雪の花 ともに在りてのレビュー・感想・評価
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キレイすぎる映画だけど…
登場人物のほぼ全てが、こんな人は実際いないんじゃないか?というほど清らかで真っ直ぐです。道徳のビデオかと思うほどです。
中には、きれいごと言うな!って思えるシーンもあった(たとえば痘痕が残った少女への慰めなど。…桃李くんが励ましますが、少女の「この顔で(生き残っても)何を感謝しろっていうの、痘痕のせいでみんなめちゃくちゃだ、うつるって騒がれて」というようなセリフのほうに共感できました。)し、猛吹雪の中、巻き込んだ周囲の人を犠牲にするリスクを負ってまで突撃する桃李くん(人命を救う立場のはずなのに…責任が取れない、根拠のない楽観論に基づいた突撃なんて、指揮官として一番やっちゃいけない事だと思う。)など「ん?」と思うシーンはありましたが、悪人がほぼ出てこないんで、全体として、見ていて気持ちがいい映画なのは確かです。
なぜなら、現実の生活ですでに嫌というほど汚いものを見せられているから。
保身しか考えず、時にはヤクザも平気で使う悪代官。
平気で他者を陥れる人の、獣よりはるかに薄汚く醜い悪意と獣性。
次から次へと、それこそ疫病のように世にはびこる陰謀論。
躓いた人をスケープゴートとして叩きまくり、ストレス解消する一部のネット世論。
同じものをわざわざフィクションで見たいとは思いません。
石清水のような清らかな映画を観て、鑑賞後の気分は最高でした。
最近の邦画は、ごく狭い範囲での人間関係のあれこれを描いているものが多くて、はっきり言って苦手なのですが、これは、久々に、見て良かったと思える映画でした。
タイトルが渋すぎて損してるが、見ると「雪の花」の意味が分かり、しみじみと、良い映画だなと思いました。
人物が話し合うシーンの背景は、里山など、和の自然の風景が多いのですが、これが絶妙に美しいです。また、懐かしく哀愁漂う、時代劇にぴったりな笛の音とピアノ、チェロの静かな音楽が、溶け合っていました。
主人公の妻も出来過ぎた人で、超美人・健気・善人・正義感強い・自分の着物を売ってでも夫のピンチを支える・夫を常に立てる・夫を真っ直ぐに信頼している・常に笑顔・自身もいざとなると強盗を追い払えるほどの戦闘力を有する。
など、スーパーウーマンです。
少し前の時代なら、貞淑で夫を立てる妻は、「婦人の鑑」とでも呼ばれたんでしょうか。
最初に出てくる村人一家のお母さんも、病気なのに「私は後回しで構いませんから、我が子を先に看てください」と言うし、隔離された後も人の世話ばかり焼いていた描写がありました…
こんなに健気な人は実際いないでしょうが、美人で優しくて、真っ直ぐな気性で、頭も良くて、決してひけらかすことなく、自分を常に立てて尊敬してくれる。そして働き者で、人のために尽くす女性ばかり出てきます。二次元にしか存在しない。男性からしたら、理想像かも。だから脚本は男が書いたんじゃないかと思ったらやっぱりそうだった。
それにしてはエロ要素が皆無だったけど。そこも、子どもと一緒に安心して見られる健康的な映画ってとこ。
ここまで来ると、水清ければ魚住まずで、私が夫であれば、もうちょっと頭のゆるい愛人を作りたくなるかもしれません。あんな奥さんいたら、だらしない姿を一切見せられない…
あと、桃李君の着物の色が良かったです。薄い緑と濃い緑を重ね着してますが、どちらも和の色(名前が分からない)で中間色、下の袴?も栗の渋皮色というか、中間色のココアブラウンでとっても似合ってました。
逆に女性はみんな紺の着物で、庶民とはいえもうちょっと綺麗なの無かったの?と思いました。
男性が寝巻き?がわりに着ているバスローブみたいな白い服も気になる。素材がぽこぽこしていて、この時代にこんな生地があったのなら名称が知りたいと思いました。
