雪の花 ともに在りてのレビュー・感想・評価
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勇気の花
芳根京子の出演というだけで鑑賞を決めてた本作だが、正直イマイチだった。
冒頭、モブの下手な演技で説明的な台詞が垂れ流され、はつの家のピカピカの床に嫌な予感が…
最初にこういうのが目に付くと、終始気になってしまう。
演技はマシになっていったが、着物も肌艶も映像もあまりに綺麗すぎて“時代感”がなかった。
また、台詞も原作そのままなのか口語らしくなく、そのせいで役所広司すら下手に見える始末。
何も起きない旅路を何カットも映し、事あるごとに短歌を詠ませ、はつに長々と歌わせる。
吹雪のシーンの長回しといい、尺を無駄遣いし過ぎでは。
芳根京子と松坂桃李の半端な殺陣も必要性を感じず、特に松坂の方はやられ役が大袈裟でもはやコント。
祭り太鼓のシーンも不要で、後の平和を表現するには最後の海の場面で十分だろう。
そもそも良策がやったことは、疱瘡を治療することではなく元からあった予防法を広めたこと。
勿論、危険を省みずそれを行ったことは偉大だが、映画としてはあまりに地味だった。
牛痘の輸入許可を取りつけたのも友人だし、「道具の工夫」も言葉のみ。
松坂桃李は悪くはないが、その見た目が時代にも医者にも合っていない。
言っては悪いが、ただ真面目で固いだけの芝居だったので、これならもっと別の役者がいたのでは。
疫病の悲惨さも最初に軽くしか描かれないし、作品としては笠原良策という人間を描きたかったのだろうが…
それすら薄くて、何故これを映画化したのか疑問です。
史実とは言え、ポスターで「日本を救った」とネタバレしてるのでハラハラ感もなかった。
あゝ栃ノ木峠
何を期待するかで評価が変わる作品
レビューを見てそこそこだったので、期待せずに視聴したので、逆によかったかも。
昔夕方にTVで流れていた時代劇を現代向けに映画にした感じ。
医者の物語の仁とか感動したが、
感情を揺さぶられ、泣きたい人にはおすすめできない。
もっと紆余曲折のドラマや人間臭さがあってもよかったのかな。
峠を越えられず、協力者が死亡するなどの展開があれば、もっと惹きつけられただろう。
遭難して命からがらの状態になって、ケロッと宴モードになっているところとか、大人数の輩に圧勝しちゃう万能な主人公感は時代劇感が出てたw。
現代のコロナワクチンと重なるところがあり、ワクチン普及映画という穿った見方をすると結末も読めるし冷めてしまう。
と、辛口批判する部分もあったが、
古き良き日本人の心や自然の美しさ(厳しさ)を思い出させてくれるし、役者さんは素晴らしい演技をしているので決してつまらない映画ではない。
無私の心で美しく生きる人々を、ただ静かに真面目に描く。今、こういう映画が必要。
江戸時代末期、天然痘の予防に尽力した実在の町医者、笠原良策とその偉業を描く。
「身命をかけて人のために尽くす人」を、ただひたすら真っ直ぐに真面目に描いた松竹時代劇。
余計な飾りも、けれんもない。中途半端な遊びも内輪受けも無い。
芸人枠も吉本も旧ジャニーズやアイドルグループもいない、ただゆっくりとじっくりと観れる映画は珍しい。
やはり真面目な印象の強い松坂桃李は、この題材にぴったり。
時代劇で医師と言えば「赤ひげ」から果ては「破れ傘刀舟悪人狩り」まで、本作もご多分に漏れず、文武両道の主人公だが、ここでも控えめで、やり過ぎないのが本作。
そして、良作の妻を演じた芳根京子の凛としたたたずまい。
夫を支えながらも只尽くすのではなく、夫を通じて自らも主張しているように感じられる。
男勝りの殺陣に太鼓のシーンも微笑ましい。
