愛に乱暴のレビュー・感想・評価
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巡る因果に走りだす狂気
話の大筋をごく端的に言えば、不倫の因果応報物語、である。
原作を読んだ時は、小説の構造は面白くて文章は読みやすかったものの、桃子の性格は何だか受け付けないし不倫の話がもやもやと続くしで、正直しんどかった。
ところが映画では、2時間に収めるための選択と集中で随分テンポがよくなっており、そのスピード感が(あくまで原作と比較しての相対的なものだが)不倫話のしんどさを(ある程度)吹き飛ばした。
何と言っても江口のりこが桃子にぴったり。ああ確かに桃子はこうだなと納得。幸せを目指してどこか空回りしてて、ちょっと空気が読めなくて、密かに直情的な面があって。基本的には、突然叫びだすような邦画の感情表現は苦手なのだが、本作に関しては原作の桃子のイメージがそういう方向だったので気にならなかった。
小泉孝太郎もなかなかの適役。以前「まともじゃないのは君も一緒」でのキャスティングでも思ったが、表面だけ好人物で中身は胡散臭い、疑わしい奴という役柄が映える。
やむなく削られて残念な部分もなくはないが、見応えは江口のりこでカバーされてお釣りがくる。この物語の芯は桃子の感情の疾走であり、そこはきちんと描かれているので、トータルで見れば原作と比べても遜色はないように思えた。
母屋の義母と、同じ敷地内の別宅に住む桃子、彼女の夫の真守。彼らの関係には当初からどこか噛み合わなさがある。桃子が真守に話しかける様子は一方的、一方で真守は話しかけられても上の空。義母と桃子の距離感には、嫁姑にありがちなぎこちなさがある。
実は真守には前妻がおり、桃子と不倫した末彼女の妊娠をきっかけに離婚し、桃子と入籍した。彼女は入籍前に流産してしまっていたが、そのことを入籍まで真守に打ち明けられなかった。そのことが義母の胸の奥にはしこりとなって、桃子には心の傷となって残った。
そして真守は、かつての桃子との関係と全く同じことを、別の女性と繰り返すことになる。
上記のような夫婦のなれそめは、物語では終盤まで秘められており、桃子が床下から聞いた真守たち親子の会話と、折々にスマホで見ていたSNSの妊婦アカウントの内容から明らかになる。そのSNSのポストは、過去の桃子自身がアップしたものだった(アップされた自撮り写真に写ったワンピースが桃子の実家のクローゼットにあった)。
真守から「彼女と話をしてほしい」と言われても、真守が自分と別れたいと思っているなどとは想像もしていなかった桃子は、真守の本心を理解してからだんだんとおかしくなっていく。
彼女の行動に、真守親子と同じようにドン引きする気持ちと、そこから伝わってくる気持ちだけはやたら生々しく、好悪の外で何となく理解できてしまう気持ちと、その両方を感じた。確かに、チェーンソーで切ってはいけないものを切るのは気持ちよさそうと思ってしまった(やらないけど!)。
追い詰められる桃子のつらさはわかる、なんなら逆上してつい突飛な行動に走る気持ちもわかる、あの辺の感情は全てリアルだ。でも桃子も過去に不倫をしたことを思うと同情にブレーキがかかる。どっちつかずの気持ちを抱えつつも、狂気を加速させる桃子からただ目を離せずにいた。
彼女は「わざとおかしいふりをしてあげている」と言っていたが、「徒然草」にあるように、狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり、だ。
ラスト近くで、彼女が床下に掘った穴から缶に入ったベビー服が出てきたのは原作とは違う展開だ。どういう経緯で埋められたものか作中で説明はないが、個人的には前妻が埋めたと考えても面白い気がした(原作では別の人間が埋めた違うものが見つかるので、その展開に引っ張られた連想かも知れない)。
この発見によって桃子はようやく、自身に因果が巡ってきたことを自覚したと思いたい。
(以下で原作の詳細について触れます)
原作からの改変で物語の印象に一番大きな影響を与えたものは、桃子の見ていたSNSだ。原作小説では、誰かの書いた日記として描写される。
