雪の花 ともに在りてのレビュー・感想・評価
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イノベーションを阻む三つの要因
『吉村昭』の原作は
江戸末期の福井藩に実在した医師『笠原良策』をモデルにしたと聞く。
藩内のみならず、近隣諸藩にも種痘を広めた経緯と努力は
映画でも描かれている。
彼は過去に天然痘の患者に何の治療も施せなかった過去があり、
何とかしたいとの強いこころざしから、
私財を投げ打ち、無私の思いで奔走する。
が、それを阻む勢力が存在するのはお約束。
現代風に言うと
イノベーションを阻害する幾つかの要因に当てはまるか。
個人的には、
「企業文化」
「過去の成功体験」
「社内政治、縄張り意識」
を挙げたい。
夫々は本作でのエピソードにも類似する。
「企業文化」は世間の因習に読み替える。
種痘との新たな予防法に対するアレルギーは、
「接種すると牛になる」との根拠のない噂に集約される。
「過去の成功体験」は蘭方医に対する漢方医の反発。
勿論、自分たちの立場が脅されるとの畏怖はあり、
頑迷な姿勢は庶民を救うよりも
過去積み上げて来た医術を守ることに固執する。
「社内政治、縄張り意識」は封建主義や官僚主義。
事なかれで、徒に結論を引き延ばしたり、
黙殺することで見て見ぬふりを決め込み
嵐が通り過ぎるのを座して待つ。
全ては自身の保身のため。
それにより他者が被る不利益に思いは及ばない。
主人公を阻むもう一つのファクターに
北国の厳しい自然がある。
痘苗を植え継ぐため、
厳寒の栃ノ木峠を、豪雪をかきわけ暴風に耐え、
幼児を連れて越える。
『笠原良策(松坂桃李)』は諦めずに敢然と挑み、
知恵も駆使して克服する。
もっともこれには
蘭方医『大武了玄(吉岡秀隆)』との会話の前振りが。
自然と対峙する西洋式の考え方が、ここで生きて来る。
とは言え、権威の側の多くが居丈高だったり
策を弄するばかりなのとは裏腹に、
草莽の人たちが
皆々意識や志が高いのには少々鼻白む。
これは原作が、
元々は子供向けの読み物として書かれていたことが
影響しているのかもしれぬ。
本作のもう一つの柱は、
『良策』と妻の『千穂(芳根京子)』との関係性。
徒におもねることなく、
一個人としての考えを尊重する。
互いに理解し信頼し合い、
苦難も共にしようとの強い絆と
影日向に夫を支える芯の強い姿も描かれる。
二人の会話や佇まいを見ているだけで、
心がふうわりと温かくなるのは、
苦難が渦巻く中での一服の清涼剤。
史実が地味なんだろうね。
まるで絵画を観ているような美しさ
感染症に立ち向かう江戸時代の町医者の話で、
新しい治療法に偏見の眼を向けられたり、既得権益者から圧力をかけられるなど、
現代にも通じる部分はあって、
冒頭ではコロナ禍の初期を思い出して少し泣きそうにもなったけれど、
基本的に素直なストーリーで、奇抜な展開やセリフはない。
しかし、登場人物たちの心がしっかりと伝わってくる映像表現になっていると感じた。
四季おりおりの景色を含む構図は
安藤広重の浮世絵みたいな部分もあってとても美しい。
人物を含む構図は長めの固定が多く、
単一の人間をクローズアップしすぎず、複数人の全身を含めた映像が多い。
そのため、顔の表情やセリフだけでなく、
立ち居振る舞い、背景、複数の人物たちの関係性も含まれて表現が多元的になるため、
心情や緊張感、空気感などがすごく良く伝わってきた。
また、どの部分にフォーカスして、どのように見るか、
観る側の自由度も高く、絵画鑑賞のようにも楽しむことができた。
演者さんでは主役の松坂さんの眼差し、佇まい、よく響く声が、
気持ちの真っ直ぐな役とぴったり合っていたと思います。
古き良き時代劇、日本映画‼️
「名を求めず、利を求めず」‼️
