「これは凄い作品だ」ぼくのお日さま あいわたさんの映画レビュー(感想・評価)
これは凄い作品だ
いやぁこれは凄い作品でした。
北海道の田舎町が舞台の作品。時代背景としては平成初期というところでしょうか。
フィギュアスケートの上手な女子中学生さくらと、それに憧れる吃音の小学生タクヤ、そしてそれを見守る荒川の3人のストーリー。
美しい北海道の景色がとても印象的な映画でしたが、ストーリーは懐かしく、美しく、でもとても残酷でした。
多様性が今ほど無く、男の子らしい/女の子らしい習い事というのが、自然とあった時代でしたね。
年齢も志向も異なる3人の三角関係を美しく描いた作品でした。三角関係といっても決してありきたりな恋愛ではなく、神々しい存在への憧れ、歳上男性への漠然とした憧れ、自分が叶えられない青春時代を送る2人への憧れが描かれていて、北海道の冬の透き通った空気と相待って、本当に美しい作品。
終盤は本当に残酷でした。アイスダンス会場にさくらが来ることは無く、自分が受け入れられないことを悟った荒川は、恋人も仕事も失い、この町を後にしました。
本当はとても悔しくて悲しかっただろうに、それをタクヤには決してぶつけず、2人の幸せを祈っていたようでした。
あれから約30年、性的マイノリティの方にとって当時よりは住みやすい世の中になったでしょうか。一方で、SNS等に縛られ、子供にとってはもしかしたら窮屈な世の中になったかもしれません。
中学生になったタクヤ、道で会ったさくらに、何を話し掛けるでしょうか。観客の想像に任せるラストシーンが本当に印象深い作品でした。
青春というのは残酷で苦しく、でも本当に美しい思い出なのですね。
このような素晴らしい映画は本当に久し振りでした。映画館で観れて本当に幸せでした。