「落語と映画との違い」35年目のラブレター てつさんの映画レビュー(感想・評価)
落語と映画との違い
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モデルになった人物のことを知ったのは、実話を題材とした笑福亭鉄瓶氏の落語会を地元の自主夜間中学の方々が発起、開催し、その会に参加したことであった。その内容では、学習障がい者と同様に、読み書きができなかったことを隠して生きてきたことの辛さが強く印象に残っていた。
本作では、主人公が妻と出会った時点での勤め先でもそれほどの不遇な感じは描かれず、結婚して半年後までは内緒にしていたことの事情が後で判明していくような構成になっていて、妻がひたすらフォローし、その姿勢を受け継いだ娘たちもそうした関わり方を続け、悪い人物像は出現しないようになっている。
夜間中学との出会いや教師の姿勢、主人公の立ち位置、卒業式の紅白幕に、映画『学校』『学校Ⅱ』のオマージュを感じた。
実話化作品のエンディングには、モデルの写真が並ぶことが多いのが通例だが、本作では全く出てこない。遠慮されたのだろうか。
パンフレットに収録された第1の「君へ」には、幼少期の過酷な家族環境が述べられ、そこは白黒映像で表現されて衝撃的である一方で、鉄瓶氏の落語で印象に残った勤め先での辛い経験の記述はあるけれども、その映像化は避けられたようであった。
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