなのがわかった荒川が手を差し伸べているんですよね)
さくらは荒川が好きだけれども、荒川とそのパートナーである五十嵐が車の中で
仲良くしているのを見て、猛烈な嫌悪感を覚えるわけです。
そしてタクヤのことも好きなんだろうと荒川にぶつけ、しまいには「気持ちわるい」と言ってしまう。
そしてアイスダンスの予選会をすっぽかし、これらのことで傷を負ってしまうわけです。
若さゆえでしょうかね。
さらにこの物語の時代を考えても、LGBTQの理解は進んでいないものと予想できます。
荒川は、自分の性的嗜好によるものなのか、東京にいられず北海道にきて、またしても北海道から
出ていくことに。彼が平穏に暮らせる地はないのか?と思えるほどにせつないですね。
みんなが傷を負うなかでも、タクヤのさくらへの想いは最初から最後までブレない。
そういうエンディングかなと受け取りました。
最後にタクヤとさくらが出会うシーンで、ふたりともやわらかな表情をしているので、そう捉えましたね。
上述したような、登場人物の心の“傷”がとても印象的でしたし、
各ショットについても、日差しが印象的にうつしだされていて、終始映像にやわらかさ&あたたかみを感じました。
加えて、本作独特の“間”もこの映画の世界観をよりやわらかに、あたたかくしていたと思います。
それにしても、池松壮亮の演技の幅が広くて本当にすごいなと思います。
宮崎では本作よりも『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が先に公開されましたので、その時の池松壮亮と
本作とのギャップに驚きました(笑)
さらにもうすぐ池松壮亮主演作『本心』も公開を控えていますが、こちらも楽しみです。
共感をありがとうございます。
荒川とタクヤの視点からだとサクラは加害者的に見えるでしょうが、大人、しかもコーチとしての荒川に大きな問題があると私は思いました。
荒川はタクヤの思いを応援したいと思い、ほぼ職権でサクラをアイスダンスの相方にしていて、サクラには嘘の理由まで伝えて組ませる、タクヤのためだけに。サクラ個人の尊厳、大げさに言うと人権、は考慮の外。一緒にタクヤの成長を喜べ、って言われても。
LGBTQへの理解云々以前に、荒川はコーチという力を持った大人の立場で、一人の教え子のために本人の意志も確認せず他の一人を充てがうという、してはいけないことをしているわけです。充てがわれた方の人権を無視している。荒川は被害者というより、彼自身何重にもサクラを傷つけてそれに気づきもしない未熟な大人だと思いました。
長々と語ってしまい、すみません。。。