「哀川翔も「コメットさん」も出て来ない錯綜した復讐劇リメイク」蛇の道 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
哀川翔も「コメットさん」も出て来ない錯綜した復讐劇リメイク
黒沢作品は国際的な映画賞を獲ったり、評論家から褒められまくったりしてるが、如何せん小生はどうも感じるものがない。
普通の映画とは違う印象を与える部分とか、現実への視点の独自性とか、肯定的な言葉も無理すれば出て来ない訳ではないが、それより「現実感が希薄」とか「書割の世界で展開される下手くそな学芸会」とかのコトバの方がしっくりする。別に監督個人に恨みがあるわけではないのだが、単につまらないのだからしょうがないw
『地獄の警備員』しかり、『CURE』しかり、『蛇の道』(98)しかり、『蜘蛛の瞳』しかり、『ニンゲン合格』しかり、『カリスマ』しかり、『リアル~完全なる首長竜の日』しかり…である。しっかし、つまらないとケチをつけながら、何故、こんなにたくさん見てるのか、我ながら不思議に思わないでもないww
で、今回のリメイク版『蛇の道』である。
ストーリーはまあ、紹介するほどのこともない。単に「復讐する人間」の話というだけのことである。その復讐の仕方が怖いとか、惹きつけられるとか、鬱になる…というコメントもあったが、小生はまったくそんなことを感じなかった。
復讐するために誘拐するシーンはお笑い映画のようなドタバタだし、食事を汚れた床にぶちまけるのもウンザリだし、トイレさえ許さないのもバカげているし、弛緩した復讐劇だな~程度にしか感じない。
設定はオリジナル版が少女に対する性犯罪と拷問、そのビデオ販売が元凶だったが、リメイク版はそれが少女の臓器摘出とビデオ販売に変更されている。恐らくは政治的な配慮によるものだろうが、その犠牲となった少女の親たちの錯綜した復讐劇が絡み合うという点は同じ。
そして最後には、やたら拳銃でドンパチやりたがる日本映画にありがちなパターン。やれやれ、そんなにドンパチが面白いのか?
しかし、クサしてだけというのも何だから、98年版の魅力を上げておこう。
一つは哀川翔のパワフルなのに何故か透明感のある表情、いま一つは仕込み杖で容赦なく人をぶった切っていく「コメットさん」なるビッ〇のオバちゃんの奇怪な存在感。
ところが本作からは、その要素が二つとも消えてしまったのだった。