彼が蘭学を学んだ師を演じる役所広司もまた、ただ登場するだけで納得できる圧倒的な存在感と、松坂桃李との師弟関係もまた実に自然。
蘭方医役の吉岡秀隆の穏やかさ、協力する旅籠の主人、山本學の出演もうれしい。
ちゃんと疱瘡の流行を懸念している幕府、真っ当な裁きをする幕府福井藩の家老、種痘の苗を命がけで運ぶ町人すら「これは金をもらってやる仕事ではない」と金を突き返す。
嘆願書を受け入れない役人や、旧来の漢方医、小悪党連中以外は、皆、「無私の心」「美しい生き方」をしているのが心地よい。
エンディングもまた静かに音楽が流れ締めくくる。
どっかのタイアップのJPOPなんて流さない、最後まで信用できる映画で実に良かった。
ひれ伏す木っ端役人、あっぱれ、あっぱれ
小泉堯史監督作品と覚悟して鑑賞。
小泉監督の世評は知りませんが、黒澤明監督の愛弟子と言われてデビューして以来、全作品を鑑賞しています。小泉監督は、画面の構図と色彩にこだわる職人のように私は理解しています。他方で、例えば、「雨あがる」での林の中での寺尾聰の立ち回りは上手く演出できた格好良いシーンで好きなのですが、その他動きのあるシーンは、どの作品でも、何かぎこちないものを感じています。また、役者には(独特の)演技を付けているせいなのか、あるいは逆に演技指導を全くしないせいなのか分かりませんが、役者の演技はこれまたぎこちなく、語りは棒読みのように感じられるシーンが少なくありません。例えば、本作冒頭の百姓3人の語り合いがそれで、”本作は最初からかい!?”と少々引きました。
ただ、他の人のレビューに松坂桃李が台詞棒読み…とある意見を見ましたが、それは間違いかと。そのようには思えませんし、むしろ松坂のあの演技があればこそ、本作は破綻なくまとまっていると評価しています。ドラマ「御上先生」といい、本作といい、松坂は上手い役者です。
芳根京子はしっかり者の奥方姿が凛々しくて本作を引き締め、本作を良作に仕上げています。ドラマ「まどか26歳、研修医をやってます!亅とは全く異なる魅力があります。
松坂が、家老から褒美として御殿医への就任を申し付けられて断るシーンと、芳根に同じ内容を報告するシーンとは、重複してクドく感じられ、映画的省略をしてしかるべきでは?と再編集したい気持ちに駆られます。また、エンディングのストップモーションは、不完全で映画的興趣が損なわれている気がするのですが、私だけでしょうか?
ただ、これもあれも、すべて小泉監督テイストとして目をつぶって許せる程度のものです。総じて言えば、時代劇の王道を目指し、愚直に作られた良作時代劇です。
マカロニウエスタン風時代劇「室町無頼」を見た後の、ちょうど良い口直しになりました。
毒にも薬にも種痘にもならぬ小泉作品
大好きな時代劇で原作者も役者も好きだけど、面白みのない小泉堯史作品なんで、予防接種代わりにバーを下げといてちょうどよかったです。幕末の福井藩で種痘を広めた町医者のフツーにいい話しなんだけど、作品全体が上っ面だけで深みも奥行きもなく、冒頭の疱瘡患者が発生する山村のシーンからして、妙な違和感が気になって映画の中にすんなり入れませんでした。違和感の原因は、固定フレームの中で複数の役者さんが出入りしてセリフを言う演出のため、わざとらしい田舎芝居になっていることです。さらに脚本が大時代的で大げさなセリフばかりなのが致命的で、出演者全員が急に大根役者になったかのように感じました。場面のつなぎも唐突感があるところが多く、なんか欠点ばかり気になってしまい残念。映画的な見せ場は、猛吹雪の中、雪山を突破するシーンだけど、ここでも固定フレームで撮っているのでイマイチ。役者さんはベテラン揃いだけど、こんな脚本を読まされて気の毒でした。
「音楽と共に最高傑作でした」
淡々と進む物語
原作は未読です。