江戸時代、不治の病と言われた痘瘡に有効な「種痘」を広めるために尽力した主人公とその妻、そして志を同じくする医者たちの物語‼️素晴らしいストーリーです‼️今の我々の生活があるのは先人たちの死に物狂いの努力があったからこそと思わされます‼️しかしこの作品で特筆すべきは小泉堯史監督の演出ですね‼️さすが黒澤明監督の弟子というだけあり、沈む夕陽、流れる雲、吹き荒ぶ吹雪などの自然描写がまず素晴らしい‼️主人公たちが山道を歩く姿、祭りに興じる人々など、江戸時代に生きる人々のいろんな息づかいが画面から聞こえてきそうです‼️そして小泉監督が敬愛してやまない先輩方へのオマージュがいたる所で感じられます‼️松坂桃李演じる笠原が「種痘」の邪魔をしようとする無頼の輩をねじ伏せ、「治療してやるから、療養所へ来い」と言うシーンは「赤ひげ」の新出去定みたいだし、妻の千穂を演じる芳根京子さんが、クライマックスに祭りで披露する太鼓のシーンは「無法松の一生」の松五郎を思わせるし、笠原が役所さん演じる日野に教授されるシーンの衣装は、これまた「赤ひげ」‼️ホントに嬉しくなる‼️主役を演じる松坂桃李も、誠意と正義感と使命感に溢れた笠原をイヤミなく演じていて素晴らしいんですが、やはり一番は芳根京子さん‼️男之助‼️質屋強盗を撃退するシーン、そして前述の太鼓のシーンまで、おしとやかで夫を立てる良妻賢母ぶりの中に、鉄火肌の姉御な女傑キャラぶりでヒジョーに魅力的でした‼️なんか古き良き日本映画、時代劇を久しぶりに観せてもらったので、星一つオマケです‼️
題材・役者は良いが、脚本・演出に大いなる疑問
今や実力派俳優の地位を確立した松坂桃李主演、NO,1男優役所広司も出ているということなので期待を持って観賞。
【物語】
舞台は江戸末期の福井藩。疱瘡(天然痘)の大流行によって多くの庶民が命を落としていた。城下町に暮らす町医者笠原良策(松坂桃李)は、ただ患者を隔離するのみで何も治療することなく患者を見捨てている自分に深く絶望していた。そんなとき、たまたま旅先で出会った蘭方医(吉岡秀隆)から蘭方の先進性を聞き、そこに光明を見出す。
漢方医だった笠原は蘭方も学ぶことを決意。 京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)の門下生となり教えを請う。貪欲に蘭方を学ぶ中で、日野から西洋では疫病の予防法として種痘が広まっていると聞かされ、笠原は福井にもこれを広めようと決意する。
地元に戻った笠原は、妻・千穂(芳根京子)に支えられながら、地元の人々を救うため、種痘導入に向けてさまざまな困難に立ち向かう。
【感想】
正直いささか期待ハズレ。
私財をも投げ打ち、命を賭けて、全身全霊人々の命を救うために尽力した、正に医者の鑑と言える人物が居たと言う話。一般の人には知られていない偉人にスポットを当てたことはとても良いと思うし、彼の半生は興味深かった。
つまり映画の企画としては秀逸だと思う。キャスティングも全く問題が無い。ガッカリなのは脚本・演出の部分だ。
1つ1つの展開が不自然で、違和感を覚えた。
一番良い例は、笠原と笠原に協力した町人たちが命懸けで雪の峠を越えるシーン。“命懸け”を演出したかったのは分かるが度を過ぎていた。あれでは“八甲田山”の雪中行軍だ。現代の雪山装備ならともかく、あの時代のあの軽装では間違いなく死人が出る。しかも翌日は全員ピンピンしていて「苦労掛けて悪かったね」くらいの軽い労い。 あの峠越えが史実だったら彼らの中の「何人かは凍死、また何人かは手足を失うような重い凍傷で床に臥せている」でなければおかしい。 「危ういながらも全員無事に峠越えを果たした」が史実であれば、「突然の吹雪で視界も利かない中の峠越え。幸い積雪は3~4cmだったが、もしあと1時間遅かったら積雪で峠を越えられなかったであろう」という演出が妥当だ。 そもそも地元の人間なのだから冬の峠越えが命懸けなのは知っているはずだから、なぜこの時期に峠越えしたのか説明が必要。笠原が村人の話を聞いて「もう雪が降ったのか」というセリフで例年により雪が早かったことは分かるが、それのみ。弱過ぎる。
「本当はもっと早い季節に越えるはずだったが、予期せぬ障壁で初冬になってしまった」とか「今大流行中でたくさんの人がどんどん亡くなっており、春まで待てない」とか。命を救うことに全身全霊の笠原が、命懸けのリスクを軽く考えているように見えるのは大いなる矛盾。
それだけでなく、藩の協力を得るのに苦労していたのに、次の展開であっと言う間の解決。呆気にとられるばかりで説得力に欠ける。 周囲で誰も経験していない医療行為に慎重派・反対派が出るのは理不尽ではなく行政としては至極当然のこと。だからこそ「なるほど」と藩の幹部も納得した説得力ある展開が必要だろう。
そう感じる納得できない展開が随所に。「偉業の実話」ということに甘えてそういう観客を説得する脚本・演出を提供する努力を怠ったのではないか、そんな風に思えてしまう。題材、役者が良かっただけに残念。
静かで穏やかで善良
形だけ模して‼️❓侮る勿れ‼️❓
芳根京子さんの代表作になるのでは?
