劇場公開日 2024年6月14日

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「サイコ × 洗脳 という視点」蛇の道 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0サイコ × 洗脳 という視点

2024年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

復讐劇をセルフリメイク… ですか…
何とも言えない雰囲気の作品
謎めいていて妄想せざるを得ないものの、その種明かしは妄想とは大きくずれていた。
それはまあよかった点ではあった。
視聴者に容易く読まれてしまっては面白くない。
さて、
初めから不可解な物語だが、物語の途中からいくつかの着地点があるように思った。
まず考えたのがサヨコ自身がサイコパスであるということ。
アルベールを洗脳して、最後にすべての犯人が自分であるということを彼に見せつけ、彼を完全に破壊するパターン。
そして、
デボラはサヨコと同一人物で、彼女が守ってきた子供たちと守れなかった子供たちがいた。
それは人身売買グループだったが、そこには組織のようなものはなく、売買目的で拉致するグループがあるだけという設定で、そのフランス組織を潰すという目的のパターン。
その他いくつか考えながら見ていた。
そもそもアルベールはドクタードラントルの患者であり、精神疾患者だった。
彼女は患者を横取りしたことが伺える。
患者の吉村と同様に、サエコはアルベールを洗脳した。
彼は少なくとも自分が娘にしたことに対する良心の呵責があったことを発見したのだろう。
アルベールの娘は実際には生きていて、死んだことを植え付けたのかなとも想像した。
彼を仲間に引き込んで、売買グループに対する復讐する物語だと思っていた。
しかし、
実際は、サヨコの娘が犠牲者だった。
それはビデオの中で連続して語る声がサヨコのものだとわかることで読める。
ただそれでも一般的な解釈として理解できないことが多数あって、それが矛盾していることから、物語の全体像がブレてしまっているように感じる。
矛盾に対する解釈が追い付かない。
例えば、
何人もの男を拉致できたこと。
多勢に無勢 素人が次々に見張り役を射殺できてしまうこと。
臓器目的で拉致されたにも関わらず、ローラの周りに集まる子供たち。
中でも疑問だったのが、サヨコの「復讐」という概念と「やり遂げる」意志の徹底的なこと。
物語の動機の根幹でもあるこの部分
従来から変わらない「動機の型」
そこに仕掛けたトリックは、人間の執念の怖さを演出する。
この作品は更に、夫への復讐心も描かれている。
最後のシーンは、サヨコが東京へ戻ることを示唆している。
当然目的は復讐だ。
矛盾はまだある。
アルベールにしても、サヨコの夫にしても、子供を売るという概念を持っていることがどうしても理解できない。
これが事実ではないと考える方が自然だろう。
ローラにしても、新しいパートナーのジェイクが死んだと聞かされ膝を落として嘆くが、周りの子供たちの様子が意味不明で、今から臓器を取られるんじゃないの? と首をかしげたくなる。
あの現場で、モニターを設置していた人物が、サヨコ以外考えられなく、サヨコがしたのであれば、どう考えてもデボラはサヨコ自身なのではないかと思ってしまう。
表面上示唆される物語と、実際の現実には大きな乖離があるように思えてならない。
これこそが監督が仕掛けたトリックなのではないだろうか?
この物語の流れそのものが実際の物語である場合、
私だったら、このセルフリメイクで内容を大きく変更するだろう。
まず、サヨコは自身の不注意で誘拐されて殺された娘が臓器売買されたと思い込んでしまっている設定を作り、最後に自分の夫が売ったと思い込むが、実際にそう思わなければ生きていけなかったという感じにする。
ただこれではどこかで見たことのある内容になってしまう。
この矛盾こそ最大の謎であり読みとかねばならない箇所だと思う。
さて、、
モニターを仕掛けた張本人は間違いなくサヨコだ。
彼女は男どもを拉致しながら、新しい敵をでっちあげさせ、それをアルベールに信じ込ませていた。
しかしそれではどう足掻いても真実になどたどり着かない。
サヨコはいったい何がしたかったのだろう?
関係者はミナール財団 サークル仲間
そこに無理やり臓器売買と子供の拉致を結び付けている。
子供の臓器売買は中国でされているが、フランスでは考えにくいいし、そのニュースや新聞記事、そしてマリーの死因に臓器が抜かれていたなどとは書かれていない。
サヨコの夫の雰囲気から、娘を亡くしてしまった事実はあったのだろう。
その理由を、サヨコはまったく別物に置き換えることで、自分自身が忙しくて娘に何もしてあげられなかったことへの贖罪にしてしまったのではないだろうか?
責任転嫁による復讐 これこそ、サヨコがサイコとなった原因だろう。
実際には自分自身へと向けられなければならない責任を、彼女はすり替えたのだ。
それを、この物語を我々は、サイコのサヨコと、洗脳されたアルベールの視点で見せられているのではないか?
だから何もかもがおかしいのだ。
現場の見張りもただの見張りで、拳銃などは持っていなかったのかもしれない。
ただ、二人にはみんなが武装しているように見えているだけ。
誰もが入ってこられる場所
モニターを仕込んだのはサヨコで、彼女はアルベールを洗脳しながら先回りして事実を作り上げている。
彼に特定の事実の存在を思い込ませることで、サヨコは彼女自身にも自己暗示をかけていたのではないだろうか?
彼女はアルベールにスタンガンを使う。彼をアジトに幽閉しアパートへと戻る。
彼を生かす理由こそ、自信の暗示をとどめておくことなのではないか?
つまりこの物語は、二人の精神異常者によって表現されている「現実」ということになる。
ゲランが「蛇の眼」というセリフをいうが、それはサエコの執念を表現しつつ、その間違った考えこそが蛇の道へと誘うのだと、監督は言いたいのだろう。
私の妄想は飛躍しすぎかもしれないが、そう考えなければ何もかも成り立たなくなるように思う。
どなたかご意見お願いします。

R41
琥珀糖さんのコメント
2025年1月5日

コメントありがとうございます。
今自分の「秒速5メートル」のレビューを探して
(探さないと見つからないんです。そしてコメントも
届きません。教えていただけば、読める訳です。)
R41さんの運営への提言の内容が分からないので、
行間が狭くなった?
気がつかないけど、そうですか?
私は一行を34文字で、そこ以内で行を変えるようにしています。
だから一行が短いんです。
Rさんのように文字数はないと思います。
一行がこのサイトは35字か36字だとわかっましたから、
34字でターンしていたのです。
パソコンなら(私はiPad・・・)
最初から一行を何文字と設定出来るのかと思ってました。
システム変更等?考えすぎではないかしら?
「蛇の道」も「Cloudクラウド」も、黒沢清監督って
不思議な運とがツキとか持ってますね。
「Cloud、」は今年を代表する日本映画らしいです。
つい最近、誰かが今年の映画10本の中で唯一選ばれた日本映画でした。
欠点だらけですよね。
それに一年に3本も公開されて、人気が世界的にある。
私は「Cloud」も「蛇の道】も面白かったです。
確かに難病映画や若者の学園ラブストーリーリーよりは、楽しめます。
新海誠監督より、私は身近に感じます。
自分がロマンティックな人間ではないので、
「秒速5メートル」も清純で純粋だなあ、とは思うけれど、多くの人間は
成長して大人になるので、
いつまでも過去を引きずるのは、創作だから、夢物語だから?
ですね。そんな純粋な気持ちで生きていけないですよね。
「純愛」と「復讐」
新海誠と黒沢清。対極にあるけれど、有能な監督ですね。
議論が噛み合ってなくて、ごめんなさい。
それでは今年もよろしくお願いします。

琥珀糖