日本の里山の風景をたっぷり鑑賞できますし、美術と音楽が素晴らしく、しみじみとした美しい映画でした。話の流れ上、ほぼ、「室内」と「自然風景」しか背景が出てこないので、その分、自然のほうにはメリハリがつけてあって、清流の流れや、森、雪山、など、毎回違う自然美が見られます。
けっこう低予算だったのかもしれません。
室内の小物も、目立つのは火鉢と盆、湯飲みぐらいで、かなりシンプルでした。
「仏心鬼手」の掛け軸も良かったな。
漢方に対して、当時、西洋医学が「蘭方」と呼ばれていた事も初めて知りました。
この物語ほどスムーズに受容はされなかったでしょうが、私が庶民の立場なら、いきなり種痘と言われても信じられないし、そんなもの注射して本当の疱瘡になったらどうするんだ、と食って掛かるのは当然。
で、解体新書の原本その他は東大図書館と九州大学図書館、九州大学病院図書館にあるんですね。オランダの医学が中国を通って長崎のシーボルトまで伝わってきた事に感銘を覚えるとともに、ワクチンが今や利権と陰謀論の温床になってしまったのはちょっと切ないなぁ・・・と思いました。金が絡むとすぐ利権。
ジェンナーも使用人の少年を実験台にしてますが、この物語でも最初に接種されたのが子供たちだった事や、医者の娘が「私に注射して」と自ら申し出るのも、切なく感じました。自己犠牲っていいことばかりじゃない。
せめて跡が残る可能性あるんだから男の子にしたら良かったんじゃ…
この映画で唯一、気に入らない点があるとしたら自己犠牲の賛美ですね。
最後、エンドロール見てたら猟友会の名前が出てきたけど、
解剖用のイノシシさんは本物だったのかな?
あと、主人公が、俸禄をもらい武士の身分に取り立てられることを自ら断っていますが…江戸時代の医者ってどういう身分なの?学問を身に付けたお武家様の子じゃないの?と思って調べてみたら、そうでもないようですね。
読み書きができないと医学書が読めないので、町人や農民の子で、比較的裕福で、優秀な人がなっていたようです。藩医に取り立てられれば、武士身分になったようですが、町医者や村医者は武士階級ではなかったそうだ…。詳しく書いてあるサイトも見つけることが出来て勉強になりました。
こういう人ばかりの世界だったらいいのになぁ。
神社や町の小さな祠に疱瘡神と云う石塔を見たことがありませんか。
疱瘡(天然痘)は江戸時代では死病とされていて、これを撲滅するために奮闘した福井藩の町医者笠原良策に吉村昭さんが光を当てました。
私は原作を2年前に読みました。
今回の映画では主人公の笠原良策を松坂桃李が熱演していましたが、良策の妻千穂を私の大好きな芳根京子が演じ、良策を導く蘭方医日野鼎哉を役所広司が演じました。
江戸時代末期には笠原良策や師匠の日野鼎哉、大阪適塾を開塾した緒方洪庵、妻や実母を実験台にして日本初の麻酔手術を行った華岡青洲、福井藩には医者ではありませんが、幕末の志士橋本左内は緒方洪庵の適塾で医学を学んでいました。
この映画でそう言う人達が改めて名前を知られることになったのであれば、今回笠原良策が映画になって良かったと思います。
もったいない
ガミさんと日岡の対峙に超テンション上がった(笑)
原作は未読です。
恐らく、原作を読んだことがある方々には
残念な仕上がりになっているのではないかと
容易に推測されます。
美しい福井の四季を感じさせる映像の数々に
心癒される思いではあるけど、
もっと重要なシーンを
撮るべきではなかろうか?とか
シーンの繋ぎや、場面展開などの演出が
全く好みではなかったです。残念。
この時代に西洋医学に目を向け、耳を傾け
それらを取り入れる勇気や
福井から京都まで、果ては長崎まで
福井藩のため、いや日本国のために
ひたすら駆け回る笠原良作(松坂桃李)と、
影で支える妻 千穂(芳根京子)の姿には
胸がジーンとなります。
こういう人達の苦労の数々があるからこそ
今がある!
