ルックバックのレビュー・感想・評価
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ルックバック=出てくるな!
原作をジャンプ+で読んでいたにも関わらず
肝心なところは忘れていて、
新鮮な気持ちで鑑賞しました。
主人公藤野の軽薄そうに見えて実は努力家なところや
京本のことを自身がマンガを描くことをやめるほど
認めていて(リスペクトしていて)
京本と本当に一緒にマンガを描きたくて
そして京本をとても大事に想っているのが
観客にもよくわかります。
そんな藤野は感情を表出させないのですが、
京本の私を目の当たりにしたときには、
自分のせいだとして、自分を責めるほどに
思いがあるんですよね。
ひきこもりの京本との出会いのマンガでは
「出てこい!」が真のメッセージだったのを
ルックバックしたときには「出てくるな!」として
その後の世界を想像したのち、
ちゃんと自分を見つめて、
京本の生き様を理解して、前を向く藤野。
実にグッときました。
まさか本作で涙ぐむとは思ってもいませんでした。
それほどに心に刺さるものがありました。
藤本タツキの作品はどれも大好きですが、
本作は映画を観たことで、さらに好きになり
パンフレットはもちろん、原作単行本まで
購入してしまいました。
帰宅して、しばらく本作の世界観に浸ろうと思います。
あんたが いたから いるから 描く
漫画家
その名の通り漫画を描く人及び職業
作品のジャンルや形態によって
一人で描く場合も多人数で役割分担
して描く場合もあるし作者の年齢も様々
つまり「絵が描ける」熱意や
多少の才能さえあればそれだけで
年齢は関係なく成立する仕事である
今作はそんな漫画をテーマに
学年で一番絵がうまいと自負してた
藤野歩が学級新聞に載せていた
4コマ漫画を並べて公開されたことで出会った
京本との出会いめぐる友情と運命と別れの物語を
監督・脚本・キャラクターデザインまでを
エヴァからジブリまで変幻自在の
押山清高氏が手掛けてた作品
どうだったか
いやすごかった
アニメーションというもの表現力
の可能性を改めて感じるほど
単純にキャラクターの画面上での
「動」と「静」が
これほど心情を示すのかと
衝撃を受けました
何より作りたいように作った
「気持ちよさ」に溢れていた
ように感じます
5点満点付けるのは生涯最高の
一作だと思っていたが
俺が死ぬ間際だったら
付けてただろう
説明的なセリフはいらない
京本に刺激されて友達と遊ぶのも
勉強もせず
描いて描いて描きまくっても
京本の表現力に勝てないと悟り
漫画をあきらめるに至「りかけ」た藤野歩が
ひょんなことから京本に初めて会ったら
自分のファンだったと知り
4コマをやめたのは
新作の構想中だったとでまかせを言い
雨の中を踊るように飛び跳ねながら
家路につく場面は最高です
表情を全く変えてないとこが
逆にいい
なぜ
どんな思いで自分は
漫画を描いていたのか?
引きこもりだった京本が
外に出るきっかけになり
対人恐怖症なので人は描けないが
最高の背景を描く京本と歩は
合名「藤野キョウ」でジャンプに
作品「メタルパレード」持ち込み
新人賞100万円を獲得して
高校卒業までに読み切り7本を
描きついに連載を依頼されます
しかしここで京本は美術学校で
絵をしっかり勉強したいと
歩に打ち明けます
歩は当然反対しますが
「歩ちゃんに頼らずに
一人で生きてみたい」
こう言われては・・
結局二人は袂を分かち
歩は連載「シャークキック」
を開始
京本は美大に進学します
歩は苦労しながらも
連載を軌道に乗せますが
やはりしっくりくる背景を
追い求めている模様
そんなところへ入ってきたのは
京本のいる美大への
作品をパクられたなどの
一方的な恨みを持った
通り魔侵入のニュース
そして京本は・・
(このエピソードは明らかに
京アニ放火事件がモチーフでしょう
藤本先生も思うところが
あったと思います)
絶望に打ちひしがれ
連載も休載した歩は
卒業証書を渡しに行ったあの日
京本の部屋の入口で描いた4コマ
「引きこもり選手権」を
ジャンプの隙間から発見
あれを描かなければ京本は
死ぬことはなかったと
「漫画なんか何の役にも立たない」
京本の部屋に入れず
後悔し4コマを破り捨てます
ここで「(部屋を)出るな」と
描かれた1コマ目を
見た部屋の中の京本が
あそこで歩に出会わず
美大に進学した京本が
通り魔に襲われる寸前に
漫画をやめ姉と一緒に空手を
習っていた歩が通り魔を蹴り飛ばす
世界線が広がっていきます
そして助かった京本が
実家に帰り歩が助けてくれた