上下巻から成る原作は章立てがされており、各章は ①誰かの日記 ②三人称視点での桃子の描写 ③桃子の日記 という構成で統一されている。
上巻では、①の書き手の名前は明らかにはされないながらも、②③との繋がりから見て真守の不倫相手が書いているのだろうと思わせる描写になっている。だがこれは叙述トリックで、①は8年前の真守との入籍前後の桃子自身の日記であることが、下巻の冒頭で判明する。
8年前の桃子は日記で姑を「お母様」と呼び、自分を受け入れてくれたことに感謝し、自分の置かれた状況を精一杯肯定的に捉えようとしていた。
だが、③の日記で現在の桃子は姑を「照子」と呼び捨てにし、家族への猜疑心もあけすけに書く。そのコントラストは原作ならではで、同時に桃子が前妻と同じ仕打ちを今まさに受けているということも浮き彫りになる。
他にもいくつかエピソードの省略や簡略化があるが、どれも人間不信になりそうな話ばかりなので、かえってこの映画くらいのボリュームの方が不快指数が過剰にならずよいのではと思ってしまった(吉田修一先生ごめんなさい)。
ゴミ捨て場のカラスがなかなかいい演技をしているなと思ったら、エンドロールにカラス担当がクレジットされていて感心した。
ハッピーラッキーこんにちはベイビー。
本格派復讐劇かと思いきや、全員加害者。日常が狂ったんじゃなく元々狂っていたという始末。
たがが外れた途端「切っても支障がない柱」に対する愛と憎しみが溢れ出す様は圧巻。前半のジメジメした丁寧な暮らしごっこが効いている。
スペアリブのハーブ焼きと白飯は合わないと思う。
しかしまあ略奪の過去があれど、元加害者現被害者の自立を表現する為にここまで痛めつける必要はあったのだろうか?
男は良いよな、出すだけだから。
ヒロインの日常への再起のきっかけがあまりに呆気なさすぎる
吉田修一の原作映画はだいたいウケ狙いが露骨で、スキャンダラスな事件を短絡的につなぎ合わせるぶっ飛んだ作品が多いのだが、本作はそれらとかなり趣の違う映画である。
恐らくは原作に書かれている細部が相当省かれているので、意味やニュアンスがいま一つ定かでないのだが、小生はヒロインの心理を次のように受け止めた。
ヒロインは表面的には何不自由ない家庭の主婦で、暇を見てはカルチャー教室で講師を務めて小遣い稼ぎできる才能もある。
ところが内実は、旦那にろくに相手にされず、姑ともごく上っ面の付き合いだけ。自分も何か気まずいことがあると、適当にウソで誤魔化す毎日。教室を運営する会社は仕事ぶりを評価してくれるが、実はこれもリップサービスに過ぎない。
こうして中身は問題山積なのに、表面は満ち足りて見える日常が淡々と過ぎていく。ところがある日突然、旦那が「彼女に会ってくれないか」と言い出したことで、すべてはひっくり返ってしまうのである。
旦那は別の女性と不倫の末に、すでに妊娠までさせている。彼女と会ったヒロインは、妊娠の事実の前に敗北を認めざるを得ない。姑は息子を責めながらも、ヒロインを変人扱いするばかり。会社は彼女の講座を打ち切ってしまうし、実家に戻れば主役は義妹の子供たちに移っている。ヒロインは突然、どこにも居場所のない非日常の世界に真っ逆さまに転落してしまった。
アイデンティティを喪失した彼女がしたことは、チェーンソーで家の床板をくり抜き、かつて自分が妊娠した際に買ったが、流産したので地中に埋めた赤ん坊用の衣類を、掘り返し、自己の妊娠能力を再確認することだった。
しかし、それも無駄な努力に終わる。必死にプライドを取り戻そうとする彼女に旦那が発した言葉は、「赤ん坊とか関係ない。お前といるとただ退屈だ。お前が面白がれば面白がるほど、俺は退屈になる」と、ほとんど存在の全否定だったのである。
もはやヒロインに日常はない。結婚生活の思い出の品々をゴミ捨て場に持って行くと、そこは放火によりメラメラ燃えている。彼女は立ち竦み、それにすっかり惹きつけられてしまう。日常のゴミを燃やし尽くす炎は、彼女の願望そのものだったからだ。
不審を抱いた警官が声をかけた時、彼女はあたかも自分が放火したかのように駆け出して、行きつけのホームセンターの倉庫に逃げ込む。そして、そこで外国人の青年店員から思わぬひと言を掛けられる。
