雪の花 ともに在りてのレビュー・感想・評価
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清々しい幕末医療人の生涯
吉村昭の「日本医家伝」の笠原良作の冒頭は次のように始まる。
「嘉永2年(1849年)11月19日、寒気のきびしい京都から大津方面に向かう奇妙な旅人の一団があった。
男5人、女4人計9名が4人の小児を背負い、あわただしく街道を東へと急いでいく。」
この一行の役割は、福井藩に痘苗(種痘の接種材料)を運ぶことである。
当時の確実な種痘の方法は、接種した小児の紅点を他の児童に植え付けることであった。ところが紅点は7日で消えてしまう。そこで福井へ向かう途中で他の児童に植え付けることにした。
京都から福井へ行くには難所の峠を越えなければならないが、既に雪の冬を迎えていた。
果たして痘苗は福井に辿りつけるか。映画はクライマックスを迎える。
幕府がお玉が池に「種痘所」を設置したのは9年も後の1858年である。(東京大学医学部の前身)
福井の町医者笠原良作の無私の心意気は多くの人に知ってもらいたい。
映像は美しく加古隆の音楽も印象的である・
授業
いまさらながらの歴史授業のような映画。
だが改めてあの時代からワクチンってあったのね。
と改めて気づかせてくれた良作だとは思います。
中高の歴史授業で見せたらいいんじゃないかな?
でも当時も今も民衆は同じなんだなと気づいた(笑)
紙芝居みたいでした
実話なんだろうか?
美しい映像と人々の物語
自分の利益も名声も求めず、ただ幼い命を守りたいという思いで、命がけで種痘を広めた医師の物語。実在した人物の話だからか、きれいにまとめすぎの感じがする。効果がわからない種痘の接種に我が子を差し出すか。雪の中の峠越えは、遭難してもおかしくなかった。それでも金を受け取らない人間がいるのだろうか。
芳根京子の太鼓のシーンは、入れなくても良かったのではないか。
スカスカのあらすじしかない映画
かなり期待したのだが、正直ガッカリだった。これ、時代劇としての体をなしていないんじゃないか?
セットでの画面の素晴らしさ、ロケの絵の色調の素晴らしさは特筆ものだし、よくロケ地を見つけて来たものだと関心する絵の良さだった。しかしそれ以外はペラッペラの作品。現代文のセリフといい役者のぎこちなさといい一体どうしてしまったのだろう?あたかもリハーサルを撮ったのではないかと思うほどだった。演出も冴えないのだが、何より脚本が酷い。吉村昭に申し訳ないのではないか?書き直し必至とみた。なんの感情移入もできない上っ面だけのあらすじを追うのみの映画でした。音楽もよいのにほんとに勿体ない。半分くらいで飽きて出ようかと思う薄っぺらさでした。残念。
心が清らかに
支えあう夫婦
希望の苗~意気天を衝く志
通常スクリーンで鑑賞。
原作は未読。
日本で初めて種痘を広めた医師・笠原良策の「意気天を衝く志」を描く。小泉堯史監督の前作「峠 最後のサムライ」がイマイチだったので心配したが杞憂に終わる面白さだった。
慣習に囚われず新知識を取り入れ、無私の心で邁進する姿に感銘を受けた。松坂桃李の眼差しが役に説得力を齎している。
旧態然とした意識を変えるのは難しい。新しい試みは必ず反発を生む。しかし歩みを止めなかった良策の働きはすごい。
困難に立ち向かう良策を支えた妻役の芳根京子のチャーミングな演技が良かった。太鼓を打つ姿も様になっていた。
命をかけたリレー
音楽が素晴らしかった。特に冒頭から流れる(EDでも。恐らくメインテーマ)曲は綺麗な旋律で自然の奥ゆかしさを感じる。
が、その中に当時の疱瘡(天然痘)の恐ろしさや対する主人公の無力感・焦燥感、切なさを孕んでいてそれが最後まで効いている。
