A Window of Memories

劇場公開日:2026年8月7日

解説・あらすじ

「わたしたちの家」「すべての夜を思いだす」がベルリン国際映画祭フォーラム部門に連続で選出された清原惟監督が、初めてドキュメンタリー的手法で手がけた〈聞き書き映画〉。清原が自身の母方・父方の祖母から人生の話を聞き取り、共に編んだテキストを2人の俳優が朗読していくなかで、世代を越えて記憶が響き合うさまを描き出す。

「私が聞かなかったら、この話はどこに行くんだろう」。ふと耳にした祖母の若き日の話に心を動かされた清原が、母方と父方それぞれの祖母から人生の物語を聞き始める。家族、戦争、仕事、結婚、飼い犬、友だちの話など、生活に根ざした思い出が細やかに語られていき、同じ時代を生きた2人の、交差しながらもまったく異なる世界を、清原は祖母たちと共に文字に起こしていく。そうして編まれた物語が、2人の俳優に託され、1日をかけて朗読されていく。

愛知芸術文化センター・愛知県美術館が、三宅唱「THE COCKPIT」、小森はるか「空に聞く」、小田香「セノーテ」などを生んできた一連のオリジナル映像作品として企画・製作。山形国際ドキュメンタリー映画祭2025のインターナショナル・コンペティション部門に選出された。

2023年製作/67分/G/日本
配給:amieee
劇場公開日:2026年8月7日

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映画レビュー

4.5 「祖母から監督、女優に記憶が伝達され、観客に記憶を呼び戻させる稀有な映画」

2026年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

斬新

電車の心地よい振動に身を委ねて、ぼんやりと窓から流れる景色を見ていると、懐かしい想い出が甦ってくる感覚の再現性が、本作の魅力である。

 清原監督の母方と父方の祖母から、監督が想い出を聞き、その想いを祖母二人がテキストに書き出し、それを二人の女優が朗読するという特殊な映画体験をした。

 私には、視覚よりも聴覚に重きを置くことが大切な作品であると感じた。時に目を閉じて、女優の発する朗読を聞いていると、祖母たちが過ごした場所や家族、自分自身の想いの強さや感情の推移、状況の移り変わりが、ありありと目に浮かんできたからだ。

 そして視覚でとらえる現在の二人の祖母の姿。庭いじりをしたり、川沿いを歩いたりする。それは自分が歩んできた、人生のある種、終着地のような姿が目に焼き付く。そして祖母たちの声ではなく、二人の女優がテキストを朗読する、表情と声と間が、別人の身体と声を使って解き放たれる。他人の人生をゆっくりと朗読する姿には、発見、驚き、戸惑いがありながら、女優として朗読を続けるところに、アンバランスなバランスが生じて、祖母たちの決して平坦でなかった人生が浮かび上がってくる。

 清原監督は、貴重でかけがえのない、祖母たちの唯一の人生そのものをテキストに残し、他人の身体と声を使って、祖母たちの想い出を清原監督の宝物のように、映像に保存し、閉じ込めたのが、この作品であるように感じた。

 この極私的試みを観客にあえて見せることは、どのような意味を持っているのだろうか。人の心の奥底に眠る想い出は、何もしないと、亡くなってしまった瞬間、無に帰す。人生の想い出という普段ほとんど考えないことを、この映画を見せることによって、一回性の生が刻印されていたように感じた。

 清原監督の試みと発想は刺激にあふれていた。清原監督は自分の祖母の記憶、自分の宝物を、別人である女優の身体と声によって、観客自身の記憶に返してくる。誰もが唯一の想い出を持っていて、自分の記憶を呼び覚ますから、刺激的な作品になっていたのだ。

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かな

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