「いつもゴミ捨て場、キレイにしてくれてアリガト」
その瞬間、ヒロインに日常とプライドが戻ってきて、彼女は泣き崩れる。
ラストは、プライドを取り戻したヒロインが、恐らくは財産分与名目で旦那と姑を自宅から追い出し、離れを取り壊して母屋で寛いでいる姿で終わる。
ひと言で言えば家庭の崩壊とそこからの再起、ということになろう。吉田作品の中ではかなりマトモな内容だし、崩壊の過程で日常を失っていくヒロインの心理が泣かせどころだろうか。ただ、そこからの再起のきっかけが、あまりに呆気なさ過ぎて、「え、これで終わり??」という感想を禁じ得なかった。
ありがとう
この「離れ」というのはいつ建てられたものなんだろう。細かなところを注視しなければならないと解説に書いてあったのでチェックしまくり・・・冒頭3分で疑問が湧き起こった。桃子とマモルが住む離れの玄関の柱には背比べ傷があった。ということは、マモルが幼い頃から住んでいたことになるのよね。そして夫の電気カミソリの匂いチェック・・・
猫のぴーちゃんや不倫アカウントについては皆さんのレビューの方が参考になるので敢えて書かないけど、「ありがとう」という感謝の言葉はホームセンター店員が発するまで桃子と義母以外は誰も言わなかった。感謝されたいがために丁寧な暮らしを続けてきたわけじゃないのだろうけど、あまりにも理不尽。「マモルってお礼言わないよね」の台詞が物語っている。今の世の中に対する風刺も入ってるのだろうか。
リフォームと断捨離。これは桃子の人生そのもののメタファーなのだろう。マモルにとっては女を捨てることが当てはまるのかもしれない。中盤の大きな展開としては不倫の告白・離婚問題なのだろうけど、さらに桃子自身も略奪愛だったという過去も顕わになる。そしてSNSの写真に映ったドレスが実家のクローゼットに・・・
残念なのはチェーンソーが単に床板を切るためだけだったということ。ホラーと思わせておいてホラーじゃない。人格が崩れて狂気の沙汰を見せつけてくれるものの、ちょっと物足りない。せめてスイカで何かをしてくれるとか。江口のりこの怪演によって何とか最後まで見ることができました。最後は母屋までゲットしたのは義母の優しさだったのか・・・?
桃子が何度も口ずさんでいたのはエリック・サティの「Je Te Veux」。鼻歌のトーンも場面によって違っているのが面白かった。
考えなければいけない?
一言で言うと難しい作品。
かな?
ぶっちゃけあまり刺さらなかったんですよ。
夫婦の会話の時に旦那が適当に相槌を打つだけ。
そのすきに「あなたってお礼言わないよね」(曖昧)
と、投げかけるも無反応。
これだけで夫婦の温度はしっかり表現されてる。
で、まあ案の定浮気していてさらには相手は妊娠。
後々わかるが本妻も妊娠によって既婚だった小泉を
略奪。
しかし、実は流産していた。
その後不妊。
妊娠している相手の家に押しかけ言いたいこと言って帰る為外に出るも
不穏な物音で心配になり急いで相手の家へ...
江口の何とも言えない複雑な感情をしっかり描いていた。
いつも利用しているゴミステーションが放火され
直後に現場で警官と鉢合わせ。
放火したわけでもないのに逃走。
逃げ込んだホームセンターのバックヤードで
ゴミステーションの近くに住んでるアジア系?の青年から
お礼を言われ涙ながらにお礼にお礼を言う。
そこで、江口はとてつもない幸せを望んでいたわけでなく
平凡でも笑いのある環境を望んでいたのかな?と...
役どころとして江口のりこはピッタリで
顔で目でしっかりがっつり演技をしていた。
が、しかし。
腑に落ちない。
小泉の子を宿した女性は馬場ふみかなのだ!!!!!!!!!
江口と小泉の結婚のきっかけは不倫の末の妊娠。
小泉よ!ふみかたんと付き合えるほどの解消がありながら
何故江口に手を出した!!!!!
それがお前の不幸の始まりだ!!!!
この〇〇〇んがぁ!
と、作品のメッセージ性を無視した感情が...www
風吹ジュンは可愛いおばあちゃんでした(見た目の話)
まとめ
いまいち入り込めない作品でした。
多分だけど頭のいい人が観るといろんなことに気付けるのかな?
