「命をかけたリレー」雪の花 ともに在りて えさんの映画レビュー(感想・評価)
命をかけたリレー
音楽が素晴らしかった。特に冒頭から流れる(EDでも。恐らくメインテーマ)曲は綺麗な旋律で自然の奥ゆかしさを感じる。
が、その中に当時の疱瘡(天然痘)の恐ろしさや対する主人公の無力感・焦燥感、切なさを孕んでいてそれが最後まで効いている。
笠原良策(主人公)の真っ直ぐで清廉なキャラクターが松坂桃李にベストマッチしていて素晴らしかった。
というかキャスティングが全般的にハマっていて違和感のある人は特段無かった。
疱瘡を前に何も出来ず医者として無力さを感じていた主人公。劇中でも描かれていた様に、当時はその知恵自体にアクセスすることすら大きな労力、価値観の転換が必要とされる。
その知恵を身につけたあともその対処法を実行に移すことは権力構造上さらに無理難題に近いことだった。
どこまで史実に忠実か不明だが、当時懸命に動いた方々に拍手。
当然だが近年流行している感染症に関連付けざるを得ない。
それを踏まえ、疱瘡の予防(種痘)を人生の使命と覚悟を決めて懸命に取り組む姿を描いたこの作品は、医学を目指す人またその他全ての大人が初心に立ち返るために見る価値がある。
全体的に非常に分かりやすく、またむしろわざとらしく勧善懲悪的尚且つ登場人物のキャラクター的な描写もあり、他のレビューにも書いてあるように子供達にも情操教育としても見ていただきたいと思える作品だった。
気になった点
・台詞回しの一言が長い。長ければ長いほど会話に違和感が生まれるし、演技の技量が顕著に現れてくる。誰とは言わないが乗り切れていないというか、荷が重い演技をさせられていると感じるキャラクターがいた。
・酷なことをいうが種痘の際は肌に傷をつけるはずで、大きい子はまだしも赤ん坊が泣き出さずケロンとしているのは無理があるのでは。ただ、なんとかタイミングを見て撮影するというのも難しいか。
・妻の夫には隠しているキャラクター性。先に挙げた様に子供達が見る前提であれば大正解に思えるけども。
文字通り「子供たちの命をかけた」リレー。物語ではあるが無事成功してくれて良かった。
あと、安易に「藩主の松平春嶽が出てこない」というのが主人公を英雄として過剰に祭り上げることはせず、作り物感を抑えられることで
逆にそれがリアリティを生み、主人公の功績を感じることができたので良かった。
音楽についてアルバムを見るとオープニングとエンディングではそれぞれ雪の花〜序、雪の花〜結と別曲とされていた。劇中に流れるものもそれぞれ雪の花〜と副題?が添えられアレンジが違った。