「完全版『ルックバック』」ルックバック ORANGEさんの映画レビュー(感想・評価)
完全版『ルックバック』
現在漫画を読んだ上で鑑賞。
原作も素晴らしい作品だったが、映画化した本作にはいっそう心を揺さぶられた。
とは言っても、映画化にあたりストーリーに変化があったわけではない。むしろ、これ以上ないほど忠実な映像化といった印象である。
漫画との違いを生んでいる要因は「間」である。原作者である藤本タツキ氏が時折使う、セリフのないコマを連続で見せる表現は、漫画慣れしている読者ほど高速で読み進める事になり、どうしてもそこで表現されている「間」や「時間」を十分に感じづらくなる。
本作でいえば、藤野と京本が過ごした時間がそれにあたる。
映像化によって製作者の意図する「間」「時間」で表現されることで、2人が過ごしたかけがえのない時間の印象がより強くなり、必然的にそこからの展開はより強く心を揺さぶられるものになった。
本作の監督は原作者とは異なるが、おそらく原作者の頭の中にあった完全な『ルックバック』に限りなく近いものを映像として見る事ができたように思う。
派手な作品ではないが、漫画の映像化における新しい(かつ、大半の原作読者の賛同を得られる)アプローチを試みた傑作だと感じた。
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