自分的にはちょっと残念でした。
ぴーちゃん、ぴーちゃん、ももこー!
おしゃれな石鹸講座の人気講師が毎日探す居なくなった猫のぴーちゃんはまるでちゅうぶらりんの自分だ
挨拶すらろくに返さない青年
散らかるゴミを無視できる人々
婦人科の医師の物言い
軽くはぐらかしていく元上司
干渉するだけの義母
隣りにいるのにいないような夫
本当にリフォームしたいのは、喉が揺れるほどのため息をついている自分
欠けたカップで飲む茶のやるせない味に似たストレスに埋没されていく自分
桃子は今日もごくりとのみ干し〝よい人でもある夫〟の内緒を感じるたび、昔のSNSを見返して「特技になった平気のまね」でやり過ごせる〝よい嫁でもある私〟を信じ奮い立たせる
だけど幸せのアイコンは本当の自分を知っている
壊れていく心に
壊れていくスイッチ
コントロールはもう不能
チェンソーは〝私〟の封印を破りだした
走る走る
この火種は私ではないから
裸足で駆ける夜道を
自分が決めた
息をきらして辿り着く場所まで
なんとなく不審に感じていた青年も
火種なんかではなくて
心の傷のにおいにサンダルをさし出せる
やさしい人だった
そんな彼がかけた言葉の先に
はからずも
ずっと迷子になっていた自分をみつけた
離れが解体されていくのをスッキリ味のアイスがやけに似合う桃子がみている
そして、無表情のまま立ち上がると猫のようにするりと、使い慣れたアイロンが置いてある部屋へと戻っていった
もう知らない香りをつけたワイシャツのシワを伸ばさないでもいい
信頼されてない人に一方通行の気遣いをし続けなくていい
ふわっと揺れたカーテンの向こうで桃子には自分のための今日が始まっているのだな
この愛に乱暴な日々はおしまいにして
江口さんに脱帽しきり!
小泉さんもびっくりするほどでした。
猫の名前訂正🐈
江口のりこ、最高
善人の主人公桃子。
自分に興味がなさそうな夫。
不倫してそうだな、と気づきながらも夫と母屋に住む義理の母を慮りながら生きる桃子。
ゴミ捨て場に散らかしゴミがあれば、頼まれてもいないのに掃除をして、誰からも感謝されないのに、毎回ちゃんと掃除する。
ありがとうって言える環境なのに、感謝しない夫と義理の母。
スリッパでひっぱたきたくなる2人だけど、徐々に明かされていく過去。
夫の不倫相手の寝取り&妊娠ツイートを読んでるのかと思いきや、ちゃんと伏線で桃子の過去のツイートだったんかい。クローゼットにもツイートに写ってた服があったし、しかも確認のためにまたツイートを映してくれる観客への丁寧な優しさよ。
善人の中の狂気は、朝ごはんのパンを食べながら夫にパンを焼くかを聞くシーンの鏡の使い方でとっても面白く表現されてて唸ったよね。鏡の曲がりを利用して能面のような表情を写し出すの、すご。
ぴーちゃんも猫かと思いきや、猫じゃない。
夫の「首輪しながら捨てられたら最悪だね」って言う何気ない一言が、結婚しながら捨てられたら最悪だね、と置き換えできる一言をお前が言うか…!!!!というツッコミを全員がするであろうシーン。
最後の最後に、お前それやったの2回目かよ…!またもや全員が心の中で再ツッコミをしたであろう。
小説ではもっと深い事情がありそう。読んだらまた違う感情が芽生えそうだな。
あのお家、ほんとに取り壊す予定の民家を借りて、その取り壊しを先延ばしにしてもらって解体も本当にやった、っていう話を日曜天国のゲストで出てた江口さんが話してました。
面白くは観たのですが、この主人公の描写で良かったのか?