実在の人物ということさえ知らぬまま、ただ、ただ、松坂桃李くん主演作ということで観に行きました。脇を固める俳優さんたちも、素晴らしい方たちばかりでした。
ワクチンの話とか、多分、感動すべきところなのかもしれませんが、淡々と進む物語に、あまり感動とかもないまま終わってしまいました。へー、そうなんだーって感じです。もうちょっと、起伏というか…あれば良かったのかなとも思うけど、内容が、内容だけに、そういう訳にもいかないんですかね。
決して、面白くなかったわけじゃないんですけど、油断すると、寝落ちしちゃいそうでした。
地味だが良作
久しぶりに桃李くんの侍姿
名を求めず、利を求めず
予告から、命をめぐる感動の物語を期待して、公開2日目に鑑賞してきました。そこまで大きな感動はありませんでしたが、なかなか素敵な作品でした。鑑賞後の後味も悪くないです。
ストーリーは、江戸時代末期の福井藩で猛威を振るった疱瘡に対し、有効な治療法もなく無力感に苛まれていた町医者・笠原良策が、「種痘」という予防法が異国から伝わったことをある医者から聞き、それを学ぶために京都の蘭方医・日野鼎哉に師事し、私財をなげうって命懸けで種痘の苗を福井に持ち込み、妻・千穂とともに周囲の誤解を乗り越えて種痘を広げる姿を描くというもの。
人命に関わる医療現場で新たな治療法や薬を試すのは、優れた医学知識を持ち合わせていない者にとっては現代でも躊躇するものです。ましてや医学も科学の知識も乏しい江戸時代においてはなおさらです。加えて、良策の訴えに耳を貸さない奉行所、面子を保つために妨害工作を行う従来の漢方医たち、それに扇動される町の人たち等が立ちはだかり、まさに孤立無援です。
そんな中、私財をなげうって奮闘する良策の姿が熱いです。目の前で無慈悲に失われる命、それをどうすることもできずに見守り、悲しみに暮れる家族の姿を目にして、医者としての使命感に燃え、己のなすべきことに全力を注いだのでしょう。「名を求めず、利を求めず」を貫く姿勢が、本当に尊いです。そんな良策の思いをよく理解し、明るく支え続ける千穂の姿も眩しく映ります。
全体を通して予想を裏切るような展開はありませんが、雪の峠越えを命懸けでやり遂げた父親たちが、「お金をもらってやるような仕事ではない」と言って良策に報酬を返すシーンに思わず涙が滲みます。良策の熱い思いが、周囲の人の心を動かし、やがて藩をも動かしていく、終盤の大逆転に溜飲が下がります
こんな感じで心揺さぶられる話ではあるのですが、前半のゆったりテンポと起伏のなさが少々眠気を誘います。もう少しテンポを上げ、良策の苦労と苦悩をもっともっと感じさせてほしかったです。とはいえ、この事実を全く知らなかったので、とても勉強になりました。
主演は松坂桃李さんで、熱のこもった演技で良策を演じています。脇を固めるのは、芳根京子さん、三浦貴大さん、宇野祥平さん、坂東龍汰さん、矢島健一さん、益岡徹さん、山本學さん、吉岡秀隆さん、役所広司さんら。中でも、矢島さん、益岡さん、山本さんらベテラン勢が、短い出番でもしっかりと爪痕を残す、いい仕事を魅せています。
『劔岳 点の記』を想起させる雪山シーン
肝心な「克服」が如何にも軽い
鑑賞前は前情報を極力入れないようにしている私。ところが、先週に新宿ピカデリーを訪れた際、通常の予告編とは別の「本作の解説動画」をついつい観続けてしまい、大筋でどんな話かを知ってしまうという想定外。まぁ、松竹作品だし松竹直営映画館で売り込みするのは当然のことで、私のリスク対策不足ですね。と言うことで、劇場鑑賞は見送ろうかなとも考えたのですが、小泉堯史(監督・脚本)×上田正治(撮影)の最新作は観ておくべきかと考え直し新宿ピカデリーへ。上田さんの訃報の影響もあったのかと思いますが、10時50分からの回はなかなかの客入りです。