笠原良策(主人公)の真っ直ぐで清廉なキャラクターが松坂桃李にベストマッチしていて素晴らしかった。
というかキャスティングが全般的にハマっていて違和感のある人は特段無かった。
疱瘡を前に何も出来ず医者として無力さを感じていた主人公。劇中でも描かれていた様に、当時はその知恵自体にアクセスすることすら大きな労力、価値観の転換が必要とされる。
その知恵を身につけたあともその対処法を実行に移すことは権力構造上さらに無理難題に近いことだった。
どこまで史実に忠実か不明だが、当時懸命に動いた方々に拍手。
当然だが近年流行している感染症に関連付けざるを得ない。
それを踏まえ、疱瘡の予防(種痘)を人生の使命と覚悟を決めて懸命に取り組む姿を描いたこの作品は、医学を目指す人またその他全ての大人が初心に立ち返るために見る価値がある。
全体的に非常に分かりやすく、またむしろわざとらしく勧善懲悪的尚且つ登場人物のキャラクター的な描写もあり、他のレビューにも書いてあるように子供達にも情操教育としても見ていただきたいと思える作品だった。
気になった点
・台詞回しの一言が長い。長ければ長いほど会話に違和感が生まれるし、演技の技量が顕著に現れてくる。誰とは言わないが乗り切れていないというか、荷が重い演技をさせられていると感じるキャラクターがいた。
・酷なことをいうが種痘の際は肌に傷をつけるはずで、大きい子はまだしも赤ん坊が泣き出さずケロンとしているのは無理があるのでは。ただ、なんとかタイミングを見て撮影するというのも難しいか。
・妻の夫には隠しているキャラクター性。先に挙げた様に子供達が見る前提であれば大正解に思えるけども。
文字通り「子供たちの命をかけた」リレー。物語ではあるが無事成功してくれて良かった。
あと、安易に「藩主の松平春嶽が出てこない」というのが主人公を英雄として過剰に祭り上げることはせず、作り物感を抑えられることで
逆にそれがリアリティを生み、主人公の功績を感じることができたので良かった。
あばたもえくぼ
「いいか?人生を不足・不足と捉え、思い焦らすことこそ真の医者の道である」
吉村昭の同名小説を小泉堯史監督・松坂桃李主演で映像化。江戸時代末期、大流行した疱瘡(天然痘)に立ち向かい、種痘を拡めた福井藩の町医者・笠原良策の姿を描く。
疱瘡(天然痘)は、人類史上唯一根絶に成功した感染症である。古くからその記述は残されており、コレラ・ペストと共に死の病として恐れられた。奇跡的に快復しても瘢痕(あばた)が残り、特に女性が感染した場合は結婚を避けられたり村八分にされることも珍しくなかった。
転機となったのは18世紀末、英国の医学者ジェンナーが「牛飼いだけが何故か天然痘に感染しない」ことに着目し、牛もまた天然痘に感染することを発見。さらに牛を媒介して牛飼いも天然痘に感染はしているが、軽度の症状だけで済んでいたことを突き止めた。ここから天然痘に感染した牛の膿を人体に植え付ける「種痘」を考案し、現代のワクチンや予防接種という考え方の元となっている。しかし宗教観やら倫理観やらで実績の割には普及には時間がかかった。加えて日本の場合は鎖国の影響もあり、理論としてはシーボルト門下の蘭方医を主として伝えられてはいたが、種痘を手に入れることは不可能だった。そこで福井藩主にして将軍家の血筋である松平春嶽に種痘の普及を働きかけたのが今回の主人公・笠原良策である。
物語の展開はやや駆け足で、演技も現代的でもう少し抑えてほしかったがそれは高望みというべきか。その代わり映像はとても美しく古き良き日本の四季折々が映し出される。医療モノにありがちなグロ描写もそこまでないので観やすい。また、種痘がどのように行われるかも丹念に描かれており、その過程で題名の意味をようやく理解した。