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
全体としては面白く観ました。
しかし今作は以下の点が気になりました。
この映画『愛に乱暴』の主人公・初瀬桃子(江口のりこさん)は、夫から愛情を受けておらず、夫への性の求めも拒否され、夫に浮気もされ浮気相手に子供が出来たと知らされ、夫から浮気相手と共に別れを告げられ、夫の母親(姑)との関係も上手く行ってるとは言えず、働いていた元居た会社の関連の石鹸教室も閉鎖され、元の会社の上司からも軽く扱われ、挙句は流産していたという過去まで明かされます。
つまり、主人公・初瀬桃子は、どこまでも本来は同情され共感され、一方で主人公の周りに対して怒りを覚える境遇だったと思われます。
しかしながら、逆に見事に観ている観客としては、主人公・初瀬桃子に対してほぼ全く共感が湧いてこない映画の描き方になっているのです。
一般的に私達は人間関係において、相手との関係を最低限あるいは最大限、良好に保とうと相手に対して心配りや配慮や敬意を持ちながら、一方でこちらの想いや主張を相手の顔を潰さない範囲で伝えようとします。
一方で私達は、相手にきちんと相手への心配りや配慮や敬意が通じるように、相手の反応も見ながらそのやり方に関して、その都度修正も行います。
また、こちらの想いや主張の伝え方も、その都度修正を行います。
その上一方で、最善をこちらが尽くしたとしても、人間関係において全てが満点の関係にはならないことも、私達は経験上、知っています。
すると以上の私達の人間関係における経験則からすると、この映画『愛に乱暴』の主人公・初瀬桃子は、余りにも一方的で自己中心的な人物だと思われてくるのです。
主人公・初瀬桃子は、夫の初瀬真守(小泉孝太郎さん)との関係が冷え切っているにもかかわらず、一方的にリフォームの提案をし続けたり、性的な関係を求めたりします。
夫の母親(姑)の初瀬照子(風吹ジュンさん)とは、ゴミ捨ての助けなど関係性を築こうとしていますが、欲しくない魚の差し入れなどに対して自分の気持ちを伝えられず、一方で例えば冷や麦を夜遅くに持って行こうとしたり、初瀬照子の事を考えず行動してしまっています。
主人公・初瀬桃子が働いている、元居た会社の関連の手作り石鹸教室に関しても、一方的に教室の拡張を以前の上司の鰐淵(斉藤陽一郎さん)に提案し続けたり、以前の上司・鰐淵への差し入れも、一つ覚えのように甘納豆を差し入れし続けます。
夫・初瀬真守の浮気相手であり、夫との間に子供が出来て夫と共に別れて欲しいと頭を下げる(教員の)三宅奈央(馬場ふみかさん)に対しては、もちろん本来であれば主人公・初瀬桃子は一方的に2人に対して非難して良い立場ではあります。
しかしながら、それまでの一方的な初瀬桃子の描写によって、(夫の母・初瀬照子の)庭のスイカを浮気相手の部屋まで行って机に叩きつけるそのやり方含めて、主人公・初瀬桃子に対してほぼ全く共感する感情は湧いてこない描き方になっています。
しかも、主人公・初瀬桃子が実家に持っていた(SNSで映っていたのと同じ)スカートの存在から、SNSで見ていた書き込みは、過去の初瀬桃子自身のものだと分かり、自身もかつて夫・初瀬真守と不倫をし、流産したことを隠して子供が出来たことを材料に、夫・初瀬真守を前の妻から略奪したことが、映画の最終盤で分かります。
つまり、夫との間に子供が出来たという浮気相手・三宅奈央の姿は、主人公・初瀬桃子からすれば過去の自分自身の姿であって、観客からは同情する感情はこの事実だけでもかなり低くなるのです。
このように、主人公・初瀬桃子は一方的で独善的な女性として、映画の中で初めから最後まで描かれていたと思われました。
もちろん、このような一方的で独善的な女性を描いた作品として今作は面白さがあったとは思われます。
