「孤立」愛に乱暴 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
孤立
なんか散々な話だった。
タイトルの意味も掴めなくて…文法として成立してないような並びであり、その事自体を「道理に合わない」と捉えるならば、このタイトルでも成立するのかと頭を捻る。
主人公・桃子の置かれてる状況は散々で…夫は浮気して子供を作って、その彼女共々、桃子に謝りたいと宣う無神経さである。この夫との結婚もどうやら略奪婚らしく、結婚の決め手は桃子に子供が出来たからなのだけど、その子供を流産していた事を告白出来ぬままに結婚をしたらしい。
で、この無神経男はまたも同じ事を繰り返し、桃子を捨てようとする。
桃子は桃子で、そんな経緯で結婚したものだから義理の母親とも打ち解けきれずで、どこかよそよそしい。離婚が念頭にあるものの、実家には兄だか弟が親と同居していて子供が3人もいる。その嫁さんとも敬語で話すような間柄だ。おそらくならば10年近い年月を経ているのにそんな関係性を打破できずにいる。
唯一の収入源である講師の教室も閉鎖され、相談に乗ってくれそうな上司はまるで頼りにならない。
そして彼女は若く見積もっても40過ぎのようにも見える。
八方塞がりなのだ。
どこにも居場所がないし、寄り添える人もいない。
とは言え、彼女が何かしたのかと問われれば特に問題はなさそうに見える。
生活上よくある事だ。「何か上手くいかない」
何か原因があるわけでもなく、思ったように事が進んでいかない。募る苛立ちに苦しめられる期間。
そんな空気感を序盤からずっと引きずってた。
とにかく寄りのカットが多い編集で、妙な圧迫感をずっと与えられるし、否が応でも桃子を観察してしまう。
…つまらなくはないが面白くもない。
ただ、その編集を江口さんは保たせてしまえる。
流石だなぁと感服する。
チェーンソーの件はセンセーショナルではあったけれど、真意を掴める程でもなく、狂気の沙汰とも思えない。そんな状況でそんなストレスを抱え続けているのなら、そんくらいはやってのけるだろうなぁと思える。家を破壊する事に意図はあるのだろうけど、牢獄ではなく、砂上の楼閣のようなもので、元より無かった物をあると信じたかった愚かさの象徴とかにも思えるかなぁ…。
印象的だったのは「ありがとうと言ってくれてありがとう」って台詞だ。
彼女はずっとそれだけを求めていたのだと思う。
自分は誰かに必要とされている。
自分の行為や行動は歪まずに相手に届いている。
私はここにいていい人間だ。
他者からの肯定をずっと求めていたのだろうなぁと思う。
とは言え…この物語が語るものは何なんだろうとずっと考える。どこが落とし所なのか終盤になってもさっぱりわからないのだ。
ぶっちゃけフランス映画を観てるような錯覚を覚える。で、ラストだけが日本映画みたいな。
ラストの彼女は晴れやかだ。
髪も切って明るい色の服を着ている。
ハナレは解体し義母が住んでいた母屋に住んでいるように見える。
…このラストが弱くて混乱する。
いや、様々な解釈が出来るラストであり、どんな経緯であったか議論してくださいってスタンスならば、ずる賢いなぁとも思う。
ちゅうか…主演・江口のりこに見劣りしてしまうようなラストで歯応えがなかった。
つまりは散々引っ張ってたのに、最後でズッコケた感じだ…正直、腹立たしい。
ずっと期待感だけがありはするのだが、その期待感は作品にではなく主演・江口のりこに向けられていたものだし、彼女が発していたものだった。
そんな作品。
小泉孝太郎は上っ面だけの男をやらしたら天下一品だなと思う。悪人なのに善人だと勘違いしてるクソ野郎をやらしたら絶品だわ。
なんか他の作品でもそんな傾向の役がハマってた。