「無私の心で美しく生きる人々を、ただ静かに真面目に描く。今、こういう映画が必要。」雪の花 ともに在りて ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
無私の心で美しく生きる人々を、ただ静かに真面目に描く。今、こういう映画が必要。
江戸時代末期、天然痘の予防に尽力した実在の町医者、笠原良策とその偉業を描く。
「身命をかけて人のために尽くす人」を、ただひたすら真っ直ぐに真面目に描いた松竹時代劇。
余計な飾りも、けれんもない。中途半端な遊びも内輪受けも無い。
芸人枠も吉本も旧ジャニーズやアイドルグループもいない、ただゆっくりとじっくりと観れる映画は珍しい。
やはり真面目な印象の強い松坂桃李は、この題材にぴったり。
時代劇で医師と言えば「赤ひげ」から果ては「破れ傘刀舟悪人狩り」まで、本作もご多分に漏れず、文武両道の主人公だが、ここでも控えめで、やり過ぎないのが本作。
そして、良作の妻を演じた芳根京子の凛としたたたずまい。
夫を支えながらも只尽くすのではなく、夫を通じて自らも主張しているように感じられる。
男勝りの殺陣に太鼓のシーンも微笑ましい。
彼が蘭学を学んだ師を演じる役所広司もまた、ただ登場するだけで納得できる圧倒的な存在感と、松坂桃李との師弟関係もまた実に自然。
蘭方医役の吉岡秀隆の穏やかさ、協力する旅籠の主人、山本學の出演もうれしい。
ちゃんと疱瘡の流行を懸念している幕府、真っ当な裁きをする幕府福井藩の家老、種痘の苗を命がけで運ぶ町人すら「これは金をもらってやる仕事ではない」と金を突き返す。
嘆願書を受け入れない役人や、旧来の漢方医、小悪党連中以外は、皆、「無私の心」「美しい生き方」をしているのが心地よい。
エンディングもまた静かに音楽が流れ締めくくる。
どっかのタイアップのJPOPなんて流さない、最後まで信用できる映画で実に良かった。
ITOYAさん、共感&コメントをありがとうございます!本当に美しく清々しい作品でしたよね。松坂桃李の日曜劇場ドラマとの役のギャップもすごいなと思いながら鑑賞しました。
私も50代ジジババですが、遥かに年上のセンパイたちの自由な感じのマナーの悪さは、宮崎ならではなのかもしれません。