「失って初めて」知らないカノジョ　赤ヒゲさんの映画レビュー（感想・評価）

SF映画風のオープニングから現実と空想が入り交じる展開が面白いですね。さらに、パラレルワールドの中で立場が入れ替わり、自分事と他人事がいったりきたりしながら、本当に自分のやりたいことや愛する人に、すったもんだの末ようやく気付くというとってもじれったい展開が心に染みました(笑)。失って初めて思い知る…。誰もが経験することだからこそ、共感できたように思います。主演の二人、神林リク(中島健人)と前園ミナミ(milet)の相性もバツグンでしたが、それに勝るとも劣らぬ梶原恵介(桐谷健太)の存在が一本調子の恋愛映画にならない強力なエッセンスになっていたように感じました。感動させようというとってつけたようなエピソードだと醒めてしまうことがありますが、今作はコミカルな遊び心があちこちに感じられたり、「生きるに値しない世界」に対する恵介の想いがあとになって効いてきたり、とても味わい深い脚本でした。三木孝浩監督作品は、なぜか自分の中での振れ幅が大きいのですが、今作はとても好みの作品で心底楽しめました。