感謝しきれない思いでいっぱいになる。
が、テンポが悪い。
さくら貝なんかエピソードあった?
太鼓のシーンいる?
なぜ死ぬかもしれないというリスクも省みず
冬場の峠越えを決断した?
あれ、下手したら全員☆になっててもおかしくない。
八甲田山かと思った(苦笑)
優しく描いている教科書みたい・・
感謝✨✨
お金をもらってやる仕事ではない。
ジェンナーが牛痘による種痘を始めたのが1796年。この作品の主人公、笠原良策が福井県で種痘を始めたのが1849年末。実に50年以上の時間を有しますが、しかし彼らが頑張ったおかげで日本では1976年に種痘をやめたそうな。日本は天然痘自体は1956年以降発症していないとか。
なお、日本で牛痘ではなく人痘による種痘は1789年に成功し、また牛痘による種痘は1824年に成功したそうな。この映画を見たら、どうしてもこの映画の例が最初のように勘違いしてしまいますが、四半世紀も前に日本でも牛痘による種痘が行われたそうです。
ただ、この作品は日本で種痘が広まっていく苦労や経緯がよくわかり、決して笠原良作とその妻の偉業を否定するものではありません。しかし・・・種痘を受けるって本当に勇気が必要だったでしょうね。基本的に「ワクチン」って現代でも同じなわけで、コロナワクチンに対しても反対論があっても当然だと思います。もちろん副作用で大変な目にあった人も多かったですし。
「お金をもらってやる仕事ではない」というセリフに胸が熱くなりました。
「雪の花」というタイトルは普通に雪深い北陸福井のシンボルとして感じていましたが、全く違ったので感心させられました。
己のに恥じない生き方を
江戸時代の末期に流行した疾病に挑んだ町医者の物語。まだワクチンも無かった時代に独りの町医者が残した功績は勲章に値するように感じる。
「己に恥じない生き方をしたい」という台詞が印象的で昔も今も疾病と闘い続ける医師に感謝したい。
2025-10
名を求めず、利を求めず、胸熱時代劇!
江戸時代末期に疱瘡(天然痘)を種痘(ワクチン)で予防していく町医者の話ですが、
この時代に、いわゆるワクチンの発想が海外から持ち込まれ、
それを理解し、実現しようとする当時の医者に脱帽ですし、
素晴らしいと思いました。
やはり日本の医学を飛躍的に進歩させたのは、蘭方医であり、
杉田玄白と前野良沢によるターヘルアナトミアの翻訳書「解体新書」でしょう。
そのくだりも描かれ、
主人公 笠原良策(松坂桃李)が大武了玄(吉岡秀隆)との出会いにより、
開眼していくところや、
そこから京の日野(役所広司)に師事して、種痘に出会うところは胸熱でしたね。
いや、全編にわたって胸熱なんですよね。
冬の山越のシーン、城下町でのチンピラとのアクションシーンなど、
どれをとっても胸に突き刺さりましたね。
良策の判断軸が日野から教わった「名を求めず、利を求めず」であるところはグッときました。
良策の妻 千穂を演じた芳根京子も、良策への愛情が迸る、
また、男まさりな格闘シーン、太鼓シーンなど、みどころも多々あり、
素晴らしかったです。
その他の脇も、三浦貴大、益岡徹が良かったですね。
まさに時代劇の王道を地で行っている作品で、とても楽しめました。
松竹さんには今後も良い時代劇をつくり続けて欲しいです。
※案の定なのですが、客層がジジババがほとんどで、劇場内がお茶の間化していたのは
とてもとてもとてもとても苦痛でした。
話しのみならず、咳エチケットもなく、スマホも見放題。
普段劇場にいらっしゃらない諸先輩方の振る舞いにはうんざりです。
The日本映画
