劇場公開日 2025年2月28日

「わこつ!ヒロインがニコ生主やってる、パラレルワールドから来たYO!」知らないカノジョ ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0わこつ!ヒロインがニコ生主やってる、パラレルワールドから来たYO!

2025年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

萌える

私が本来住んでる世界、こちらで言う所の「パラレルワールド(PW)」では、
今作のヒロイン、ミナミ役のmiletは、
「ラスカル」という名前で、ニコニコ生放送の放送主、通称ニコ生主をやってるんですよ。

こちらのPWでもラスカルはねぇ、色白でねぇ、美人でねぇ、
生主情報が、ゴシップ的に共有される「鳩ろだ」というサイトでは、
デビュー当時から超絶大人気でねぇ、そのサイトの「女生主図鑑」なんていう、
趣味の悪い画像まとめにも載ってましたよ。ええ。

音楽が好きな、「29。さん」っていう、雰囲気のいい優男の生主の放送に、
よくスカイプで凸したりしてましてねぇ、
あ、そちらの世界では、スカイプサービスが終了するんですってね。
最近ニュースで見ました。

歌ってみたの動画なんて挙げたりしてねぇ、
ビジュアルもいいし、声質もいいし、
本気で歌手目指せば、絶対売れるのにって、ずっと思ってましたよ。

視聴者の少ない過疎生主の10年選手である、今川ギララって古参生主なんかは、
ラスカルはニコ生で、ガチで1番かわいいんだって力説したりしてねぇ、
あいつは多分、裏ではストーカーだったんじゃないかな。
知らんけど。

結局、こちらのPWでは、ラスカルは歌手にはならなかったんですよ。ええ。
でも、うちらのPWから、そちらの世界に行く女性生主は、
元々カリスマ性「だけ」はあるもんだから、
多くは、セクシー女優になったり、キワモノ政治家になったりするんです。
ちなみに男性生主は、犯罪者ばっかですけども。

女性生主の中には、たまーに才能を開花させて、
Youtuberになったり、歌手になったりと、成功したりもするんですよ。
知ってますか、きゃりーぱみゅぱみゅって名前の子。
あの子も、うちらのPW出身なんです。

miletはねぇ、そちらの世界で歌手になり、ついには女優にもなったようですね。
本当に良かった。彼女は我々の誇りですYO!

あ、うちらのPWでは、語尾に「YO!」をつけたり、
乾杯の時は「KP」って言ったりするんですよ。
「ですよ。」さんの真似とは違います。
うちらの神様が、そう言いなさいって言葉を授けてくれたんです。
「ウナちゃんマン」っていう名前の、神様なんですがね、ええ。
--------
冗談はさておき。

三木孝浩監督の恋愛映画は、毎度、ヒロインが際立って魅惑的に撮られるし、映える。
相手役の男性主人公は、ヒロインの引き立て役に過ぎない、と個人的には思っている。
ヒロインがとにかく、素敵な人として描かれる恋愛映画ばかりなので、
とりわけ、投影しやすい女性にはバカウケするだろうな、という印象がある。

グループアイドルの花形で、引き立て役では収まらないはずの、松本潤ですら、
「陽だまりの彼女」では、上野樹里の引き立て役で、
「俺が俺が」を抑えた感じの、一歩引いた演技をしていた。
なにせ相手が「魅惑的な某動物」なのだから、そうするしかない。
ペットを飼っている家の中心人物は、人間ではなくペット。

「ボクらの時代」の番宣でも、中島健人本人が言っていたが、
「陽だまりの彼女」の主人公のオファーが、
自分ではなく「松潤」でショックだった、
と語っていたのは、本当にその通りだと思った。

「ケンティー」は「俺が俺が」のアイドルの出自とは言っても、
長年、バラエティ番組の「ゴチ」で、裏回しをしてたようなタレントでもある。

ゲストらの引き立て役は得意なはずで、
そういう、一歩引いた感じの主人公が多い三木監督の作品は、
自分のキャラと相性がいい、とわかってるんだなと、その時はじめて理解した。
見た目以上にクレバーな役者だ。

もう1つ三木監督の作品例でいえば、
「きみの瞳が問いかけている」の、吉高由里子と横浜流星。
横浜流星も、どちらかといえば、ストイックで、ナルシシズムな所があるので、
「俺が俺が」の役は、やりやすそうに見えるが、
この作品の中では、やっぱり魅惑的なヒロインである吉高由里子に対して、
引き立て役側に収まっていた。

横浜流星に関しては、映画本編だけでなく、吉高と一緒に回る宣伝活動ですら、
吉高が自由奔放な発言や行動や掛け合いをし、
それに振り回されっぱなしな横浜流星、という構図の動画を、Youtubeで何度も目にした。
タジタジというか、もはやメロメロといった感じで、
見たことのない横浜流星の姿だったので、とても印象に残っている。