と言うことで、まず作品のルックは言うまでもなく素晴らしい。名匠・上田正治の撮影技術は自然の美しさ、過酷さ、壮大さが伝わりながら、どこをどう見ても紛れもなく時代劇映画に仕上がっていて、スクリーンを通してその世界観に引き込まれます。偉大なお仕事に感謝するとともに、謹んでお悔やみ申し上げます。
次に内容についてですが、、ふむ、やはりと言うかそりゃそうなんですが、数日前に知ったばかりの大筋通りの展開が続きます。ですが、史実がベースであるためそれはある程度当然のことで、重要なのはその見せ方。前作『峠 最後のサムライ』だって最後の最後まで「河井継之助の落とし前のつけ方」に目が離せなかったわけですから、今作でも「笠原良策の偉業」をどう見せてくれるのか集中して観続けます。
ところが、、、パターンとして乗り越えなければならない「困難」からの「克服」の繰り返し構造なのですが、肝心な「克服」が如何にも軽い。。中でも今作最大の「困難」である「峠越え」。猛吹雪の中、優に腰の辺りまで沈み込む雪をかき分けて峠を登っていくのですが、皆が倒れ込んで動けなくなるほどの状態から、助けが来た直後にシーンが切り替わると・・・「そんなわけない。。」と苦笑せざるを得ず、、もうこれは脳を空っぽにして全部受け入れましょうと開き直るしかない。
何なら、劇場も皆さん泣いている様子はなく、むしろ笑いがこぼれるシーンがチラホラ。原作未読のため、どこまでが映画オリジナルの脚色かは判らないものの、主にフィクション性が高い部分はそれまでのトーンと異なった思い切りのよい演出が。例えば「良策(松岡桃李)が悪漢に囲まれるシーン」の立ち合いと台詞は、そのあまりの変さに劇場の方々から笑い声。また良策の妻・千穂(芳根京子)も大活躍で、こちらも「質屋に押し入ってくる強盗」を見事に返り討ちした後の亭主とのやり取りがまた可笑しく、更に終盤でその伏線を回収する「男之助」はもうニコニコして観るしかありません。一応私の解釈としては、立派で真面目な笠原夫妻に対する「微笑ましいギャップ」を見せる意図かな、なんて。お茶目ですね。
とは言うものの、正直言って映画作品としては少々物足りないかな。。これだけの「困難」と「克服」を117分でまとめるのは「やや詰め込みすぎ」で、結果的にこの偉業を処理しきれてないように思います。イマイチ大変さが伝わりづらく、作品に対して思い入れること出来ずに残念。なお、映画は映画として(史実や原作との違いを理由に、低評価をつけるのは違うかと)、参考までにWikipediaを斜め読みしてみるだけでも、笠原良策の正に「人生をかけた」歴史が垣間見えますよ。
ちょっと物足りない
悪くもないけど、凄い面白いわけでもない。一番気になったのは役者さんのセリフがそのまま台本読んでるみたいで堅くて浮いているような気がして違和感が拭えなかったです。松坂さんや役所さん、またドラマ「ライオンの隠れ家」で主人公の弟役で名演が光った坂東さんは、役じゃなくちゃんとそこに生きている人たちという感じがしてさすが、自然体でとてもよかった。風景はとても風光明媚で美しかったですね。そこは大きな画面だからこそ映えていた。天然痘のワクチンを文字通り一命を賭して運び広げ人民に尽くしたことは素晴らしく、感銘を受けます。友人や蘭方医仲間、また知人などいつ裏切られるのかと、深読みして勘ぐって見ていましたが、そんな凝った人間ドラマは全くなく、品行方正な物語にちょっと物足りなさはあったかも。一緒に行った母は(70代)、大満足だったのでご年輩向けのお話しなのでしょうね。
脚本がいまひとつ。
ワクチンの真実
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