イノベーションを阻む三つの要因
『吉村昭』の原作は
江戸末期の福井藩に実在した医師『笠原良策』をモデルにしたと聞く。
藩内のみならず、近隣諸藩にも種痘を広めた経緯と努力は
映画でも描かれている。
彼は過去に天然痘の患者に何の治療も施せなかった過去があり、
何とかしたいとの強いこころざしから、
私財を投げ打ち、無私の思いで奔走する。
が、それを阻む勢力が存在するのはお約束。
現代風に言うと
イノベーションを阻害する幾つかの要因に当てはまるか。
個人的には、
「企業文化」
「過去の成功体験」
「社内政治、縄張り意識」
を挙げたい。
夫々は本作でのエピソードにも類似する。
「企業文化」は世間の因習に読み替える。
種痘との新たな予防法に対するアレルギーは、
「接種すると牛になる」との根拠のない噂に集約される。
「過去の成功体験」は蘭方医に対する漢方医の反発。
勿論、自分たちの立場が脅されるとの畏怖はあり、
頑迷な姿勢は庶民を救うよりも
過去積み上げて来た医術を守ることに固執する。
「社内政治、縄張り意識」は封建主義や官僚主義。
事なかれで、徒に結論を引き延ばしたり、
黙殺することで見て見ぬふりを決め込み
嵐が通り過ぎるのを座して待つ。
全ては自身の保身のため。
それにより他者が被る不利益に思いは及ばない。
主人公を阻むもう一つのファクターに
北国の厳しい自然がある。
痘苗を植え継ぐため、
厳寒の栃ノ木峠を、豪雪をかきわけ暴風に耐え、
幼児を連れて越える。
『笠原良策(松坂桃李)』は諦めずに敢然と挑み、
知恵も駆使して克服する。
もっともこれには
蘭方医『大武了玄(吉岡秀隆)』との会話の前振りが。
自然と対峙する西洋式の考え方が、ここで生きて来る。
とは言え、権威の側の多くが居丈高だったり
策を弄するばかりなのとは裏腹に、
草莽の人たちが
皆々意識や志が高いのには少々鼻白む。
これは原作が、
元々は子供向けの読み物として書かれていたことが
影響しているのかもしれぬ。
本作のもう一つの柱は、
『良策』と妻の『千穂(芳根京子)』との関係性。
徒におもねることなく、
一個人としての考えを尊重する。
互いに理解し信頼し合い、
苦難も共にしようとの強い絆と
影日向に夫を支える芯の強い姿も描かれる。
二人の会話や佇まいを見ているだけで、
心がふうわりと温かくなるのは、
苦難が渦巻く中での一服の清涼剤。
史実が地味なんだろうね。
まるで絵画を観ているような美しさ
感染症に立ち向かう江戸時代の町医者の話で、
新しい治療法に偏見の眼を向けられたり、既得権益者から圧力をかけられるなど、
現代にも通じる部分はあって、
冒頭ではコロナ禍の初期を思い出して少し泣きそうにもなったけれど、
基本的に素直なストーリーで、奇抜な展開やセリフはない。
しかし、登場人物たちの心がしっかりと伝わってくる映像表現になっていると感じた。
四季おりおりの景色を含む構図は
安藤広重の浮世絵みたいな部分もあってとても美しい。
人物を含む構図は長めの固定が多く、
単一の人間をクローズアップしすぎず、複数人の全身を含めた映像が多い。
そのため、顔の表情やセリフだけでなく、
立ち居振る舞い、背景、複数の人物たちの関係性も含まれて表現が多元的になるため、
心情や緊張感、空気感などがすごく良く伝わってきた。
また、どの部分にフォーカスして、どのように見るか、
観る側の自由度も高く、絵画鑑賞のようにも楽しむことができた。
演者さんでは主役の松坂さんの眼差し、佇まい、よく響く声が、
気持ちの真っ直ぐな役とぴったり合っていたと思います。