ケンティーの出演映画は「銀の匙 Silver Spoon」しか見たことないが、
あれも主人公がどうこうというよりも、
若かりし頃の、広瀬アリスの魅力ありきのような青春映画だったし、
ケンティーのキャスティングは、適役適所だなと思った。

今回の役柄は、アイドル出自という事もあるのか、
本格派俳優、という感じはしなかったが、
ヒロインのmiletや、キャラの強い桐谷健太らの魅力を引き出す、裏回しのような、
野球でいう所のホームランバッターではなく、「繋ぐ4番」の立ち回り的主人公で、
愛される主人公への着地は、うまくいってたように感じた。

そして、三木作品の肝である、ヒロイン役のmilet。
知りうる限りでは、演技は初めてのようだが、とんでもなく良かった。

「なんなんだこれは級」だった。

男女共に、一線級の俳優業から、歌手もこなし歌が上手い人のは、星の数ほど、いる。

一線級の男性歌手が、俳優業もこなし演技が上手い人も、腐るほど、いる。
武田鉄矢の時代の前から、すでにいるし、今井美樹も、歌手より俳優が先だった。

なんだったら、男性歌手としてテッペン叩かず、あるいは曲がり角に差し掛かり、
俳優へ転身し成功した人も、腐るほど、いる。
ユースケ・サンタマリアとか、陣内孝則とか、すでに、いる。

では、一線級の女性歌手が、俳優業もこなし演技が上手い人、というのは、、、
あまり思い浮かばない。

一線級のアイドルグループ出身からだと、まぁまぁ、いる。
川栄李奈とか、満島ひかりとか、篠原涼子とか、やっぱり、いる。

でも、女性シンガーで、バリバリ活躍している歌手で、
ヒロイン級で演技が上手い人、長考したが、やっぱり思いつかない。

YOUとか?
そもそもボーカルを担当していた「FAIRCHILD」が一線級だったのかと、
ツッコミを入れてしまうし、
個性派俳優としてなら成立してるが、ヒロインとは違う。

Coccoとか?CHARAとか?
確かにヒロイン級だったけど、一癖も二癖もある、
かなり個性的な役柄だったから、違うと思う。

石川さゆり?
うーん、女優業は副業だろう的な脇役だし。

中島美嘉?
確かにデビューがドラマのヒロイン兼主題歌だったけど、
演技が凄いというより、新人の歌唱力に度肝を抜いたイメージしかない。

本当に思い浮かばない。

アイドル出自ではない、ゴリゴリの女性ソロシンガーの出自で、個性派ではなく、
本格派と呼んでもいいレベルの、演技が上手い芸能人を、
試しに2000年以降の紅白歌合戦出演者を片っ端から調べてみたが、
本当に、いない。

強いて言えば、ゲスの極み乙女。のドラム担当「ほな・いこか(さとうほなみ)」ぐらいか。
厳密にシンガーの括りにこだわれば、
奥の手で「美空ひばり」の名前を出すしかないが、
歌の神様みたいなあの人を、本格派女優と呼んでいいのだろうか。

つまり、現時点では「美空ひばり以来」という、恐れ多いレベルの肩書きがつく、
傑出した人物なのではないかという説を指摘しておきたい。

とにかく、序盤から、良い。
眼鏡をわざとかけさせ、モサっとした芋女風情に仕立て、眼鏡を外したら美女でしたとか、
世の男が一番好きなベッタベタなシチュエーションから始まり、
彼氏とデートで屈託のない笑顔を振りまき、さりげない仕草、自然なセリフ回し。

この時点で相当メロメロなわけだが、
パラレルワールドに行けば、キャラクターのギャップの落差がありまくり、
今度はシリアスな表情、悩みを抱えて苦しんでますな演技、
歌えば超絶な美声。

なんなんだ、このヒロインは。

本当に歌手なのか。シンガーなのか。とんでもない逸材だ。

翌年の日本アカデミー賞で、毎年7、8人選ばれる新人俳優賞の中に、
いかにも列席してそうな存在感とインパクト。
下手すりゃ主演女優の枠まである。
なんだったら、年の瀬辺りに、1つくらいは別の賞を受賞してるかもしれない。

いやぁ、どえらいモンを観た。

今週は、米国アカデミー賞ノミネート作品がバカスカ公開される激戦ウィークで、
セレクトに迷ったが、最初に選んで観て、結果的に良かったなぁと思った。
今のところ、今年の邦画で1番手で。

良かった演者
milet
桐谷健太
中島健人
円井わん
真島秀和

ソビエト蓮舫
ソビエト蓮舫さんのコメント
2025年3月4日

追記。
書き忘れた事があって、「三木監督作品の男性主人公は、引き立て役がハマるので、長丁場ゆえに脇役を活かす傾向が強い、大河ドラマの主人公にもハマる」説を書き忘れました。

ソビエト蓮舫