「タイトルなし(ネタバレ)」蛇の道 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
ジャーナリストのバシュレ(ダミアン・ボナール)は、8歳の娘を何者かによって殺されてしまう。
死体は損壊されており、森の中に遺棄されていた。
犯人を突き止め、自ら復讐しようとしていたバシュレ。
彼を手助けするのは日本人精神科医・新島小夜子(柴咲コウ)。
バシュレと小夜子は、バシュレの娘の死にある財団が関係していることを突き止め、その幹部(マチュー・アマルリック)を拉致・監禁し、真相を自白させることにする・・・
といったところからはじまる物語で、いわば終わりのない復讐を描いた物語。
拉致監禁した幹部は、自身は直接のところは知らない、真相は財団トップが知っていると告白し、バシュレと小夜子は財団トップも拉致・監禁し、自白させようとする・・・
なんだか恐ろしい、おぞましい話だが、おぞましいのはそこではなく、精神分析医としての小夜子のもとを訪れる日本人患者(西島秀俊)に対する助言がおぞましい。
彼はあまりに重なる心労がひどいのだが、「このまま日本に帰るのは嫌だ。そうすると何もかも終わってしまう」と告げる。
小夜子は「終わってしまうのなら、それはいいことです。このままの状態でいることのほうがよっぽど恐ろしい」といったようなことを助言する。
結果、患者は自殺してしまうのだ。
おぞましくも恐ろしい輪の中で、堂々巡りを続けるのが、もしかしたらよいのではないか・・・
それをあえて小夜子は選択している。
それはバシュレに対しても同じで、娘の復讐の妄念にとりつかれた彼を、そのおぞましさの中に留めておくことが、小夜子の治療(キュア)である・・・
と『CURE キュア』と同じようなテーマが浮かび上がって来る。
この中盤がものすごく恐ろしい。
が、映画後半、バシュレの娘の真実に辿り着いてしまう。
それはおぞましい現実であるが、現実的な虚構(映画的な事実)のような感じがする。
妄念から現実へとジャンプし、おぞましさが薄まってしまう。
また、小夜子がバシュレに同行していた理由も明らかになるが、それも「映画的な事実」の枠組みに収れんされてしまう。
ま、「衝撃的な結末」という手垢のついたものだ。
中盤のぞくぞくするようなおぞましさは影を潜めた後半。
ちょっと残念。
とはいえ、これはこれで面白いのですが。
別途、オリジナル作品も鑑賞してみたいと思います。