古き良き時代劇、日本映画‼️
「名を求めず、利を求めず」‼️
江戸時代、不治の病と言われた痘瘡に有効な「種痘」を広めるために尽力した主人公とその妻、そして志を同じくする医者たちの物語‼️素晴らしいストーリーです‼️今の我々の生活があるのは先人たちの死に物狂いの努力があったからこそと思わされます‼️しかしこの作品で特筆すべきは小泉堯史監督の演出ですね‼️さすが黒澤明監督の弟子というだけあり、沈む夕陽、流れる雲、吹き荒ぶ吹雪などの自然描写がまず素晴らしい‼️主人公たちが山道を歩く姿、祭りに興じる人々など、江戸時代に生きる人々のいろんな息づかいが画面から聞こえてきそうです‼️そして小泉監督が敬愛してやまない先輩方へのオマージュがいたる所で感じられます‼️松坂桃李演じる笠原が「種痘」の邪魔をしようとする無頼の輩をねじ伏せ、「治療してやるから、療養所へ来い」と言うシーンは「赤ひげ」の新出去定みたいだし、妻の千穂を演じる芳根京子さんが、クライマックスに祭りで披露する太鼓のシーンは「無法松の一生」の松五郎を思わせるし、笠原が役所さん演じる日野に教授されるシーンの衣装は、これまた「赤ひげ」‼️ホントに嬉しくなる‼️主役を演じる松坂桃李も、誠意と正義感と使命感に溢れた笠原をイヤミなく演じていて素晴らしいんですが、やはり一番は芳根京子さん‼️男之助‼️質屋強盗を撃退するシーン、そして前述の太鼓のシーンまで、おしとやかで夫を立てる良妻賢母ぶりの中に、鉄火肌の姉御な女傑キャラぶりでヒジョーに魅力的でした‼️なんか古き良き日本映画、時代劇を久しぶりに観せてもらったので、星一つオマケです‼️
題材・役者は良いが、脚本・演出に大いなる疑問
今や実力派俳優の地位を確立した松坂桃李主演、NO,1男優役所広司も出ているということなので期待を持って観賞。
【物語】
舞台は江戸末期の福井藩。疱瘡(天然痘)の大流行によって多くの庶民が命を落としていた。城下町に暮らす町医者笠原良策(松坂桃李)は、ただ患者を隔離するのみで何も治療することなく患者を見捨てている自分に深く絶望していた。そんなとき、たまたま旅先で出会った蘭方医(吉岡秀隆)から蘭方の先進性を聞き、そこに光明を見出す。
漢方医だった笠原は蘭方も学ぶことを決意。 京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)の門下生となり教えを請う。貪欲に蘭方を学ぶ中で、日野から西洋では疫病の予防法として種痘が広まっていると聞かされ、笠原は福井にもこれを広めようと決意する。
地元に戻った笠原は、妻・千穂(芳根京子)に支えられながら、地元の人々を救うため、種痘導入に向けてさまざまな困難に立ち向かう。
【感想】
正直いささか期待ハズレ。
私財をも投げ打ち、命を賭けて、全身全霊人々の命を救うために尽力した、正に医者の鑑と言える人物が居たと言う話。一般の人には知られていない偉人にスポットを当てたことはとても良いと思うし、彼の半生は興味深かった。
つまり映画の企画としては秀逸だと思う。キャスティングも全く問題が無い。ガッカリなのは脚本・演出の部分だ。
1つ1つの展開が不自然で、違和感を覚えた。
