「「絵を描く」ことのリアリティを欠くのでは」ルックバック こべっこさんの映画レビュー(感想・評価)
「絵を描く」ことのリアリティを欠くのでは
原作を読んでいないので以下に書いた事は映画というよりも原作に対しての指摘になるかも知れないのですが...
以前美大を出て学校で美術の先生をしている友人に聞いた話。「漫画を目指していて描いた作品を出版社に持ち込んで見てもらったことがあったのだけど画力は問題無いけどストーリーがね...」と言われたらしい。
だから画力は漫画家になるのに一番重要な要素ではないし、画力にしても美大受験に必要な画力のようなものじゃないだろうし、画家になるような人は絵が上手くなるために描くのでなくてタダタダ絵が好きで、一つのテーマを突き詰めて描くのだろう。主人公の藤本や京本が絵が上手になりたくてたくさん練習して努力してというストーリーは見る人には分かりやすいが絵を描く人のリアリティからはかけ離れているように感じました。
ですから京本がもっと上手になりたくて美大に行きたいと言い出したときに「それって美大で身につけるものじゃないし、あなたは元々素晴らしい。自分はあなたの絵を見て漫画をまた描きたくなった。」って告白が必要だったし、最後の場面でも「私はあなたに自分の絵を褒めてもらってうれしかった。不登校だったあなたに対して世話をしてあげてるみたいな上から目線だったことゴメン。漫画を連載していると読者の人気ランキングなんてあるけど本当はそんなのどうでもいいの。あなたといっしょに漫画を描いていたい。だって私はあなたの絵の一番のファンなのだから」なんて台詞ほしかったなあ。
週刊少年ジャンプに連載されている藤本タツキ先生だからこそちょっととがった台詞書いてほしかったなあ、なんてかってなことを思いました。
いい映画だっただけに絵を描く人としてのリアリティが欠けたところと台詞でもう一押したたみこんで来てほしかったなあ残念と思い。5点満点中3.5点としました。
共感ありがとうございました。
仰る通り漫画は画力だけのものでは無いですよね。
藤野は漫画が上手くて画力が無い人、京本は絵を上手くなりたくて、藤野の漫画が好きな人と理解してます。
京本は大好きな藤野漫画の横で描きたい絵を単純に4コマ描いてみた(決して面白い訳では無い)
藤野は京本の絵の才能に打ちのめされて基本画力を上げる為に頑張った。
小学生の学友は残酷で、漫画の上手さと絵の上手さの違いが分からず上手い下手を言う。小学生の藤野自身でさえその差を理解出来ず筆を折る。
けれど2人が出会った時の京本の藤野対するリスペクトが、藤野の描く事の意味を知る事になる。
京本は藤野に巻き込まれて漫画の背景を描くも、漫画の魅力より絵の力に惹かれ絵が上手くなりたいと言うアイデンティティに改めて気づく。
私自身、漫画のキャラの模写から始めて美大生になった身として、
絵画を描く人、漫画家を目指した人には、ブッ刺さるリアリティだと思いました。
特に引きこもってた京本の作品のモチーフがドアだったのには、やられました。
藤本タツキ氏自身、美大出身の様で色んな想いを塗り込めた作品だと思ってます。
長々と失礼しました。