「少年よ。人生いろいろあるけれど大丈夫。お天道様はついて回るからね。」ぼくのお日さま あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
少年よ。人生いろいろあるけれど大丈夫。お天道様はついて回るからね。
おそらく小樽がモデルの港町。冬から春まで短い季節を切り取っている。思いつくまま3点ほど。
まず1つ目は登場人物。主要な人物はほぼ3人でフィギュアスケートのコーチの荒川と、彼に教わるさくらとタクヤ。
でもこの物語の主役はやはりタクヤであって、この映画は本質的にはタクヤ少年の一冬の経験を取り上げたものだといえるだろう。荒川とさくらは彼の忘れがたいエピソードを彩る脇役ということになるのだと思う。
2つ目は映像上の光の処理。常に太陽の光が満ちている。全編のうちかなりの尺を占めるスケートリンクは、常に、窓から入ってくる淡く、でも輝かしく、どこか懐かしい太陽光で満たされている。さくらのプログラム用の曲である「月の光」と連動もしているのだろう、でもこれはあくまで昼の光である。そして3人が、凍った湖で練習し、そのあと戯れるシーン。北海道の冬の太陽なのでそんなに強くはない。でも空は晴れて3人の姿を順光で、逆光で、明るく照らし出す。バック曲はTHE ZOMBIESの「Going out my head」。幸福感に満ちたシーンである。
3つ目は、全編で徹底される言葉の少なさ、静謐さ。荒川にとっては(彼を慕うタクヤにとっても)厳しい状況となってしまうのだが誰も声を荒だてず、静かに運命は進んでいく。
つまり、この映画は、タクヤが人生の早い段階で経験した成し遂げたこと、うまくいかなかったこと、受け入れなくてはならないこと、を優しい陽の光のもとで静かに静かに描いたものだと言えるだろう。
タクヤくん、最後になってもやっぱり言葉はうまくでてこなかったね。でもさくらにはもう一度会うことができたじゃないか。大丈夫。おひさまは常について回るんだから。
共感&コメントありがとうございます。
ハンバートハンバートとは歌詞の意味が全然違うんでしょうけどね。“ロックが僕を待ってる”という詞も繫がってるみたいで良いですね。