一番良い例は、笠原と笠原に協力した町人たちが命懸けで雪の峠を越えるシーン。“命懸け”を演出したかったのは分かるが度を過ぎていた。あれでは“八甲田山”の雪中行軍だ。現代の雪山装備ならともかく、あの時代のあの軽装では間違いなく死人が出る。しかも翌日は全員ピンピンしていて「苦労掛けて悪かったね」くらいの軽い労い。 あの峠越えが史実だったら彼らの中の「何人かは凍死、また何人かは手足を失うような重い凍傷で床に臥せている」でなければおかしい。 「危ういながらも全員無事に峠越えを果たした」が史実であれば、「突然の吹雪で視界も利かない中の峠越え。幸い積雪は3~4cmだったが、もしあと1時間遅かったら積雪で峠を越えられなかったであろう」という演出が妥当だ。 そもそも地元の人間なのだから冬の峠越えが命懸けなのは知っているはずだから、なぜこの時期に峠越えしたのか説明が必要。笠原が村人の話を聞いて「もう雪が降ったのか」というセリフで例年により雪が早かったことは分かるが、それのみ。弱過ぎる。
「本当はもっと早い季節に越えるはずだったが、予期せぬ障壁で初冬になってしまった」とか「今大流行中でたくさんの人がどんどん亡くなっており、春まで待てない」とか。命を救うことに全身全霊の笠原が、命懸けのリスクを軽く考えているように見えるのは大いなる矛盾。
それだけでなく、藩の協力を得るのに苦労していたのに、次の展開であっと言う間の解決。呆気にとられるばかりで説得力に欠ける。 周囲で誰も経験していない医療行為に慎重派・反対派が出るのは理不尽ではなく行政としては至極当然のこと。だからこそ「なるほど」と藩の幹部も納得した説得力ある展開が必要だろう。
そう感じる納得できない展開が随所に。「偉業の実話」ということに甘えてそういう観客を説得する脚本・演出を提供する努力を怠ったのではないか、そんな風に思えてしまう。題材、役者が良かっただけに残念。
静かで穏やかで善良
形だけ模して‼️❓侮る勿れ‼️❓
芳根京子さんの代表作になるのでは?
芳根京子さんの佇まいが素敵で、特に指の美しさに釘付けになりました。
作品は、映像の一つ一つが華美ではないが美しく、自然の音も、BGMも素敵でした。ストーリーも難し過ぎず、明快。
コロナ渦で、ワクチンが出始めたときに、ワクチンのデメリットを取り上げて大騒ぎになっていた、わが国を思い出しました。
京都〜福井。北陸新幹線の延伸も進展が遅く、昔も今も難所なのだと思いました(いろんな意味で)
【名を求めず、利を求めず、民が疱瘡で子を亡くすことなきように種痘を蘭方医より学び、民に尽くした清廉なる町医者の姿を描いた時代劇。今作は町医者や、その妻、彼を助ける仲間達の姿に胸を打たれる逸品である。】
ー 今作では、福井藩に実在したとされる笠原良策(松坂桃李)の民のために奔走する生き様が描かれる。
今作が観ていて清廉なる気持ちになるのは、彼の民の為に町医者として生きるという姿にブレがない事と、彼を支える妻(芳根京子)がいつも笑顔で夫を支える姿や、笠原の親友の藩医(三浦貴大)が友の意を受けて江戸の藩主に種痘の許可を得る姿や、笠原に京で蘭学を教える蘭方医(役所広司)の姿である。
特に、笠原が種痘の種を、京で蘭方医の娘に打ち、それを子を通じて福井藩まで吹雪の峠越えをして運ぶシーンは、感動したモノである。ー
<松坂桃李さんを始め、邦画の名優が参集した今作は、今や希少な、剣劇無き時代劇ながら実に見応えがあり、且つ爽やかな感動に浸れる見事な時代劇である。
今作を観ると、福井藩主、笠原良策を始めとした人達の先見の明と、熱意と、人間としての善性に打たれるのである。
ご存じの通り、福井県は日本の中で幸福度ランキング一位を獲得し続けているが、その素養が江戸時代から面々と培われていた事が分かる、近代歴史映画の逸品であると、私は思います。>
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