「あんたが いたから いるから 描く」ルックバック マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
あんたが いたから いるから 描く
漫画家
その名の通り漫画を描く人及び職業
作品のジャンルや形態によって
一人で描く場合も多人数で役割分担
して描く場合もあるし作者の年齢も様々
つまり「絵が描ける」熱意や
多少の才能さえあればそれだけで
年齢は関係なく成立する仕事である
今作はそんな漫画をテーマに
学年で一番絵がうまいと自負してた
藤野歩が学級新聞に載せていた
4コマ漫画を並べて公開されたことで出会った
京本との出会いめぐる友情と運命と別れの物語を
監督・脚本・キャラクターデザインまでを
エヴァからジブリまで変幻自在の
押山清高氏が手掛けてた作品
どうだったか
いやすごかった
アニメーションというもの表現力
の可能性を改めて感じるほど
単純にキャラクターの画面上での
「動」と「静」が
これほど心情を示すのかと
衝撃を受けました
何より作りたいように作った
「気持ちよさ」に溢れていた
ように感じます
5点満点付けるのは生涯最高の
一作だと思っていたが
俺が死ぬ間際だったら
付けてただろう
説明的なセリフはいらない
京本に刺激されて友達と遊ぶのも
勉強もせず
描いて描いて描きまくっても
京本の表現力に勝てないと悟り
漫画をあきらめるに至「りかけ」た藤野歩が
ひょんなことから京本に初めて会ったら
自分のファンだったと知り
4コマをやめたのは
新作の構想中だったとでまかせを言い
雨の中を踊るように飛び跳ねながら
家路につく場面は最高です
表情を全く変えてないとこが
逆にいい
なぜ
どんな思いで自分は
漫画を描いていたのか?
引きこもりだった京本が
外に出るきっかけになり
対人恐怖症なので人は描けないが
最高の背景を描く京本と歩は
合名「藤野キョウ」でジャンプに
作品「メタルパレード」持ち込み
新人賞100万円を獲得して
高校卒業までに読み切り7本を
描きついに連載を依頼されます
しかしここで京本は美術学校で
絵をしっかり勉強したいと
歩に打ち明けます
歩は当然反対しますが
「歩ちゃんに頼らずに
一人で生きてみたい」
こう言われては・・
結局二人は袂を分かち
歩は連載「シャークキック」
を開始
京本は美大に進学します
歩は苦労しながらも
連載を軌道に乗せますが
やはりしっくりくる背景を
追い求めている模様
そんなところへ入ってきたのは
京本のいる美大への
作品をパクられたなどの
一方的な恨みを持った
通り魔侵入のニュース
そして京本は・・
(このエピソードは明らかに
京アニ放火事件がモチーフでしょう
藤本先生も思うところが
あったと思います)
絶望に打ちひしがれ
連載も休載した歩は
卒業証書を渡しに行ったあの日
京本の部屋の入口で描いた4コマ
「引きこもり選手権」を
ジャンプの隙間から発見
あれを描かなければ京本は
死ぬことはなかったと
「漫画なんか何の役にも立たない」
京本の部屋に入れず
後悔し4コマを破り捨てます
ここで「(部屋を)出るな」と
描かれた1コマ目を
見た部屋の中の京本が
あそこで歩に出会わず
美大に進学した京本が
通り魔に襲われる寸前に
漫画をやめ姉と一緒に空手を
習っていた歩が通り魔を蹴り飛ばす
世界線が広がっていきます
そして助かった京本が
実家に帰り歩が助けてくれた
シーンの4コマを描くと風に
あおられそれが部屋の外に・・
そして元世界の歩がそれを観て
京本の部屋の扉を開けると・・
京本は「シャークキック」の
熱心な読者でアンケートも必ず
書いてくれていました
「なぜ漫画を描くのか」
あの時引きこもりを脱した
京本と一緒に「メタルパレード」
執筆に取り組んだ日々
あそこに今の歩の原点があり
その後も京本はファンで居続けて
くれた
漫画を描く理由はそこにあった
それを理解した歩は部屋を出て
再び京本が楽しみにしていた
シャークキックの制作に戻ります
この世界観のつながり方とか
確かにクリストファー・ノーラン監督
「インターステラー」っぽくもあります
パクリとか言いたいんじゃなくて
あの映画も手狭な部屋の中から広がる
世界がやがてつながっていくという
ところに魅力がありましたが
二人が作ってきた漫画の世界
つながりをこうまとめる終わり方は
いいなと思いました
切なくも希望につながり
それで生きていく
必見の一作だと思います