「意思あるところに道あり」という歴史の描き方(特に幕末)は個人的にはあまり好きではなく、現在歴史に名を残した人達というのは「タイミングに気付いた人」というのが持論で、笠原良策に関してもそうだと思っている。まず福井という地理が絶妙だ。蘭方医の大勢いる京からは街道によって程近い(古くから鯖街道と呼ばれるくらいで)。そして時の藩主が松平春嶽という権威と知性を兼ね備えた人物だったことも大きい。ここに乗っかれた人物が笠原良策をおいて他にいなかった点は非常に大きいだろう。
種痘を実践した当時も「牛になってしまう」などの流言が起こった。近年も世界的な感染症で人類は大打撃を受けた。その度に流言が駆け巡った。一方で聞こえのいい似非医学の被害も起こっている。仮に当時の福井藩に自分が存在したとして、果たして笠原医師の提言を受け入れられただろうか?受け入れられるといいんだけどね、多分アレルギー起こしたんだろうな。そんなことを考えた。
題材はとてもよいのに・・・とっても薄味の映画
取り上げた題材はとても素晴らしく、現代を生きる僕達にも有益なので、ぜひ皆さんに観ていただきたい、と切に祈りたくなります。反ワクチンなどのデマが広く世界を駆け巡るなど、人類はなかなか進化していないな、とあらためて感じます。さらに僕は仕事柄、自身の気持ちを今一度正す意味でも観なくてはいけない、という使命感すら持って観に行きました。確かにとっても良い題材で内容なのですが・・・。
一方、一映画フアンとしての感想は、とっっっても薄味の映画、名優も出演しているのに、正直、とてもつまらない映画の範疇です。監督がわざとこのような脚本、撮影方法にしたとすれば、それはそれで仕方ないのかもしれませんが、楽しめる映画を撮る、という観点からすると、どういうつもりでこのような映画にしたのか問いただしたいです。土曜の夕方というのにとっても空いていましたが、それもやむなしでしょうか。面白い映画にしてたくさんの人にみてもらうべき題材なのに、とほほ・・・。
同じく幕末期に種痘を普及させようと努力する医師たちの姿を描いたもので、最も僕が面白く感じ、かつ心を打たれたのは、手塚治虫先生の「陽だまりの樹」です。傑作なので、ぜひ皆さんも読んでください!
伝わる
人々を救いたい。揺るぎない信念と覚悟を持った人間の見事さが鮮やかです
冒頭からこの映画で描かれる病の怖さを見せられて、一気に引き込まれてしまいました。
まだ誰も手を付けられない難業。しかし多くの人たちを病から守るためにどうしてもやり遂げなければならない難業。その困難な事柄に覚悟を持って臨む笠原良策の姿が鮮烈です。
そして支える妻・千穂と良策の師と数々の仲間たち。その存在もまた事を成す大きな力となりました。
揺るぎない信念を持ち、私財を投げ打って事に当たる姿、そして支えてくれる妻・千穂との愛に溢れる夫婦の強さに心打たれます。
種痘を手に入れるため奔走する仲間たち、そして吹雪の峠越えなどなど力を貸してくれた様々な人たちとの絆を余すところなく描き感動的でした。
松坂桃李さん、芳根京子さんの夫婦が素晴らしい。二人とも無法者相手の立ち回りもお見事でした。
脇も役所広司さん、吉岡秀隆さんなど芸達者な面々がキャスティングされていて豪華でした。その中ではつを演じた三木理紗子ちゃんの存在感が深く印象に残りました。
吹雪の峠越えの時に助っ人を頼んだ人達に先に行ってもらったのは何故だったのでしょうか?始めから一緒に峠を越えてもらった方が安全だったのではと思ったのですが。
名を求めず利を求めずの姿が美しく、命の尊さを改めて嚙み締めます。
いい映画を見ました
プロジェクトX
今の時代にも、通じる話
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