しかしながら、個人的には、この女性描写のやり方は、私達が表層的ステレオタイプ的に嫌な女性に感じる内容と、一致しているように一方では感じました。
つまり、”ああこんな嫌な女性っているよね”との男性側からの表層理解とそっくりそのままの一方的で独善的な年配女性への描き方になっていると思われたのです。
私はこの映画の主人公・初瀬桃子の描き方に面白さは感じながらも、男性側からの偏見に満ち溢れた描き方になってはいないか?との疑念を一方では持ちました。
今回の評価は、その疑念も含めての点数になりました。
ただ、観客からはほとんど同情もされ辛い主人公・初瀬桃子を、このまま演じ切った江口のりこさんの執念は、映画に焼き付きそれだけでも濃厚な作品にこの映画『愛に乱暴』を持ち上げていると、一方で僭越ながら思わされました。
ありがとうの一言
誰が悪なのか、何が正しいのか分からない不穏な状態が淡々と流れていく。
ある意味真面目な女性が今までに無い穴に陥っていく姿は凄まじい。
それも、そのはず。
愛情が薄れて来てる不倫旦那との生活。
夫に溺愛の義母。
息を吐くように出す元上司。
妊娠した愛人。
昔から溜め込んでいた怒りが爆発して狂人に変貌。
チェーンソーを見て笑う姿は狂気だが
演技が上手いから見とれてしまう。
あの土の中に色んな想いを埋めていたとは……。
心のこもった『ありがとう』で救われる
時もあると思う。
押し殺してきた心の叫び
桃子は丁寧な暮らしを実践し、食事にも手を抜かず、普段から体に良いものを摂るように心がけている。服装も、麻や綿の天然素材中心で、シンプルだけどおしゃれです。あのエプロン素敵、私も欲しいですが、自分が買ったら汚したくないから使えないかも。これで家も綺麗なら、もう『クロワッサン』に載っていてもおかしくないです。
それでもなぜか母屋の姑はよそよそしく、たまにチクチクと嫌味を言い、夫の真守は話しかけてもいつも上の空。頑張りは空回りして、少しずつ追い詰められていく……
本作は、桃子に共感できる部分があるか、自業自得と受け取るかで好みが分かれそうです。
私は丁寧でもお洒落でもないし、不倫は許せませんが、本作をとても気に入りました。
猫のぴーちゃんは居なくなったのではなく、初めから居なかった。というか、桃子自身が傷ついた野良猫でした。自分の居場所を少しでも居心地よくしようと努力したのに、コツコツ築き上げたものは不安定であっけなく崩れようとしていました。
上質な小物たちは鎧のようなものです。「おかしくなった振りをしないと本当におかしくなりそうだから」というのは本音です。桃子の心は悲鳴を上げていました。「ちゃんと私を見て!」
結婚前に話せなかったあの事は、結婚できなくなるからというだけでなく、その事を口に出してしまうと、それが事実として確定して向き合わざるを得ないから、言い出せなかったというのもあったでしょう。姑が夫の遺品をなかなか捨てられなかったのと通じるところがあると感じました。
姑は、桃子の事が嫌いだったのですが、そんな桃子の辛さを最後は理解したのでしょう。
クズ夫のことは忘れ、姑とは和解したのだろうと、私は思います。
重たい内容でしたが、後味は悪くないです。
江口のり子におんぶに抱っこ
主演の江口のり子の風貌と得意な役がこの映画の主人公に合っていることが作品の出来をよくしている。
主題が不倫ネタで、小泉孝太郎が不倫する夫で役から明るい顔でない全然違う孝太郎になっていて誰でしょう、この人って感じでした。
不倫に対してこの主人公かサバサバしていて、慣れたような口ぶりは、実は自分も不倫をして結婚していたことが分かり、納得させられるけど話として好きじゃない。
妊娠していると不倫相手に言われたら、妊娠は嘘じゃないのと食ってかかるのも嫌な感じで確かに乱暴な話で愛に乱暴なんだというタイトルを回収してもつまらない話でした。
因果応報
夫には浮気され、子供が欲しいけどできず、形だけの姑との関係、放火犯の徘徊、猫の行方不明等々、彼女を取り巻く辛い環境なのかと思いきや、自分が前妻から夫を奪っていたと言う過去が。因果応報でしょうか。したたかに生きて行くしか無いですね。
