「素直に感動したものの客観的評価はちょっと弱い」ルックバック 白金卿さんの映画レビュー(感想・評価)
素直に感動したものの客観的評価はちょっと弱い
友達に誘われて鑑賞。特に原作、監督については何も知らないで見ました。若干、ファンの方々がたくさん見ている印象です。
ストーリーは切ないお話。恋愛ではなく、友情の話です。
田舎を舞台としているので、ジブリ、細川作品、新海作品のような日常が好きな方と相性はいいと思います。
逆に自分はそれらが苦手よりでしたが、恋愛要素がないためか、なかなか楽しめました。
ご家族で見に行くのも問題ないと思いますが、ちょっと切なさがショッキングになる可能性も。
おデートにも問題ないです。
さて客観的な評価ですが、ストーリーに関しては共感する、しないは別れるのはどんな作品でも一部仕方ないことでしょう。
しかし、そういう経験のない人たち、共感しないであろう人たちを巻き込む引力があったかというと、かなり弱いと感じました。
これは単純に、アニメーションとしての出来がちょっと目につくところが多かったからです。
例えば、音楽の面。
かなり似た雰囲気の音楽を多用し、食傷気味になります。抑揚が少なく、ひたすら感動しろと言わんばかりに感動的なメロディのパターンを連発するので、ひたすら甘い物を食べまくる感覚です。
カット、コマ割り、つまり絵コンテ、演出が関わる部分に関してもかなり手数が少ないです。間を保てず一定のテンポですぐに切り替わってしまうところ、定番無難であろう手法の多用、さほど効果的と思えない小手先の技術はある意味原作(特典でもらった漫画)を忠実にしているのかもしれませんが、これがかなり気になりました。カメラアングルも、似たアングルが多いので、この辺に気づくと入り込めなくなる要因に繋がってきます。(これらは原作の方でも言えるところがあります。)
だからか、名言と思い込めるシーン、名シーンの印象がかなり弱いです。
対して、作画、一枚絵に関してはかなりこだわりを感じ、心情を表すであろう空気感や、背景と人物のギャップにはこの作品の世界の人が描いているかのような感覚を味わえるのはなかなか良い世界感を出してくれます。
ストーリーについてはさほど斬新とは感じないのですが、作者の経験にもとづいているという点やリアルさがすごくぐっときました。クリエイターの苦悩も感じます。
チェンソーマンを見ている方、田舎系の空気感が好きな方には相性はいいと思うのですが、そういうコンテキスト(見る人の価値観、前提、文化)に依存するところは多く、ジブリ作品等のように海外、時代を超えるかというと怪しいラインの作品。駄作ではないですが、至高の作品とまでは届かないライン。
でも、原作者の方のマインドに関しては上昇志向があると作品から伝わってきますので、きっとまだまだ伸びると思います!
逆に監督の方は監督よりも作画担当の方がいいかもしれない、描くのも相当な枚数頑張ったと聞いていますので