芳根京子さんの佇まいが素敵で、特に指の美しさに釘付けになりました。
作品は、映像の一つ一つが華美ではないが美しく、自然の音も、BGMも素敵でした。ストーリーも難し過ぎず、明快。
コロナ渦で、ワクチンが出始めたときに、ワクチンのデメリットを取り上げて大騒ぎになっていた、わが国を思い出しました。
京都〜福井。北陸新幹線の延伸も進展が遅く、昔も今も難所なのだと思いました(いろんな意味で)
【名を求めず、利を求めず、民が疱瘡で子を亡くすことなきように種痘を蘭方医より学び、民に尽くした清廉なる町医者の姿を描いた時代劇。今作は町医者や、その妻、彼を助ける仲間達の姿に胸を打たれる逸品である。】
ー 今作では、福井藩に実在したとされる笠原良策(松坂桃李)の民のために奔走する生き様が描かれる。
今作が観ていて清廉なる気持ちになるのは、彼の民の為に町医者として生きるという姿にブレがない事と、彼を支える妻(芳根京子)がいつも笑顔で夫を支える姿や、笠原の親友の藩医(三浦貴大)が友の意を受けて江戸の藩主に種痘の許可を得る姿や、笠原に京で蘭学を教える蘭方医(役所広司)の姿である。
特に、笠原が種痘の種を、京で蘭方医の娘に打ち、それを子を通じて福井藩まで吹雪の峠越えをして運ぶシーンは、感動したモノである。ー
<松坂桃李さんを始め、邦画の名優が参集した今作は、今や希少な、剣劇無き時代劇ながら実に見応えがあり、且つ爽やかな感動に浸れる見事な時代劇である。
今作を観ると、福井藩主、笠原良策を始めとした人達の先見の明と、熱意と、人間としての善性に打たれるのである。
ご存じの通り、福井県は日本の中で幸福度ランキング一位を獲得し続けているが、その素養が江戸時代から面々と培われていた事が分かる、近代歴史映画の逸品であると、私は思います。>
町医者とその妻との夫婦愛が語られる作品
純度の高い時代劇
人から人へ ともにありて 実際は違うかもだけども 真っ直ぐな主人公 真っ直ぐな撮影に打たれた
コレ 星🌟0・5マイナスは前半10分❓少し不覚にも寝てただけ
基本 フィルム🎞️どり の CG無し ほんのわずかVFX
ほぼ そのまま撮った 職人芸です
小泉堯史 監督の 良い意味での 黒澤精神が生きている。
ほっとする 日本の四季映画 医は仁術なり 近所のピアス茶髪医者いい加減に教えたい 見せたい
天然痘 撲滅宣言は1980❓頃
種痘 予防接種💉ワクチン的な
人から人へ 失敗から成功へ
有料パンフ🈶は是非購入オススメ
短いページで 天然痘との主人公の戦い葛藤がわかります。医学的背景 理由も まさに命のバトン的な
詳細は 映画館で作品観て 🈶パンフで補ってください
幕府 藩 でも 最初 主人公は 漢方医です 人のつながりの大切さ
主人公松坂桃李 芳根京子 役所広司 の役者魂
撮影 美術 装飾 照明 録音 音楽 大道具 小道具 衣装 かつら・床山・髪結
昔ながらの 真っ直ぐな画面・映画が心地よい
松坂桃李主人公 福井藩 町医者 笠原良策夫婦の真っ直ぐさに打たれた。
『最新鋭の古風なほぼアナログ映画』でございます。
この後 『アンダーニンジャ』🥷見るから セットとしては相性抜群でしょ 真っ直ぐの後に コメディアクション
まあ泣くまでは行かないけど 真っ直ぐさに打たれた 俳優陣 スタッフ 監督
唯一残念だった点:『どっかで観たなぁ既視感』🟰室町無頼 琵琶湖畔 が共通に見えた。
この監督
『明日への遺言 藤田まこと』はイマイチだったが 安定している
『峠 最後のサムライ 役所さんつながり』よりはわかりやすく 面白かった。
有🈶パンフは ほんとにおススメ‼️ お金無理ならせめて ウイキペディアで事後でもいいので確認して❗️
新しい事を始める難しさ。
江戸時代末期、多数の死者を出し治療法のない天然痘はどうにかならないかと奮闘する町医者漢方医・笠原良策の話。
ある日出会った男・大武了玄という男から聞いた西洋医学、最初は少し抵抗があっものの前向きに新しい物を取り入れようと動き始める笠原だったが。
この時代のことは勿論知らないけど、本作通り漢方療法が主だった時代なんですかね?!
1人の男から聞いた西洋医学のことで、ただただ病気で苦しむ人達を助けたいで動き、新しい物を取り入れようと頑張る笠原の姿に惹き込まれた。
てか、この時代にはまだ注射は無かったんですね~、てっきり注射使って天然痘の膿を接種するのかと思ってたら…。でもこういう時代を経て今の医療があるのよね!感謝です!本作のキーマンは医者仲間の半井元沖ですかね!作品としても面白かった。
いい話なのだが、流れが悪い
タイトルに込められた意味
名を求めず、利を求めず
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