「素晴らしい!丁寧!がゆえに難しい気もする」ルックバック kame-pukupukuさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい!丁寧!がゆえに難しい気もする
映画館にて鑑賞しました。
鑑賞後の一番素直な感想は「難しい」でした。
作品の内容が難しい、とかというわけではありません。この作品を構成する要素である「作画」「背景」「音楽」「間」「キャラクターデザイン」「声の演技」はほぼすべてが完璧だったと思います。藤野が京本に褒められて帰宅するときの彼女の様子なんか、「これぞアニメーションだ!」ととても胸に刺さりました。人物の感情を動きで表現する、感情の表現が完璧だったと思います。
また、原作者である藤本タツキさんの作品は、私自身「チェンソーマン」のアニメと「ファイアパンチ」の5巻ぐらいまでしか触れていないのですが、登場人物の感情の揺れ動きやキャラの造形(考え方や性格というのでしょうか。。。)がやっぱり藤本さんらしくて良いな、とも思いました。
アニメーターさんや脚本家など、この作品に関わった方々のこの作品に対する熱意や愛情をヒシヒシと感じました。
自分が「難しい」と思ったのは「もし京本が部屋から出ていなかったら」の一連の件です。
結局あの部分は藤野の想像でしかないと思うのですが、その想像で藤野は立ち直ります。
部屋から出なかった京本は美大に行き、殺人犯を懲らしめた藤野と再会し、漫画の話をする、そして京本が作った四コマ漫画に、現実の藤野は背中を押されて、また漫画を描き始める。。。このように文章として書き起こすと、本来起こるかどうかわからないIFの話でなぜ藤野が立ち直れたのか、という鑑賞中に浮かんだ疑問について自分なりの解釈方法がうっすらと出てくるわけですが、鑑賞中には「なんかなんとなくわかる気がしなくもないんだけど、納得しきれねぇな」という感情が真っ先に浮かんでしまいました。
どういう言葉での表現が正しいのか分からないですし、なんだったら単純に自分の読解力不足なんだろうなとも思うのですが、そこまでのストーリーとの納得感の差、と言いましょうか、説明の解像度と言うのでしょうか、鑑賞している人間に求める理解度の高低差を感じてしまいました。
かなり正直に言えば、現実で京本が殺されてしまったことを知るシーンまでは☆5です。その後、藤野が立ち直るシーンはこの作品の最も大きな山場であるところで、自分としてはモヤモヤ感を抱いてしまったため、個人的にこの作品をどう感じたら良いのか、自分の中で消化することが難しいな、と思い評価を少し下げました。4.3みたいな採点があれば、それが一番近いと自分は思いました。
この作品とは関係ない個人的な所感ですが、日本のアニメで個人的に胸を打たれる作品は、あまり上映時間が長くない作品の方が密度高くまとまっていることが多いし、個人的に好きだな、と感じます。
自分も観終わった直後はファンタジー?と思いました、現実の事件から気持ちを逸らしてくれて助かったんですが・・。その後原作を読んだりしている内に、お互いの四コマがドアを通じて時空を行き来するSF的なテイストを感じるようになって、あぁこんな味も有ったんだと感じるようになりました。今作に関しては短いままで終わったのが、濃縮効果でしたね。