シーンの4コマを描くと風に
あおられそれが部屋の外に・・
そして元世界の歩がそれを観て
京本の部屋の扉を開けると・・
京本は「シャークキック」の
熱心な読者でアンケートも必ず
書いてくれていました
「なぜ漫画を描くのか」
あの時引きこもりを脱した
京本と一緒に「メタルパレード」
執筆に取り組んだ日々
あそこに今の歩の原点があり
その後も京本はファンで居続けて
くれた
漫画を描く理由はそこにあった
それを理解した歩は部屋を出て
再び京本が楽しみにしていた
シャークキックの制作に戻ります
この世界観のつながり方とか
確かにクリストファー・ノーラン監督
「インターステラー」っぽくもあります
パクリとか言いたいんじゃなくて
あの映画も手狭な部屋の中から広がる
世界がやがてつながっていくという
ところに魅力がありましたが
二人が作ってきた漫画の世界
つながりをこうまとめる終わり方は
いいなと思いました
切なくも希望につながり
それで生きていく
必見の一作だと思います
すばらしい
原作も藤本作品も全部好きなので、どんな映画であろうと観ようと思っていたが、予想以上に素晴らしかった。
特に主人公が京本にはじめて会って漫画を認められて嬉しくて走って帰ったシーンは心揺さぶられた。表情だけ見たら苦しそうで、からだも変なふうにねじまがってて、それがあまりに嬉しいからそうなってるんだ、というのがすごい表現だと思う。
あと、漫画の執筆シーンは原作より生々しいリアリティがあると思った。良いアシスタントが見つからなくて交渉するシーンは、過酷な漫画現場の一端を垣間見る感じでゾッとする。
マール社の「やさしい人物画」とかの定番の美術書とか、デジタルの漫画画材の数々とか、細かい道具とかも良かった。
シャークキックの単行本が複数巻のものがあるのは何でなのか、と思ったが、「重版」がかかったことを表す描写だと知って納得。
ただ、正直言えば映画で1時間弱の時間というのはやや物足りなく思った(特別料金1700円で鑑賞ポイント使えないし)。これはこれでテンポが良くて良いのだが、どうせ映画にするなら2時間くらいの話にしてもいいのではないかとも思った。
特にこの作品はたくさんの映画のオマージュが詰め込まれているので、ふくらませる余地はありそう。でも素人がいい加減なことを言うものではないな…。これはこれでいいのかも知れない。
入場者特典で原作の全ページのネームの単行本がもらえるというのは全然知らなかったのですごくうれしい。大切にしよう。
表紙裏に、「発表時から単行本収録において、一部台詞の表現を修正した箇所があります」との一文
そうだ、この作品、ジャンプ+の初掲載時の台詞が修正されたんだった。
言うまでもなくこの作品は京アニ事件がもとになっている。藤本さんのやり場のない怒り、悲しみ、後悔、苦しみを作品に叩きつけたのだろう。だからこの作品は胸を打つ。
初掲載時の台詞は精神障害者への差別を助長するということで変更されてしまったけど、そこでこの作品が京アニ事件がもとになっている作品だと言う要素も消えてしまった。
単行本版と映画版だと、犯人のセリフが「ネットに公開していた絵をパクられた」になっており、京アニ事件とのつながりを示唆したものになっている。
今の時代って無料コンテンツが溢れすぎてて、漫画やアニメに対する価値が相対的に低くなってる気がするんだけど、五分で読み終わってしまうような漫画も、描くのは一ヶ月とかとんでもない時間と苦労をかけて生み出してるかもしれなくて、そういう生み出す側の苦労を知ると言う意味でもこの作品はもっとたくさんの人に観てもらいたい。
吉田美月喜が気になった
学級新聞に4コマ漫画を連載し、クラスメイトから称賛されていた小学4年生の藤野は、先生から、不登校の京本の4コマ漫画を新聞に載せたいと言われた。自分の漫画に自信を持っていた藤野だが、引きこもりで学校に来られない京本の描いた絵に衝撃を受けた。そんな2人は、一緒に漫画を描くことになり、共同作業を続けていたが、京本が美大へ進学することになり、離れ離れになった。そんなある時、美大へ乱入した男が・・・という話。
引きこもりの子が絵が上手く、衝撃を受け必死に練習する小学生、というのは良かった。その後の上から目線の態度はどうかと思ったが、美大での事件は突然で唖然とした。悲しすぎる。
藤野役の河合優実も悪くなかったが、京本役の吉田美月喜が朴訥としてて魅力的だった。
入場者特典のコミック、ほぼ映画通りで良かった。
【”Don't Look Back in Anger そして、私は彼女の背中を思い、漫画を描き続ける。"今作は二人の漫画好きの少女の交流と成長を軸にした物語構成、絵の美しさと共に心に響く作品である。】
