「前を行く人の背中を見る、後から来る人を振り返る」ルックバック Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
前を行く人の背中を見る、後から来る人を振り返る
7月24日(水)TOHOシネマズ日比谷で。
藤野が京本の存在を認識したのが4コマ漫画が学年新聞に並びで掲載された小学4年の時、画力の差に藤野はあせり努力するが画力の差は縮まらず、藤野は6年の途中で漫画を書くのを辞めてしまう。
初めて出会ったのが小学校卒業の日、担任に頼まれて引きこもりで式に来なかった京本に卒業証書を届けた時である。
京本に藤野の漫画が好きで「藤野先生」と呼ばれ、嬉しくてスキップして帰る藤野。
二人は一緒に漫画を書き始める。藤野が漫画を、京本が背景を。
漫画雑誌の懸賞に二人で描いた作品を藤野京の名で応募すると優勝、二人は賞金百万円を手にする。
引きこもりだった京本の手を引いて買い物へ、食事へと街へ連れ出す藤野。藤野の背中を見る京本。
二人の共作は漫画雑誌に何度も掲載される。高校を卒業したら連載を、と編集部から声が掛かるが、京本は共作を断りもっと絵が上手くなるために大学で美術を学ぶ事を選択する。藤野は、共作を継続する事を望むが、京本の希望を受け入れ、一人で連載を始める。
連載を始めた「シャークキック」は当たり、巻を重ねて行く。しかし、藤野は背景に満足がいかない(京本の背景が欲しいと思っていたに違いない)。
そんな時、ある事件が起きる…。
藤野に手を引かれた京本は藤野の背中を見ていたが、手を引いていた藤野は京本を振り返っていなかったようだ。だから、大学で美術を学びたいと京本に言われた時、藤野は戸惑う。京本の思いに気づいていなかったから。それが、あの時ああしていなければ、と言う思いに繋がっていったのではないか。
ラストで藤野は、京本の部屋から持って来た4コマ漫画を窓に貼り、漫画を描く。描き続ける。
カメラはフィックスしたままで、時間が流れ朝⇒昼⇒夕⇒夜となる。一日描き続けた藤野がドアを閉めて部屋を出て行くのがシルエットで判る。
58分と言う凝縮した時間の中に素晴らしい物語が紡がれた。
共感ありがとうございます。
この作品は何故かストーリーより、設計図とかカメラとかが気になりました。この漫画家さんは映画からの引用が多いようですね、映画秘宝に載ってました。
本当は京本来て! が本音なのにちくちくと、でも落ち着いた感じでアシスタントの話をする所が、プロっちゅうか大人だなぁと思いましたね。どうして描くのか直ぐに答えられない、それは漫画が彼女の全てだからだと思います。