「心と体で受け止め、涙があふれる」ルックバック(2024) ひでぼーさんの映画レビュー(感想・評価)
心と体で受け止め、涙があふれる
ファイアパンチで心掴まれた、藤本タツキ。
今、自分の中で一番はまっている、河合優実と吉田美月喜。
期待しかなく、ハードル爆上がりのなか、正座(する気持ち)で観る。すべてが完璧だった!
漫画をリスペクトしつつ、映画の魅力がとても出ていた。
■映画独自の、動き
ワンカット目から、漫画を大事にしているのがわかるちょっとしたコマ送り。
動画の中でも、2人の関係性同様、キャラクター手書きで、背景だけがきれいな作画。
大事なシーンでの、アップの画角。
漫画らしさを損なわず、逆に表現が増幅されていた。
■映画の中で大事な、音。
声優は、自分が好きな女優だからか、最初は本人たちの顔が浮かぶものの、すぐに藤野と京本になりきっている。
それぞれ違う、まっすぐさが表現されていた。
音楽はここぞというところで感情を溢れさせてくる。
絵に、作品に、そっと寄り添いつつ、壮大で、雄大にさせてくれた。
映画における音楽の良さを再認識した。
■伏線
ルックバックというタイトルがしっくりくる。
過去をルックバックし、後悔する。
そこから、ifの世界がはじまる。
ドアノブが違うのは、ifの世界は藤野の夢であるからか。
京本はあることを伝えるために四コマに取り憑いてドアの下からまいこんだ。
そのタイトルは、「背中をみて」。
部屋に入って目に入ったのは、背中に書いたサイン。伝えたかったのは、自分は藤野の一番のファンで、天国からでも見ているよ、ということ。
それを経て、藤野は本当に漫画を描く意味を見出し、筆を走らせる。
窓に四コマを貼ったのは、京本に見ておいてほしいから。
藤野はもう、過去を振り返らず、これから迷うこともないだろう。
■避けては通れない、上映時間
映画でしか表現できないところをしっかり描き、いたずらに時間を延ばさず、1時間に収めている。上映するうえで異例になる60分という短さを恐れなかった製作陣を讃えたい。
結果的には回転がよく、コンテンツがショート化している今の時代にはドンピシャである。
目で、耳で、そして感情で。
心と体で受け止めて、涙があふれてきた。
何回でも観たい作品だ。
さ