■小学生の藤野が、学級新聞に連載している四コマ漫画はクラスメイトからも好評。だが、ある日不登校の同級生京本が描いた自分のタッチとは全く異なる四コマ漫画も併せて掲載され、藤野は自身の漫画とのレベル差を感じる。
だが、京本も藤野の漫画が大好きで、二人は一緒に漫画を描き始めるのである。
◆感想
・藤本タツキ氏の漫画は、申し訳ないが、この映画を観るまでは全く知らなかった。だがフライヤーに記載されている氏の画を見て鑑賞を即決した。
・ストーリー展開も、起承転結がはっきりと描かれており、且つ二人の少女がふとしたきっかけで交流を持ち、好きな漫画を描くことに没頭する姿がとても自然に描かれており、魅入られた。
・藤野と不登校の京本が小学生時の出会いから一緒に漫画を描く様や、自己主張せずに、只管に藤野が描く漫画の背景を担当していた京本が初めて”美大に行きたい。”と言い、藤野と別れ、夫々の道を歩み始めつつも、常にお互いの存在を忘れずにいる姿。
更に、藤野の連載漫画の本がドンドン売れていく様を、第一巻から巻数が増えていく本棚を映す事で表現する巧さには、センスを感じる。
■藤野が売れっ子漫画家になった時に京本に起こった凶事。
ここのシーンは容易に京都アニメーションを襲った悲劇を想起させるが、それを今作では藤野が自身の四コマ漫画で笑いの要素で犯人を撃退する姿で描いている事も、上手いと思う。
藤野は、犯人を憎めどその仕返しを漫画でキッチリと行うのである。
藤本タツキ氏の理不尽極まりない京都アニメーションを襲った犯人への激烈な怒りが垣間見えるシーンでもある。
■”Don't Look Back in Anger”・・ご存じ、Oasisの超名曲である。
意味は様々な解釈があるが、私は素直に【怒りで、過去を悪く思わないで】という意味でレビュータイトルとした。
”藤野は京本を狭い部屋から出し、新たなる広い世界に連れ出したのだ!”と言う思いからである。
<そして、藤野が主のいない京本の部屋を訪れるシーン。
”自分が漫画の世界に引き込まなければ、京本は生きて居たのに・・。“
と悔いながらも、落ちていた四コマ漫画を高層ビルの仕事部屋に持ち帰り、仕事をするデスクの真ん前の大きなガラス窓にペタリと貼り付けて、藤野は再び漫画を描き始めるのである。
今作は二人の漫画好きの少女の交流を軸にした物語構成、絵の美しさと共に心に響く素晴らしき作品である。>
泣きすぎて息が詰まった。美しくある種残酷な映画。
原作は一度だけWEB上で読んだ気がする。CMをみたときに、「好みの絵が動いてる」と思い鑑賞。大正解、自分。良すぎて思わず、そのまんまもう1巡しそうになった。
藤野が京本の絵を見て「許せない」と奮闘し続けるところ、藤野と京本が出会いふたりで漫画を作っていくところ、季節が巡っていく描写が美しすぎて泣いた。
お互いがお互いを希望に思っているのだろうなという関係性がすごく眩しかったし、アニメーションの光と影の描き方も美しかった。
最後、決して明るい終わり方ではないし、人によっては残酷に思えるような感じかもしれない。しかし、京本という光を失ってもなお筆を折らずに机に向かう藤野は美しく、私には希望の光に見えた。
私の素敵な人生(京本)返せよ
京本 私の背中見ててね
藤野ちゃんの背景(過去)私頑張るね
言葉を貴方よりも言い表せられません
私は使えていません
そんな風に言い表せられなく
嫉妬するほど繊細で
私には見えていないと自分で気づく
言葉をもっと知りたい
貴方の様に
私も生きる
言葉の為に
私の素敵な人生(京本)返せよ
取り返しにいく
藤本タツキの鬼才を余すこと無く体感する1時間
まず、映画に携わった全ての方に感謝を。
私はこの作品の原作を読んでいるが、正直観るまでは1時間ではまとめきれないと思っていた。
同じ感想を持ちながら、観に行った方も多いのではないだろうか。
しかしながら、この思いは開始5分にして裏切られ、少女達の人生が文字通り1時間で描かれる事になるのだ。
映画のタイトルである、ルックバックは終盤に伏線回収されるが、「有象無象に埋もれる自分と自分の世界で唯一無二の才能の持ち主が、互いの背中を見ながら成長していく。」がコンセプトになっていると感じた。
映画の終盤10分は息付く暇もなく、彼女達と同じ時を刻むことになる。
エンドロール後に忘れていたかのように、劇場のあちこちから、息を吐く音が聞こえた。
迷っているなら、見に行った方がいい。
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