ジェイソンに並ぶチェーンソーの使い手‼️
これは一人の主婦の人格崩壊ムービー‼️ヒロイン・桃子に振りかかる義母との微妙な関係によるストレス、愛猫が行方不明になったり、近所で頻発するゴミ捨て場への放火、パートで講師をしている石鹸教室が中止され、極めつけは夫の不倫&相手女性の妊娠&離婚を切り出される‼️追い詰められ、相手女性宅へスイカ手土産に話をつけに行ったり、チェーンソー片手に自宅を破壊したりする‼️ちょくちょく見ていた不倫のアカウントが実は桃子が以前自ら投稿したものであることもわかる‼️チェーンソーで床板を切断した桃子が埋めてあった子供服、流産する前に用意していた子供服を泥まみれで抱きしめる姿は切ない‼️そんな桃子を江口のりこさんが得意の無愛想面で大熱演‼️今年は「あまろっく」といい「お母さんが一緒」といい、江口のりこさんの年ですね‼️この作品は追い詰められて人格が崩壊したヒロインの心情と行動、その生態を観察する作品としてヒジョーに興味深い作品でした‼️ラスト、ホームセンターの職員の「ありがとう」の一言に救われた桃子‼️自分たちの住んでいた離れが取り壊されるのを母屋から見つめる桃子‼️夫との離婚はどうなったのか⁉️観る者に委ねるということでしょうか⁉️
江口のりこらしさはある
江口のりこらしさが出ている作品。初めから表情が乏しく、これから何かあるとすぐに予測できるのはどうか。淡々と丁寧な生活を送りながらも、心ここにあらずという感じで、楽しさや充実感を感じていないことがわかる。
自分の思い通りにならないことや、すれ違いや誤解は誰にもあることで、本作の主人公だけではない。それでも生きていく中で、自分にできることや楽しさや生きがいを探すしかない。
不倫の末に妊娠し、今の生活を手に入れたことを負い目に感じ、おかしいふりをしていたと言うのは痛々しい。しかし、夫や義母、元上司ばかりを責められない。ホームセンターの店員にありがとうと言われて泣く姿に、承認欲求の高さを感じたが、それこそが主人公を苦しめた理由ではないか。
多くのものを失ったが、本当に自分らしく生きられるのは、夫や子ども、家や家族という呪縛から解き放たれた、これからかもしれない。自分のために生きる、その後の安らかで丁寧な生活を送る姿が見たいと思った。
愛にランボー、怒りのチェーンソー
あの最後の、外国人の店員の「いつも綺麗にしてくれてありがとう」は、あの映画のラストの大佐の「もう闘いは終わったんだ、さあ終わりにしよう」、では。
原作が気になります📔
「ありがとう」のひと言の大切さ
あのワンシーンで評価がググッとあがりました。
クズは過ちを繰り返すものです。
因果応報はまさにこのこと。
泣きを見るのはいつの世も女、弱者って事ですか。
存在感の薄い、クズを小泉孝太郎が立派に(?)
演じきっていました。
いつも好青年を演じられるよりも
こんな役もこなせる方が俳優としては
素晴らしいと思うし(誰目線やねんw)
むしろ似合っています(笑)
時折チェックしてたX(旧Twitter)は
過去の自分のアカウントだった?
あの特徴あるスカートの柄が、実家に戻って
断捨離を余儀なくされた時に捨てたものと
似ていたような気がするんだけど。
見た方、教えてください。
多発している不審火、愛猫の行方不明
床下の産着
この辺りのサスペンス要素は、
原作ではしっかり描かれているのでしょうね。
ちょっと気になるので原作読もうかな。
映画におけるチェーンソーは木材を切るものではなく
人を切るものなのが、娯楽映画のお約束でしょーが?こんバカちんがぁー!?
江口のりこがチェーンソーを抱えている宣材写真を見てチェーンソーを駆使してどれだけ暴れてくれるのかを楽しみにしていたのに、床下と大黒柱を切るだけって...、そこは旦那に向かってチェーンソーを振り回さないと?
