「少し物足りない」ザ・ウォッチャーズ エルさんの映画レビュー(感想・評価)
少し物足りない
森の中に迷い込んだ主人公が、箱のような家、通称鳥かごの中で
マジックミラー越しに謎の存在『ウォッチャーズ』に監視されながら生活を送る、
というサスペンスホラー作品。
つまらなくも退屈でもない。
①夜は外に出ずドアを開けない②森にある穴には近づかない③光を常に浴びる④鏡に背を向けない。
これらのルールを強いられる生活は話を引っ張る謎に満ちており、
また人間関係の悪化や周囲の森の探索などで緊張感を煽り常に飽きさせないよう工夫している。
ただ、少し物足りない。
ホラーサスペンスとして見た場合、
怪異は謎に満ちている方が怖いのが定番だがウォッチャーズは見た目すら出てこない為、
集団のリーダー格に守らされる決まり事がピンと来なくなっている節がある。
なので色々可能性を見ながら吟味するのだが…
例えばドアがけたたましく叩かれても、これは主人公をハメる壮大なドッキリなのでは?
などと意識してしまうとどうにも怪異の緊張感がボヤけてしまうのだ。
決まりを破ってウォッチャーズに捕まったらどうなるか分からないのも緊張感が出なかった一因だと思う。
死ぬことは示唆されるがそもそも怪異の目的が分からないが前提の作品なので、
本当に死ぬのかどうかさえ分からない。
怪異が実在するかさえ怪しいでは、決まりを守る・破ることに緊張感が見いだせない。
恋愛リアリティーショーを作中で見ているのはテレビ番組であることを示唆しているのか?
などという説が終盤まで捨てられなかった。
捕まったらテレビ局のスタジオで、司会者が現れ残念でしたーと笑うのかなーとか。
(これは自分の深読みしすぎが悪かったとも思う)
また張られた伏線を回収する手腕に唸る作品かというと、
未回収なのか、自分が見逃しただけか分からないが、
あの伏線らしきものなんだったんだろうが散見される。
(例えば上記の恋愛リアリティーショーがそれ。内容はどうでもよくて教授の名前出したかっただけだろうか?
実はあれが奥さんとの出会いの馴れ初めだったりする?)
主人公には『罪』があるのだが今回の一件と無関係に勝手に納得して解決?するのもいただけない。
(今回の一件を通して何か気づきを得て解決、というプロセスが欲しかった。
これもまた自分が見逃しただけかも知れないが…)
そして最後、森を脱出してハッピーエンド、後はエピローグ…
というところでまた話がひっくり返るのだが、この作品はここで
驚愕出来るか、前も似たようなの見たことある、と感じるかで評価が一変するだろう。
私は残念ながら後者だった。
怪異達は何者なのか? というでっかい謎が提示されるので
ついつい考えたくなるが、あまりゴチャゴチャ考えずに見た方がいい映画であり、
そこがこの作品最大のミスマッチなのではないだろうか。
カメラワークや話運びのおかげで一定の緊張感は出せているし、
仕込まれたどんでん返しもバレバレでつまらないほどではなく、
キャラ造形やそれに伴う各人の心理描写はむしろたくみな方だと思う。
主人公達への感情移入なども難しくないので最後まで楽しんで見られる。
ただ総じてあともう少し話全体が推敲できていれば化けたと思うもったいない作品だった。