原作付きにしては上映開始してから、小一時間特に何も事件がなく淡々と江口のりこの日常を描いていて、江口のりこお得意のキレ芸が全然始まらないから、何度も腕時計で時間を確認してしまいました。
小泉考太郎はTVの探偵のヤツの演技とは違い、心底江口のりこを愛していない演技はさすがでクズやらせたら豊川悦司なみに上手いと思った。ここは、監督の演出が良かったのでしょう。
江口のりこがお得意のキレ芸を見せてくれるけど、寝取られ女の家に突撃して西瓜を投げるくらいで、自分と別れてくれと言った夫に対しても会心の一撃を喰らわす事はなくその場で泣き崩れるという、しおらしいトコ見せたりしてキレ芸を楽しみにしていたのに期待はずれでした。
吹雪ジュン演じる母親の江口のりこに対して何かよそよそしいとこは何かの伏線かと思っていたけど、息子の可愛さあまっての上での対応だったのですね。嫁はどう頑張っても実の娘にはなれないあるあるは悲しいもんです。
旦那にも義母にも優しい言葉をかけられなくて、外国人留学生だけが優しかったという何とも切なくて、俺も一人暮らししていた時は屈託なく挨拶してくる外国人留学生に何度も癒されたことか。
仕事をなくして、旦那も義母もいなくなった家で一人アイスを食う江口のりこの何とも切ないことよ。この映画、おひとり様女子には刺さりまくるんでしょうなぁ。
チェーンソーの使い方が間違っているとこ以外はよく出来ている映画だけど、何の救いも無い映画なので楽しめるかと聞かれると答えにくい映画です。
未来世紀ブラジルが好きな人にお勧め。
何か色々分からんかった
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のりこの夫が浮気してた。
夫は「謝りたいから浮気相手と3人で会ってくれ」と言う。
行くと彼女が妊娠してるから別れてくれと言われる。
のりこは拒否したが、夫は家に帰って来なくなった。
のりこはチェーンソーを買って、床下をくり抜く。
で「ピーちゃん」を探す。それを見た姑や夫はドン引き。
さらに講師の仕事がクビになったり不幸が続く。
そんなある日のりこが夜にゴミを捨てに行くと不審火が。
本編冒頭より、連続放火が起きてることは示唆されてた。
でやって来た警察官に質問され、何故か逃げる。
でホームセンターの外国人店員に別件で礼を言われる。
「有難うと言ってくれて有難う」と泣き崩れて終了。
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うーん・・・・色々分から~ん・・・・。
不審火は何の関係があって、犯人は一体誰なの?
逃げたから、実はのりこの別人格が??と思った。
でも違ったみたい。
あとピーちゃんは誰?猫かと思ってたが、違うらしい。
過去に流産したと子供のことなのか?
あと畳をくり抜いた理由もよう分からん。
のりこが殺したピーちゃんの死体があるのかと思った。
でも特に何もなかったように見えた。
ただただ不幸に襲われるだけで、それ以上何もない。
「お前といたら人生が楽しくない」まで夫に言われるし。
さすがに可哀想になって来るわ。
そういう状況からかなり情緒不安定な役柄なのだが、
江口のりこが見事に演じてるなと思った。
そこだけが見所で、ストーリーはよく分からず。
タイトルもよう分からんなあ、愛なんて全く無かったが。
哀に爛貌
始めから桃子の様子が微妙におかしい。
ふとした表情やピーちゃんへの反応からその兆候は感じるが、表面上はきっちり取り繕いながら生活している。
旦那や姑との関係にズレは見えるものの、すべてが欺瞞にも感じない。
仕事も順調そうだし、不審火もあくまで隣町の話。
どこに原因が、と見ていくと、なるほど定番の不倫問題ですか。
桃子は不倫の様子をSNSで見ており、すべて知った上であのリアクションか…怖っ…と思いきや。
確かに奈央のキャラとの剥離は感じたし、どうりで日時の表記がなかったワケだ。
しかし、(もし鍵垢だったとしても)あんな投稿してたなんて、桃子の方がよっぽどヤベー奴じゃないか。
奈央への台詞が全部ブーメランです。
そして愚行を繰り返した真守が一番のクズ。
照子の反応は最初こそまともだが、男の子か女の子か気にするあたりコイツも大概。
床下のベビー服は、腐敗や劣化もないから桃子が?
離れも床板もかなり古そうなのにどうやって??
不審火に大した意味がなかったり、離婚や失職の顛末がハッキリしなかったり、話としては色々モヤモヤ。
ムダ乳も何故出したのか意味不明。
江口のりこは流石の演技だし、脇も良かったが、今回は小泉孝太郎を見直した。
髪型もあるが、声もいつもより低めだったりもして、「あれ?小泉さんだったよな?」ってなった。
真守が“離婚したい理由”が一番キツい。
ヒューマンサスペンスとは違うかな?
終始、嫌な感じです。
夫、最低の男。女孕ませては妻を取り替える?
夫の母…まぁ夫の母ですから。
妻…終始不機嫌
布石なのかなと思われた、ゴミ捨て場の火事は犯人不明。
後半のシーンのためだったのかな。
これがまずサスペンスの入り口?とか深読みしたけど違った。
家の床を掘ったら赤ちゃんの服が出てきて添い寝したこの辺から、サスペンス始まる???
違う
誰が埋めた?
伏線?回収できない。
ホムセンの外国人がかけた「ありがとう」と、それに対して答えた「ありがとうって言ってくれてありがとう」っていう言葉以外、ひとつも刺さらなかった映画でした。
個人の意見です。
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